束の間のひと時
何とか投稿できました。平日も投稿できるよう頑張ります。
なんだろう? 身体が重い……それに少し息苦しい……
僕は息苦しさで意識が覚醒した。息苦しさから解放されたくて、とりあえず起き上がろうと思った。
でも身体を起こすことができない。段々と意識もはっきりしてきた。
うっすらと目を開けると――
にこにこしている若葉の顔が目の前にあった。
仰向けに寝ている僕の上に、若葉がうつぶせで乗っかっていた。
うん? なんで若葉がいるの? 混乱してきた。
「若葉……重い」
「トモ兄? 女の子に重いは禁句だよ? それに重くないからね?」
若葉の目からハイライトが消える。それに笑顔も怖い……
「ごめんなさい……」
「うん。今回は許してあげるね」
「それより、どうして若葉がいるのかな?」
若葉は何を言ってるの? っていう顔だ。
「もちろんご飯作りにきたに決まってるじゃん」
あー……そういえば若葉、毎日作りにきてくれてたんだった。
僕はそんなことも頭から抜け落ちてしまうほど、疲れていたのだろうか。
「ごめん。折角作りにきてくれたのに」
「まあトモ兄、昨日体調悪そうだったからね。一緒に夕飯もとってなかったしね」
若葉は僕の上から起き上がると「ご飯できてるからね」と言って一階へ降りていった。
僕は先ほどのことを思い出す。
「若葉がこの布団に寝っ転がってたんだよね……」
何となく昨日ひざ枕された時と同じ安心するような香りも残っているような気がした。
「いやいや。僕は何を考えているんだ。こんなの変態じゃないか……」
僕は自己嫌悪に陥りながらも一階へ降りていった。
――
朝食を食べ終わってから若葉は思い出したかのような表情になる。
「そういえばトモ兄。さすがに食材が足りなくなってきたから買い物に付き合ってほしいんだけど」
「もちろん付き合うよ。いつもお世話になってるからね。荷物持ちでも何でもやらせてください」
「うん。ありがと」
「なら僕は着替えてくるね」
そう言って部屋に戻ろうとした僕のあとを若葉がつけてくる。
「あの? 若葉さん? 何でついてくるの? 僕、着替えるって言ったよね?」
「言ってたけど、どうしたの?」
こいつ開き直りやがった! おっと……平常心、平常心。
「だから恥ずかしいからだめだって」
「別に減るものじゃないし」
「だめったらだめなの! 入ってきたら怒るからね!」
「トモ兄のけちー!」
だから何がけちなんだ……
――
外は相変わらず暑い。でも昨日よりは涼しいかな。
「それよりどこに買い物に行くの? 駅前のスーパー?」
「そうそう。少し距離があるから一人じゃ大変だなって……ごめんね?」
そう言って若葉が上目づかいで僕を見てくる。うん、可愛い。
「さっきも言ったけど、いつもお世話になってるからね。お安いご用だよ」
「頼もしいね。ありがと」
若葉はくすくすと笑っている。その顔を見て僕は、どきっとする。
昨日からどうしたんだろうか。
二人でたわいもない会話をしながら歩いていると前からシンくんが歩いてきた。シンくんもこちらに気づいたようだ。
「まあ! お二人さん。ご機嫌麗しゅう」
「どこのお嬢様なの……」
僕がちょっと呆れ気味に言って、隣の若葉をちらっと見る。
……?
若葉が嫌な人に会ったみたいな顔でシンくんを見ている。昨日は会った瞬間にロケットダイブをかましていたのにどうしたんだろう?
それに気づいてるのか気づいてないのか、シンくんは話を続ける。
「お二人でどこに行くのかな?」
「家の食材がきれそうでさ。荷物持ちも兼ねて買い物に行くんだ」
「ほーなるほどね。だったら、ちょうどよかった。俺、トモに用があったんだよね。荷物持ち付き合うから一緒に連れて行ってよ」
そこで若葉が会話に入ってくる。
「ちょっとシン兄! 空気読んでよ! 空気を! いまはトモ兄とデート中なの!!」
「いや……買い物でしょ」
若葉はぷりぷりと怒っている。
「いいよシンくん。一緒に行こうよ」
「あんがとなトモ! やっぱ親友は誰かさんと違って優しいねー」
「ふふふ……シン兄とは一度話合わないとだめみたいだね?」
若葉怖いよ……またハイライトなくなってるよ。
――
「そういえばシンくん。用って何だったの?」
「ああ、そうそう。ちょっとこれ見てほしくてさ」
シンくんは、こそこそと僕に携帯を見せてくる。
「ん? 何これ? 暗号か何か?」
そこには文字化けのように文字や記号が羅列していた。
シンくんの方を見るとまた何か考えているような顔をしていた。
「シンくん? どうしたの?」
「そうそう! トモなら分かるかなと思ってさ!」
不思議そうに問いかけた僕にシンくんは、はっとして答えた。
「ならトモ。こっちのはどうかな?」
そう言ってもう一度、携帯を見せてくる。
「うーん……こっちも分からないね……そうだ。若葉にも見せてみようよ」
「あーいや! 大丈夫だ。トモに分からないなら若葉が分かるはずがない!」
「シンくん……何気にひどいね。それより、それどうしたの?」
「実はな、少し前に送られてきて何だろうなって思ってさ。トモにも見せたわけよ」
「そうだったんだ。心あたりがないなら、いたずらじゃないかな?」
「そうだな! 気にしないことにするわ」
あんな暗号みたいないたずらメールなんて流行らないだろうに……誰が送ってるんだか。僕の携帯にも届いてないか、帰ったら確認しておかないとね。
「ねえねえ二人して何してるの?」
前を歩いていた若葉が、二人でひそひそしてるのに気づいたのか尋ねてくる。
「若葉はだめだぞ! これはな、男だけの秘密なんだ」
「何それ! 二人だけなんてずるい!!」
「いいか若葉。男にはな、秘密の十や二十なんて当たり前にあるんだぞ!」
「多すぎない!?」
「えー、トモ兄もシン兄もそんなに隠してることあるの?」
「いやいや! 僕は隠してることなんて全然ないからね!」
「そんな……トモ! 裏切るのか!」
そんな会話をしていたら三人同時に思わず吹き出してしまった。ああ、楽しいな。
そこから三人でスーパーに向かったのだが――めちゃくちゃ荷物多かったです。はい。
男の子が二人いるからこれぐらいの量大丈夫だよね!! と若葉様。
何となく今後の展開を察してしまった読者様もいらっしゃると思いますが、胸に秘めておいていただけるとありがたいです。