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限りなく透明に近い進路希望②


それから彼女言われた通りに食堂に着いた。そしてそこには本物の彼女がいた。髪の色は黒だったが、そのほかは全てゲームのキャラデザとほぼ一緒だった。

「あなたがヤン?」

「そうだよ。」

彼女は僕の全身いや顔をジロジロ見ていた。なにこれ、すっごい恥ずかしい……

「パッとしない人ね♪」

普通に失礼な女性(ひと)だ。

「じゃあ中に入りましょう♪」

食堂入って、お互いお酒を頼んだ。彼女は大学2年で勉強しながら戦学を隙間時間でやってるとのこと。それからお互いの経歴や今後の戦争についていろいろ話したが、途中篠宮は体を乗り出して聞いてきた。

「ねえ、昨日どうやってあの人数の敵を倒したの?どうやって右翼の敵壊滅できたの?そもそもなんで君があんな敵地のド真ん中に単独で行けたの?」

うわ、怒涛の質問責め笑。多分今回の食事を誘ったのは貸し借りじゃなく、1番これを聞きたかったのだろう。

「君が推測した通り、閃光弾で目を眩ませてその隙に手持ちの武器でやっつけただけだよ。」

今の発言を受けて彼女は自身の唇に人差し指を当て少しの間考えてた様子だった。それから彼女は口を開いた。

「百歩譲ってあなたがあの部隊を倒せたとして敵右翼壊滅させたのは戦場の摩擦を考慮しても、あの劣勢から逆転するのは考えられないわ♪」

「篠宮さんはあの一帯を調べたらしいけど“どの辺りまで”調べたの?」

そう言うと篠宮ははっと驚いた様子で言った。

「まさかあの鴻巣山一帯をトラップ設置してたの?」

僕は一つコホンと咳払いして答えた。

「いや、平尾校の領土は流石に侵入できないから設置できないけど長岡校の領土にはまんべんなく設置してるよ。って言ってもこの前の戦いでほとんど使い切ったけどね。」

「ちょっとおかしくない?トラップを仕掛けたら当然味方にも影響出るでしょ?でも支障がないのはなんで?」

さすが科学部、トラップのデメリットを理解していらっしゃる。

「以前、篠宮さんに作ってもらった赤外線が出るおもちゃの銃があったでしょ。あれを使って僕個人の裁量だけど効果的な場面でトラップを作動させてるんだ。」

「なるほどね♪それにしてもトラップだけであの平尾校の右翼を壊滅できるなんて。てかそんなこと出来るなら最初からやりなさいよ!」

乾いた笑いしか出なかった。だって本当はあの人(・・・)の協力があったし、罠もあくまで敵を混乱させた程度だからぶっちゃけ自分の手柄じゃないんだよな。。。続けてヤンは言った。

「あ、ただトラップは敵に影響与えるけど同時に味方にも影響与えるから近くに味方がいたら発動させるのは無理だし、単独で動くとなると上官(うえ)の許可が必要だからね。まぁ、あの時は自分の部隊が壊滅状態だし、上官(うえ)も混乱してたみたいだから単独で動けたってわけだけど。」

「ふーん♪今の話を聞いてさ、トラップの効果を十分に発揮させる場所の選定、適切に発動させるタイミングを持ち合わせてないとあんな戦果は出せないと思うわ。あなたかなりの戦術眼があるのね♪」

