Power Song9
君のために僕は詠う。
Power Song9
[ ――――次のニュースです。○○県○○市の○○児童施設での爆破・殺人事件で△△県警と警視庁は現場で遺体となって発見された男性の一人をMグループ会長の脇田大二郎氏と断定しました。残りの3人の男性の身元については遺体の損傷が激しく、依然不明のままです。この事件は先月19日、午後7時頃―――――]
テレビのニュースを見ながら、検事長である永田は深くため息を吐いた。
「…まったく…酷い事件だよ。もう3週間も経ってるのに何の手掛かりも見付からないんだ…」
永田はそう言いながら、自分の事務所のソファでコーヒーをすすっているケイを見つめた。本条はそんな永田を見つめながら苦笑した。
「でも、殺されたのがMグループの脇田会長となると…これから大変な事になりますね」
「そうなんだよ!有治君!特に政界は大騒ぎだよ!しかもあんな惨い殺され方だからなぁ…」
永田はだいぶん薄くなってきた頭を手で撫でながら、チラっとケイを見た。ケイは黙ったままテレビのニュースを見つめていた。
「Mグループの会長ともなると怨んでいる人間なんて山ほどいるからなぁ〜…犯人を絞り出すだけでも大変なんだよ…ケイ君?」
「は?」
ケイはようやく永田の顔を見た。
「ケイ君は覚えてるだろ?以前この脇田会長に会ってるじゃないか?」
「…うん。おじさんに頼まれてあの爺さんの屋敷に行ったね。で、おじさんに言われた通りあの爺さんからフロッピーを預かってきたんだよね…」
ケイの言葉に本条は眉間にしわを寄せた。「そんな事までやらせてたんですか?おじさん…」
「い、いやぁ〜…」永田は焦りながらテレビの画面に目をやった。「お!脇田庄平だ!」
「脇田庄平?亡くなった会長の息子ですか?」
本条はテレビを見ながら永田に尋ねた。
「あぁ、脇田会長には子供が3人いるんだが、三男の庄平(38)は兄弟の中でもずば抜けていてな〜…親父顔負けの野心家として有名なんだよ。まぁ、庄平は長男や次男とは比べ物にならないくらい会長に可愛がられていたらしいんだ。次期社長にと会長が言い出した時にはさすがに他の兄弟や幹部職員から猛反対を受けたそうだ」
「まぁ、普通はそうでしょうね。まだ若いし…でも何故社長である長男ではなくて三男の庄平が会見を行っているんでしょうか?」
「あまり公にはされてないんだが、どうやら長男は病気らしいんだ。次男は気の弱い男らしくて庄平には頭が上がらないそうだ。今では幹部職員達はほとんどが庄平側に付いているらしいから…結局は会長が死んで一番得をするのはこの庄平なんだよ」
永田の言葉に本条は首を傾げた。
「会長はこの三男を可愛がっていたんでしょ?なら会長が死んでなくても損をする事は無かったんじゃないですか?」
「いや…会長はここ数年の間に随分金遣いが荒くなっていたんだ。そのせいで海外の子会社を何個か潰してしまっているんだ。その事が庄平は気に入らなかったらしい」
永田の言葉に本条は納得したように頷いた。
ケイは無言のままテレビ画面に映っている脇田庄平を見つめた。
……一番得をした男ねぇ…
「…ケイ君はこの事件についてどう思う?」
永田は恐る恐る訊いた。
「どうって?」
「いや…誰がこんな惨い事件を起こしたのか…」
「…たくさんの人間から怨まれてたんでしょ?この爺さん…じゃぁ、その中の誰かじゃない?」
ケイの素っ気無い言い方に、永田は肩を落とした。
「おじさん…」本条は呆れたように苦笑した。
「分かった、分かった…もうケイ君を頼ったりはしないよ…」永田は表情を暗くしながら言った。「ところで、今晩アキちゃんの手料理食べに行ってもいいかな?」
「今日はアキちゃんいませんよ」
本条は笑いながら答えた。
「え?何でだ?」
「アキちゃん、友達と出掛けてるんですよ」
