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俺は勝負パンツ

「おかしい、こんなはずではなかった。」


 真っ暗な狭い部屋の中で独り言を呟く。






『生まれ変わり』の扉に入り、真っ白な光の中を抜けた後のことは良く覚えてはいない、気が付いた時にはこの部屋にいた。



 部屋の中は暗く、目が慣れるまでは周りの様子を確認することはできなかった。

 しかし、この匂い。この前世で最後に嗅いだ匂いに包まれているということは、俺の望んだ『生まれ変わり』が成功したということだろう。


 だんだんと目が慣れて来て、周りの様子が見えてくる。


 俺の周りには様々な色の布がきれいに並んでいる。

 主に白系統が多いがピンクやグレーの生地もあるようだ。


『フムフム、やはりイメージ通りの色構成だな。』と考えながら、近くの布にてを伸ばそうとする。


 あれ!?手がない!?


『あっ、そりゃそうか。手なんてあるわけないか』と納得する。


 今の俺には腕どころか足だってない。


 なぜなら、俺が望んだ生まれ変わりたいものは・・・『パンティー』。

 それも三鷹凛子のパンティーに生まれ変わることを望んだからだ。



 ああ、なんたる幸せ。

 この芳しい香りと周りの様子から察するに、今俺がいる場所は洋服箪笥の中、それも下着のしまってある場所だろう。



 今すぐ一枚一枚手に取り、匂いを嗅いでからむしゃぶりつきたいが、この場から少しも動くことができないので諦める。



 まあ、俺の本当の目的はそんなチンケなものではない。下着の匂いを嗅いで満足するなど、そんなものはザコの考えでしかない。


 何せ俺は今、三鷹凛子のパンティーになっているのだ。それはつまりいつの日か三鷹凛子は素肌に俺を身に付けるということになる。



 お風呂上がりに俺を手に取り、下半身に身に付ける。俺は全身で風呂上がりの三鷹凛子を感じる。そして、共にベッドに入り眠りにつく。次の日は一日中三鷹凛子と過ごす。共に登校し、共に学び。体育の授業なんかあれば、汗で蒸れた下半身を俺が優しく包み混んであげよう。

 三鷹凛子の全てを体に染み込ませ、最後は洗濯カゴに投げ入れられ。



 ああ、そんな夢のような一日が定期的にやってくると思うと、喜びと感動で涙が溢れてくる(パンティーなので実際は涙など出ないが)。



 こんな体験は三鷹凛子の彼氏でも家族だろうとできないだろう。言ってしまえば俺は三鷹凛子に最も近い存在。いや!三鷹凛子と一心同体と言っても良い。



 そんな、三鷹凛子と合体する時が近い内にやってくる。








 はずだった。



 三鷹凛子のパンティーに生まれ変わってから、もう一ヶ月以上経っているが、いまだに俺は一度も使用されていない。



 最初の数日は、三鷹凛子が俺を手に取らなくても『まぁ、そのうちに選ばれるだろう。』と軽く考えてた。


 しかし、一週間、二週間と経っても三鷹凛子が俺を使用することはなかった。周りの仲間達(パンティー)は次々と使用されて行くなか、なぜ俺は使われないのか。


 俺自身が使いふるされた汚いパンティーだとか、デザインがダサイとかなら使われない理由もわかる。

 しかし、自分で言うのもなんだが、俺はほつれもなく新品同様の綺麗さで素材自体も周りの奴らより良い素材でできている。

 デザインにしても、シックな黒でオシャレなレースをあしらった高級感のあるデザインだ。




 思いきって、隣の仲間(パンティー)に俺が使われない理由を聞いて見るべきだろうか?


 ここに来てしばらくしてから気付いたのだが、周りの仲間達の俺に対する態度がよそよそしいのだ。


 最初は、下着の連中は人見知りな奴が多いんだろうか?と思っていたが、俺が来た後に入って来た新人に対しては、みんな気軽に声をかけている。


 もしかして、俺は嫌われているのか?なぜ?特になにかマズイことをやった覚えはないのだが。



 隣の奴をチラリと見る。

 白色で少しだけレースの装飾が付いた、どちらかと言えば地味な奴がボケーと前を見ている。


 こいつならまだ話しかけ安いと思い、声をかける。


「あ、あのー、ちょっといいですか?」


 突然声をかけられ、白のパンティーはビクリと体を揺らす。


「えっ!?ああ、僕ですか?」

「あっ、すみません驚かせてしまって。ちょっと聞きたいことがあって。」

「は、はい、なんでしょうか?」



 俺はどう聞いて良いものか少し考えて、ストレートに質問することにした。

「皆さん三鷹凛子さんに使用されているのに、自分は一回も使用されてないんですよ。なにが理由かわかりますかね?」


 白のパンティーは『えっ!』と驚いた顔をしてから、困った様子で質問に答える。

「あなたは、どういう役目でここに連れて来られたか知らないんですか?」



 どういう役目?パンティーに大事な部位を隠す以外の役目なんてあるのだろうか?と考え、さらに質問する。

「自分にはどんな役目があるんですか?」



 白のパンティーは周りをキョロキョロと見渡してから、小さな声で答える。

「あなたは、仲間達から何と呼ばれているか知っていますか?」


 俺は左右に体を振って知らない事を伝える。


「あなたは、『勝負』さんと呼ばれてます。」



『勝負』?

 なぜそんな名前で呼ばれているのか一瞬わからなかった。が、すぐに理解する。



「勝負って、勝負パンツってことですか!?」


 白のパンティーはコクリと体を縦に揺らす。



 あまりの衝撃に視界がグニャリと歪む。


『馬鹿な!?なんで勝負パンツになってるんだ。普段使いのパンティーで十分なのになぜ!?』





「それはあなたが望んだからですよ。」


 ざわ・・・


 突然、聞き覚えのある声が後ろから聞こえる。


「あなたは、生まれ変わりの扉に入った時に『三鷹凛子のパンティーになりたい!できれば綺麗(・・)なパンティーに!!』と願ったのです。」


 恐怖で後ろを振り向くことができない(パンティーなので後ろなんか元々振り向くことはできないが)。


「『綺麗(・・)な』部分が余計でしたね。欲が出ましたか?」



 氷のような冷たい声、人を小馬鹿にした喋り方。間違いなくあの女だ。



 その声の主は、ヒュンっと俺の頭の上を通りすぎ、向のパンティーの上に降り立つ。




「探しましたよ、山田様。」




 そこには、生まれ変わりの部屋にいたあの女が、恐ろしい微笑を浮かべ立っていた。

























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