プロローグ
更新は不定期になります。よろしくお願い申し上げます。
僕はいま屋上の柵を越え、パラペットに立っている。
風もなく屋上にいるせいか、直射日光でじりじりと暑い。
ぼんやりと下を眺めていると、誰かが屋上に上がってきたのに気がついた。
「なんだ。きたんだ」
僕がそう言うと彼は、「ああ」とだけ答えた。
「止めにきた訳じゃないんだね」
今度は何の返答もなかった。そんな彼に僕は、心情を吐露する。
「僕は……君がね……君があんなことをするとは思ってなかったよ。好きだったなら……言ってくれればよかったのに……。そうしたら僕は……」
語りだしから胸が張り裂けそうになり、目元に涙が溜まっているのがわかる。
「もうね。この世界にいたくないんだ……僕は、彼女のところへいくよ」
こんなに苦しいなら僕はこの世界で生きたくなかった。
僕はふと、彼に言われたことを思い出して、皮肉をこめて言った。
「よかったね。君が言っていたことが叶うよ。嬉しい?」
僕はこんなことを平然と言えるくらいには壊れてしまったんだなと思った。でも、僕を壊したのは君たちだよ。少しくらいは後悔してほしいものだ。
こんな状況になっても止めるどころか何も言わない幼馴染に僕は更に悲しくなってしまった。
僕は彼にまだ期待をしていたのだろうか。きっと何かの間違えで、またあの時の親友に戻ってくれると思っていた。でも彼は何も言わない……。ああ、本当に変わってしまったんだなと僕は思った。
目を瞑ると昔、四人で遊んでいたころが鮮明に思い出せる。
思えば、四人は小さいころからずっと一緒だった。小学校、中学校、高校と十年以上の付き合いになる。何をするのも一緒で、考えていることなんて何でもお見通しだと思っていた。でも違った。僕は何も見えていなかったのかもしれない。
目を開けて遠くの空を見つめる。モヤモヤする僕の心とは対照に雲一つなく綺麗だと思った。
うん、踏ん切りがついた。早く彼女に会いたくなった。
「いま……君のところへいきます」
小さく呟いた僕は、身体を屋上から投げ出した。
誰か屋上へ駆け上がってきて、何かを叫んでいたが聞き取ることはできなかった。
そしてこの日僕は――この世界からいなくなった。