「あぁ、そうか…それなら仕方無いなぁ…そしたら3人で久し振りに美味しいモノでも食べに行くか?」
永田は満面の笑みで言った。
「駄目だよ。アキ、ちゃんと夕飯の準備して行ってるから」
「あ!?そしたら私の分もあるかな!?」
永田は期待を胸に、言った。
「あるワケ無いじゃん」
ケイの冷たい言い方に、永田はがっくりと肩を落とした。
「――――ただいま!」
ケイは玄関ホールに響くほど大きい声で叫んだ。
「ケイ…」
「言ってみただけだよ」
本条の呆れ顔を横目に、ケイは仏頂面のまま居間へと向かった。
居間のテーブルには、ラップのかかったアキが作った料理が並べられていた。ケイはアキの書置きを手に取った。
< 先生、ケイ君、お帰りなさい。冷蔵庫の中にポテトサラダが入ってるので食べて下さい。あまり遅くならずに帰ります。 アキ >
ケイは仏頂面をキープしたまま、コートをハンガーにかけた。
「…いい加減にしろよ、ケイ」
本条は苦笑しながら、コップにビールを注いだ。
「…何が?」
ケイはコップに注がれたビールを口へ運んだ。
「アキちゃんだって息抜きが必要だろ?食事ぐらいいいじゃないか」
「家にいたら息が詰まるって言いたいの?兄さん…」
「そうじゃなくて…たまにはいいじゃないかって言ってるんだよ」
本条の言葉に、ケイはブスッとしたままご飯を頬張った。
そんなケイを見つめながら、本条は微笑んだ。
「アキちゃんがこの家に来る前は、こうやって2人で食事してたな…」
ケイは口を動かしながら、感慨深げに言う本条を見た。
「あの頃のお前はそうやって口一杯に頬張ってご飯を食べる事なんてなかったのにな…」
本条は嬉しそうに笑った。
ケイは気恥ずかしそうに視線を下に向けたまま、豚カツを頬張った。
「…何だよ…どうしたの?兄さん…」
本条は微笑みながら、ビールを一口飲んだ。
「…ケイ、体調はどうだ?」
ケイは黙ったまま本条を見た。
「やっぱり、“発作”が起きてるんじゃないのか?…清子も心配してる…アキちゃんも…」
「アキが!?」
ケイの顔色が変わった事に、本条は気付いた。
「アキちゃんは何にも言わないけど、いつもお前の事心配してるよ。特に帰りが遅い時なんかは…不安みたいだ」
本条の言葉にケイはうつむいた。
「最近、帰りが遅いのは…本当に仕事のせいなのか?」
「え?」
ケイは思わず顔を上げた。
「何か…問題が起こったんじゃないのか?ケイ…」
本条は真っ直ぐにケイを見つめた。
ケイは黙ったまま、顔を歪ませた。
「――――たまにはこうやって外でご飯食べるのも悪くないですよね?」
麻衣子は笑顔で言いながら、“菜の花のスパゲティ”を美味しそうに口へ運んだ。
「そうだね」アキも微笑みながら“シーフードドリア”を頬張った。「あっ!そうそう…今月さぁ、ケイ君の誕生日なんだけど…家でケーキ焼こうと思うの。麻衣子ちゃんも来ない?」
「本条君の誕生会に?…行きませんよ」
「え?何で?」
「何でって…」麻衣子は苦笑した。「行ったら絶対本条君嫌な顔するもん!」
「そんな事ないよ!」
アキは慌てて言った。
「もう、アキさん!夫の誕生日くらい2人っきりで過ごしていいじゃないですか?本条君、絶対その方が喜びますって!」
麻衣子の言葉に、アキは頬を赤めた。
そんなアキを見つめながら、麻衣子は微笑んだ。
「裕ちゃんが言ってたんですよ。本条はアキさんといる時が一番幸せそうな顔してるって…私もそう思います」
「そんな…」
アキはうつむいたまま、恥ずかしそうに呟いた。
「赤ちゃん…早く作って下さいね、アキさん」
「え!?赤ちゃん!…そんな…ちょっと気が早いわよ…麻衣子ちゃん…」
頬を赤めながら“シーフードドリア”を頬張るアキを見つめながら、麻衣子は思わずため息を吐いた。