ここまで誉め殺しされるのは初めてだった。

「ねぇ、あなたの目から見て今の戦争はどう映ってるのかしら?」

どこか試してるような質問だった。

「うん、平尾校の白虎隊を倒す手段がない限り正攻法で攻略するのは無理だね。」

「じゃあ正攻法じゃない方法だってら勝てるの?」

「戦場の摩擦がある以上絶対勝てる戦いはないけど、まぁシミュレートした感じだと1%の確率で勝てるかな笑」

そう言うと篠宮はかなり驚いた様子だった。

「ふーんすごいね。私がどれだけシミュレートしても勝率1%超えれないのに。あなた私より戦争の才能あるわよ♪」

戦争の才能か。。。

「逆に君の1番勝率の高い戦略教えてよ。」

そう言うと彼女は

「私が考えた平尾校の一番の攻略方法は鴻巣山を迂回して、平尾校舎に直接乗り込む方法よ♪」

超ドヤ顔で篠宮は説明した。

「うーん、いい案だけどデメリットがあって、兵站が長くなるリスクがあるよね。」

「どういう意味?」

「移動距離が長くなると退路を絶たれるリスクとか味方の増援が遠過ぎて来れなかったり、物資を送れない可能性とかいろいろあって勝率がぐっと低くなるってどこかのスレに書いてあったんだ。」

「いい案だと思ったのになー♪」

「そうなんだけど、もしやるなら①迂回中、敵に見つからないこと。②退路もしくは補給線を絶対確保出来る状況にあること③絶対に攻略できる方法があること。この3つの条件が揃わない限りは迂回はやらない方がいいね。全滅覚悟でやっても基本無謀だし。」

「私だったら絶対占領できる自信があるから問題ないと思うけどね♪」

2回も敵に追い詰められてたのにどこからその自信が来るんだ。。。

「まあ、ともかく実際にうちの学校も相手も同じように勇敢な猛者たちが迂回してやって来るけど、やっぱり全滅だね。というか、そもそも相手側の進軍の勢いが凄すぎて攻める以前の問題なんだよ。」

「迂回が出来ないならあの山を攻略するしか方法ないじゃない!」

「そうなんだよ。それは両方同じこと考えてると思うし、それが簡単ならもう決着は付いてるはず。」

「決着がつかない要因は何なの?」

「お互いの展望台をがっちり要塞化してるからだよ」

「お互いに侵略する際、どうしてもあの展望台から捕捉されて迎撃されるからどっちも手をこまねいてる状況なんだ。」

「じゃあ攻略法はないの?」

「全く無いわけではないけど。。。あまりに無謀すぎて推奨しない方法だけど一番陥落させる確率が高いよ。」

そして彼女にその作戦を伝えた。正直この作戦は毎夜寝る前に妄想する自分が軍師になって誰もが思いつかない圧倒的な作戦で攻略する俺TUEEEEEE系の物語から引用したものである。多少主人公補正がかかってないと攻略できないが十分効果的である。しかし悲しいかな現実世界では冴えない三十路手前のおっさんがわっくわくして布団に着くのを。でも厨二病的裏設定を考えたり、高度な頭脳戦を繰り広げたり、ここまで面白い物語見たことがない。自分の才能が恐ろしい。ほんといろんな意味で人様に言えるような代物じゃない、実際口外したら恥ずかしさのあまり死んでしまうわ。

「じゃあそれをやりましょう。明日決行ね♪」

「実行するのは君の勝手だけど流石に一人じゃキツいよ、せめて精鋭が10人くらいいないと厳しいと思うよ」

「じゃあ、あと8人ね♪」

「僕もカウントしてるの?」

「当たり前でしょ。この作戦の首謀者なんだから♪」

「勝手にやるのは構わないけど、僕を巻き込まないでくれ。図書委員はやることが多いんだ。」

「図書館でいつも暇そうにしてるじゃない♪いいから手伝いなさい♪」

…………。

「で、でもなんでわざわざ僕を誘うんだい?別に僕じゃなくても別の誰かを図書委員で誘って、さっきの作戦やればいいじゃん!」

「それは無理ね。もしこの作戦が成功して、鴻巣山を攻略しても平尾校の攻略が出来る人はいないわ♪」

「買いかぶりすぎだよ。だいたい平尾校攻略しても何が得られるの?勝ってもその学校の統治権くらいでしょ」

「まぁ確かに、政治的な報酬のやり取りがあるけど科学部にとって戦争に勝つ一番のメリットは相手の開発中の研究を閲覧することができるの♪」

「だったら、ネットでアップされてる世界中の論文とか企業が出した特許とか見てた方が素人の研究よりよっぽど有意義だと思うけど。」

「もう全部読んだわよ。ただ私が見たり、聞いたりした発明や技術のレベルが全部頭打ちじゃないでしょ。もっとワクワクするような技術や発明はたくさん埋もれてるわ。私はそれを知りたい。開発途中であるならそれに携わって、発明や発見したい。それが私の夢なの♪」

