朝補習 〜プロローグ〜大人は誰しも最初は子供だった。
▷概要
模擬戦争学園バトル、通称“戦学”とは現実世界の日本と同じ地形を舞台にプレイヤーが全国1万校ある中学校校舎の一つを拠点に、2万人の味方プレイヤー、NPCたちと相手校を制圧するVRMMOFPSゲームである。武器は魔法や超能力は存在せず、現実世界と同じく知識と技術で相手を攻略することになる。
全プレイヤーは戦学にログインすると強制的に一律中学生から高校生の体格、容姿、身体能力まで調整される。ログインしたプレイヤーが18歳から高齢者まで幅広い層が参加されるためハンディキャップをなくすよう人間の構造上一番ピークを迎える15歳から18歳に設定される。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▷歴史
西暦2045年 AI、IoT技術、高速データ通信の革新、また本格的なベーシックインカムの導入よって人類は仕事をすることが無くなった。いわゆる労働解放宣言により人類は700万年の時間をかけてようやく本当の自由を手にすることができた。
しかし2010年代に社会学者の間では“人類は労働から解放された世界では暇を持て余し、何やっても飽きてしまうのではないか”と長らく議論され続けてきた。だが、とある有志が現実世界のようなVRMMOで戦争を行い、天下統一を競い合うゲームがあったら法律も倫理も関係なく刺激的で面白いゲームをコンセプトに作られたのがきっかけである。
最初は仲間内で作り始めたゲームだったが、これに魅了されたエンジニアが参加し、面白がって改良に改良を重ね、2045年に初期のフルダイブ型のVRMMOが形なっていた。またさらに政府も補助金や技術者の斡旋もあって現在の戦学が完成したのである。
また日本政府は誰でも遊べるようにVRゲームのハードと戦学を18歳以上65歳未満の成人に無償で提供する法案が可決され、2046年には18歳以上の国民は1時間以上は遊ぶように義務付けられている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▷遊び方
味方の生徒と協力して敵を制圧する。武器はプレイヤーが所属している学校の敷地いわゆる学区内であらかじめ製造、調達が必要になる。素材は学区ごとに異なるが石油、鉱石は有限ではあるが一律で採取可能ではある。さらに素材を集める場合は相手校を占領するか密輸する方法がある。
相手校のプレイヤーと対峙し倒した場合、所持しているアイテムを回収することが可能。また自分のキャラが倒された場合24時間ログアウト状態になる。24時間経過したらその場で復活する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▷勝利条件
・相手校の生徒数85%を殲滅すること。
・相手校舎を全壊すること。
・相手の生徒会長を殺害すること。
これら3つの条件をクリアすると勝利になる。敗北した学校は勝利した学校の植民地として引き続きゲームに参加するが、勝利した学校が植民地を放棄した場合のみ再度天下統一を目指し独立校としてゲームに参加することが可能となる。また同盟校と一緒に侵略した場合はキル数や校舎を破壊した割合から“戦学”の独自の計算から勝利校を決定する。
この勝利条件を満たし、全校を支配した学校が優勝とみなされ、その学校の上位偏差値10名に優勝賞品が送られる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▷世界観
CGとは思えない限りなく現実に近づけたグラフィック、モーション、匂い、触感を体験できる。
・偏差値
この世界では偏差値と呼ばれるシステムが導入されており、現実世界の偏差値とは異なっている。ここでの偏差値とは戦闘力を表すもので、今までの戦闘実績(殺した数、殺された数)を基に算出したデータである。偏差値が高い人ほど次の転校で優先的に学校を選べるシステムとなっている。
・転校
優勝校が決まり次第、各学校の学年が1つ上がる仕組みになっている。今まで最高学年だった6年生は現在在籍している学校を離れ別の学校に進学し、1年生として編入する。ただし行きたい学校に選択できるのは各学校の上位偏差値10名までで残りは現在住んでいる地域から近い学校にランダムで転校する。
・スキン
上述した通りデフォルトは自分の中高生の時の顔で設定されているが、最初の初期設定で顔のパーツを細かくいじることが可能。もともと顔をいじる機能はなかったが、多数の要望により2048年11月にアップデートした際追加された。
・衣食住
食べ物や飲み物、加えて排泄等は実装していないため餓死や衛生の感染症による死はない。
服装はデフォルトで学生服を着用しているが、途中服装を変更することも可能。
睡眠不足による疲労も存在しないが現実世界で睡眠を取らないとゲームに支障をきたす。
住まいは初期設定から自動的にランダムで決められるが、後に自分の手で住宅地を建設して住むことも可能。
・武器
基本、自分の学区で採集した素材をもとに自分の手で工作することになる。素材の採集ポイントは現実世界とは違ってどの学区にも石油や鉄といった素材が手に入るようになっているが、採集できる量が限られているため不足の分は他校から密輸したり強奪、侵略、買収する手段がある。
また工作以外にも手持ちの仮想通貨で武器の製造を委託、依頼することで調達も可能。
・経済
戦学主導の貨幣経済を採用してはいないので課金、換金を実装していない。しかしほとんどの学校は独自で通貨を発行しており、プレイヤーの独力で武器装備を製造、調達する際、通貨を使用することがある。また通貨を取得するには学校によって異なるが一般的に生徒会が提供する業務を達成すれば報酬として得られる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▽関連作品
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▽関連項目
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▽脚注
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▽外部リンク
「んー、やっぱりだめか……」
長岡校校舎の図書室に1人で頭を抱えていた。
……そうお金が欲しい。金欠だから他にお金を稼ぐ方法はないものかとダメ元で戦学のウィキを調べていたが、やっぱり無駄骨だった。はぁ、またあの人に頼らないといけないのか。せっかく現実世界で労働から解放されたのにまた業務やらないといけないなんて現実世界と変わらないじゃないかそう嘆かずにはいられなかった。自分はただ平穏に生きたいだけなのに……
身バレしない程度に言うとネットでは修羅の国なんて呼ばれてる都道府県出身であるが、当然この戦学時代においても全国で5本の指に入る激戦区の一つ。もう現実世界でも修羅なんて言われてるのに仮想現実にいたっては本当に修羅の国だから笑えない。
まあただ以前のようにお金に困っても実際死ぬわけじゃ無いからそんなに焦ることでもないと自分に言い聞かせ、いつものように現実逃避をした。29歳のおっさんの目にはブルーライトに映し出されたまとめサイトでアニメの考察を眺めていた。
「ほんといい世の中になったな。」
図体だけは一丁前になった自分の目には青く冷めたままだった。