アキはいつもと違って元気のない麻衣子の様子が気になっていた。
「…卒業式の準備とか色々大変でしょ?麻衣子ちゃん」
「え?…はい、本当に目の回る忙しさですよ!でも子供達にとって大事な1日ですからね、頑張らないと!」
麻衣子の言葉にアキは微笑んだ。「……中島君は?食事会の時に会った時は『だいぶん落ち着きましたよ!』って言ってたけど…まだ忙しいのかなぁ?」
「…いえ…仕事の方は本当に軌道に乗ってきたみたいです…」
麻衣子はそう言いながらうつむいた。
アキはうつむいたままの麻衣子を見つめながら、微笑んだ。
「麻衣子ちゃん、中島君も麻衣子ちゃんと一緒にいる時が一番良い顔してるよ。それだけ麻衣子ちゃんの事大切に想ってるのよ。だからあんなに一生懸命なんだよね。…私の母親はよく言ってたの。たくさん努力した人はたくさん幸せになれるって…だから、たくさん努力しなさいって。中島君も麻衣子ちゃんもまだまだ若いから今のうちにたくさん努力してたくさん幸せにならないとね!…って私もなんだけどね!」
アキはそう言いながら、舌をペロっと出した。
麻衣子の大きな瞳に、みるみる涙が溢れた。
「わっ!…ど、どうしたの?麻衣子ちゃん!私、何か悪い事言った?」
「違うんです…そうじゃないです…」アキの言葉に、麻衣子は慌てて言った。「私の父がいまだに裕ちゃんに会ってくれなくて…だからちょっと落ち込んでたんですけど…でも、もう大丈夫です!そうですよね!私、父が裕ちゃんとの事認めてくれるようにたくさん努力します!」
麻衣子は嬉しそうに微笑んだ。
アキは心が温かくなるのを感じながら、微笑み返した。
「……あっ!アキさん!バスの時間!」
「あっ!本当だ!」
麻衣子は伝表を掴むと、椅子から立ち上がった。
「待って、麻衣子ちゃん!私がまとめて払うから!」
「いえ!そんな事言ってこの間もご馳走してもらったから、今日は私が払います!」
2人は伝票を奪い合いながら、店のレジへと急いだ。
アキはバス停へ、麻衣子は駅へ行く途中まで一緒に歩いた。
3月とはいえ、夜風はひんやり冷たく、麻衣子は淡い水色のスプリングコートの襟を立てた。アキも寒そうに小さい身体をさらに縮ませながらチェックのキルトジャケットのボタンを留めた。
「…この間から思ってたんですけど、そのネックレス、本条君からのプレゼントですか?」
「え?…う、うん…」アキは恥ずかしそうに答えた。
「素敵ですね!やっぱり本条君ってアキさんにだけはマメなんですよね〜…」
そんな会話をしながら、2人は駅の西口の前にある広場で別れた。アキは麻衣子が人混みと共に駅の中に入って行くのを見届け、バス停へ向かった。
アキの様子を1人の男が見つめていた。男はアキの歩幅に合わせて、アキに付いて行った。
忙しなく通り過ぎる人々の間を、アキは小さい身体で歩いて行った。そして、ある飲み屋の前を通りかかった時、その飲み屋から10人ぐらいの大学生達がどどっと流れ出て来た。大学生達はみんな赤ら顔で、これから行く二次会の事で異様に盛り上がっていた。アキはその大学生達の熱気に揉みくちゃになりながらも、その騒ぎの輪から抜け出ようとした。
男は ≪今だ!≫と、思った。よろよろと人混みを抜け出たアキの腕を、背後から掴もうとした―――――
「――――ケイ、コーヒー飲まないか?」
本条は両手にカップを持ったまま、ケイに尋ねた。
「…いらない」
ケイはそう言いながらソファに深く座り、携帯をいじっていた。本条は≪やれ、やれ…≫と小さくため息を吐きながら、自分のカップにコーヒーを注いだ。
本条はカップを手に、自分もソファに腰を下ろした。そして黙ったまま携帯の画面を見つめているケイを見た。
「…お前、もしかしてアキちゃんに早く帰って来いってメールでもしたのか?」
「…してないよ」ケイは無表情のまま、答えた。そして時計に目をやった。「もうちょっとしたらアキ迎えに行くから…」