篠宮の目がめっちゃキラキラ輝いていた。ただ僕にとってそれは眩しすぎた。そして水を差すように言った。

「なんで自分で開発しないの?なんか横取りしてる感があって嫌にならないの?」

すると彼女は人差し指を僕に向け言った。

「発明や発見ってのはね人生かけて1個生み出せるかどうかなの。私は何でも知りたいのに1個だけ、もしくは発明できないまま死ぬのは嫌だわ♪」

ほんとに欲深いな。ヤンは呆れながら言った。

「君は頭がいいから何でも発明できると思うけどな……」

「そうねと言いたいところだけど、それは難しいことなのよ。かの有名な発明王エジソンが99%の努力と1%の閃きである。って言ってたけど、あの話は努力が大事ていうことじゃなくて努力だけしても発明には至らない。死ぬほど頑張った努力と1%の閃きがあってはじめて成し遂げられるのよ。その閃きは天才や秀才ですらほとんど出てこない代物なの。」

続けて彼女は言った。

「そんなすごい発明をほとんど学校でいろんな分野で研究してるわけだから、絶対知りたいの!だから協力して!!」

「いやいや、やっと労働から解放されて煩わしい人間関係も断って静かに暮らしたいだけなのに、また誰かに指示されて時間を拘束されるのは嫌だよ!」

「めちゃめちゃこき使う訳じゃないのよ。少しだけあなたの知恵を借りたいの。お願い!」

「って言われても僕に何もメリットないじゃん。」

「何が欲しいの。」

「時間と自由。」

「それ以外でないの?例えば名誉とか最強の兵器とか」

かなり長考した結果出なかった。。。

「あんまり興味ないかも。」

「あなたって全く欲がないのね。」

そうだよ欲どころか何もかも無いんだ。昔はこうじゃなかったのに、大人になっていくにつれて出来ないことが増えて、それを頑張って出来るよう努力せず諦めた結果、プライドも魅力も恋人も友達も願望も無い人間になってしまったんだ。勝手に諦めて悟った風の人生だから他人にも自分にも興味、関心がなく死ぬのは怖いからダラダラ生きて、そしてここ10年は自分の人生に参加せず他人の人生を傍観するような生きた実感がない毎日だよ。

「そうだね。」

そう答えると彼女は立ち上がって言った。

「じゃあ借りもう一個返してなかったから」

彼女は台に足を乗せ、人差し指を僕に向けた

「私があなたを天下人にしてあげる♪」

僕は唖然とした。

「あなたは多分気付いてないでしょうけど、類稀なる戦術眼を持っているわ。だってさっきの作戦話してる時目がキラキラ輝いてたもん。」

「そう言ってくれるのはありがたいけど、あの作戦は現実的だが実行するのは無謀すぎる。確証もない絵空事の作戦に期待しないでくれ。」

一部とはいえ、そもそもあの痛い妄想を他人に伝えたのが失敗だった。そう落胆する自分に篠宮は言った。

「ううん、絶対成功するよ♪」

そう言って彼女は今まで見せなかった笑顔でこう続けた。

「今日あなたに会えて良かったわ。科学技術の発明や事象の発見だけが私の生きる原動力だけど、こんな形で発見するのもあるのね、世界的に偉大な発見だわ♪」

そして彼女の言った一言が歴史を大きく動かした。

「あなたと私で天下統一しましょう。そしてあなたが読んでた歴史の教科書に名前を載せてあげるから♪」


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