「は?」
本条は眉をひそめた。
「早く帰るって書置きしてたくせに…全然遅いじゃん…」
ケイはブツブツと口を尖らせながら言った。
「…お前…アキちゃんに何か持たせてるのか?」
本条の問いにケイは答えず、もう一度時計を見た。
本条はしばらくの間、言葉を失った。
アキはいきなり腕を掴まれ、ギョッとした。
「こんな所で何してるんですか?アキさん!」
智日は笑顔で言った。
「智日君!?…え?…智日君こそどうしたの?」
「うん、ちょっと用があってね…」
智日はそう言いながら辺りを見渡した。大学生達はまだ騒いでいた。
「智日君?…」
アキは不安げに訊いた。
「…あぁ!ね!アキさん、もしかしてこれからバスで帰る?」
「う、うん。もうすぐバス来るから…」
「俺、車で来てるんだ。家まで送りますよ」
智日は笑顔でそう言うと、アキの手を握り、ズンズンと歩き出した。
「え?智日君!いいよ、別に!本当にすぐバス来るから!」
「送るって!…ちょっとケイさんにも用があるから気にしないで!アキさん!」
智日は半ば強引にアキの手を引いて、駐車場へ向かった。
「―――本当にありがとう、智日君」
智日が運転する車の助手席で、アキは申し訳なさそうに言った。智日は横目でアキを見ながら微笑んだ。
「珍しいですね、アキさんがこんな時間に外にいるなんて」
「…う、うん。今日ね、お友達と食事したの」
アキはそう言いながら、バックから携帯を取り出した。
「ケイさんに連絡?」
「え?…うん、思っていたより遅くなっちゃったから…」
「遅い?まだ8時過ぎですよ!」
智日は驚きの声を上げた。
アキは苦笑しながら、ハンドルを握る智日の横顔を見た。智日も横目でアキを見た。アキは慌てて顔を背けた。
「……そのネックレス、ケイさんから?」
「え?…」
「その、大っきいダイヤが付いてるの。ケイさんからのプレゼントでしょ?」
智日は微笑みながら言った。
「…うん、そうだよ。私なんかが身に付けても全然映えないんだけどね…」
「そんな事ないよ。よく似合ってる」
智日の言葉にアキはハニカんだ。
その時、アキの手の中にあった携帯が鳴り出した。
アキは慌てて携帯に出た。
[ ―――もしも〜し?アキ?もうバスに乗った?]
「ケ、ケイ君!?」
[ もうバスの中だろ?]
アキは一瞬固まった。
≪…なっなんで?みんな私の行動知ってるの!?≫
[ …もしもし!?アキ?どうした?] ケイは慌てて言った。
「あぁ!…何でもないよ!」
[ …ならいいけど…僕、バス停で待ってるから]
「は?バス停?家の近くの?」
[ うん ]
「あぁ…ケイ君…ごめん…」
アキの言葉に、ケイは眉をひそめた。
「帰る途中で智日君に会ってね、今家まで送ってもらってるの…あっ!そうだ!ちょっと待って!」
ケイは呆然としながら、固まった。
「智日君!ケイ君が家の近くのバス停で待っててくれてるの!よかったらケイ君も一緒に送ってくれない?」
必死に頼むアキの表情に、智日は吹き出した。
「もちろん!いいですよ!」
智日が運転する車が、バス停へと近付いた。
車のライトがベンチに腰を下ろしていたケイの身体を照らした。ケイは無表情のままゆっくりと立ち上がった。
「ケイ君!!」アキは笑顔で助手席から降りてきた。「早く連絡すればよかったね!寒かったでしょ?」
笑いながら言うアキの顔を、ケイは黙って見つめた。
アキは怒っている様子のケイに、困惑した。
「…早く帰るって書いてたじゃん…」
「…ごめん…麻衣子ちゃんと話し込んでたら遅くなっちゃって…」
「家で話せばいいじゃん…そしたら何時になってもいいだろ?今までだってそうしてただろ?…」
「…うん…」
ケイの言葉に、アキはうつむきながら答えた。
智日はそんな2人の様子を車の中から見つめていた。
ケイは運転席で腕を組んでこちらを見ている智日に目をやった。そして車に近付いた。
「…悪かったな、智日。もうここでいいよ。歩いて帰るから」
「え?…あ…でも智日君、ケイ君に用があるんだって…」
アキは焦りながら言った。
「用?何?」
ケイの言葉に、智日は苦笑した。
「とにかく乗って下さいよ。家まで送りますから…」
ケイは無言のまま智日の顔を見つめた。智日はニコニコと笑いながらケイを見つめた。
「…アキ、後ろに乗って。僕も後ろに乗るから」
アキは困惑しながらも、ケイの言う通り車の後部座席に乗り込んだ。ケイも乗り込み、アキの横に座った。
車内に沈黙の空気が流れた。
アキは息苦しさを感じながら…恐る恐るケイの横顔を見た。ケイは黙ったまま真っ直ぐに前を見つめていた。
その時、智日の腹の虫がグゥ―と鳴った。
「…腹減ったぁ…」
智日の呟きに、アキは思わず吹き出した。
「夕飯、まだなの?」
「はい…缶コーヒー飲んだだけ…」
ケイは急に嫌な予感を感じた。
「智日君がケイ君とお話している間に何か作ってあげるよ」
ケイはアキの言葉に愕然とした。「…っちょっと…アキ…」
「え!?いいんっスか!?」
「もちろん!あぁ、でも簡単なモノしか作れないけど…ケイ君、ポテトサラダ少し残ってる?」
アキは笑顔でケイに尋ねた。
ケイは頭を抱えたまま、小さく頷いた。
「――――うっめぇ!!」
智日はアキが手早く作った焼き飯と吸い物とポテトサラダをあっという間に平らげた。
「智日君は本当に美味しそうに食べるなぁ〜…」
本条は智日の食べっぷりに感嘆しながら言った。
「だって美味いですもん!」
智日の言葉に、アキは嬉しそうに微笑んだ。
そんなアキをケイは苛立ちながら見つめた。
「…この間来た時から思ってたんだけど…智日君のその食べ方、なんかケイに似てるんだよな…」
本条の言葉に、アキが賛同した。
「私もそう思ってたんです!ちょっとした仕草とかも似てますよね!」
ケイと智日は思わず顔を見合わせた。
「…似てるワケないだろ…」
ケイは眉間にしわを寄せ、言った。
「そりゃぁ、少しは似てますよ」
智日はそう言って、吸い物を飲み干した。
「え?」本条とアキが同時に言った。
「だって、俺達従兄弟どうしですもん。ね?ケイさん!」
ケイは目を見開いたままソファから立ち上がり、緑茶をすする智日を見た。
本条もアキも、突然の事に言葉を詰まらせた。
「俺の母親とケイさんの母親が姉妹なんですよ。だから少しは似てるんじゃないですかね〜…」
智日は満足げな表情で、顔の前で合掌した。「ごちそう様でした」
「…さ、智日君はケイ君の会社の人の甥っ子じゃないの?…」
アキはそう言いながら、ソファの前に立ち尽くすケイを見た。
「それは嘘ですよ。ケイさんはアキさんや本条先生に嘘を吐いたんですよ。…まぁ、でもそれは仕方無い事なんですよ。俺が誰にも言わないでって頼んだんだから…」
智日は呆然とするアキを見た。
「でも、アキさんや本条先生なら話してもいいかなって思ったんです。だからこれからもヨロシク!」
智日はそう言ってニカっと笑った。
ケイは玄関を出て、玄関ポーチの前に停めておいた車に向かう智日の肩を掴んだ。
「お前!!一体どういうつもりだ!!」
ケイはそう叫びながら智日の身体を車に押し付けた。
「…あんまり騒ぐとアキさんが心配しちゃいますよ、ケイさん…」
智日の言葉に、ケイは言葉を詰まらせた。
「…なんだ…やっぱり自分の母親の事、知ってたんだ…」智日は苦笑しながら呟いた。「もしかして、自分の父親の事も知ってるんですか?」
ケイは智日の首元から手を放し、ゆっくりと智日から離れた。
顔を青くさせたケイを見つめながら、智日は微笑んだ。
「ケイさん、ついに黒崎が動き出しましたよ」




