オーバードライブ女装男子! 旧11話「これは訓練ですか?--いいえ、セクハラです!」
オーバードライブ女装男子の差替え分をとりあえずここに置いておきます。
俺、女体化済み、そして裸。
一体この状況は何なんだろうか? そして俺はなぜ素っ裸で城内の大浴場の、しかも女湯の湯船に浸かっているのだろうか?
「お湯加減はいかがですか、ハルト?」
「お湯加減は、確かに良いのですが……」
湯船ではなく、浴槽の外で俺にそう尋ねるのはセレスティアだ。そう、諸悪の根源は他でもない、この鬼畜眼鏡だ。
アオイと別れてからすぐ後に、「今日一日色々なことがあってお疲れでしょう? お風呂で汗を流されてはいかがですか?」とセレスティアに尋ねられた俺は、そう言えば今日一日で空に身体を吹き飛ばされたり、アオイに詰め寄られたり、ミナトに凶器を向けられたりと、意外と散々な目に遭っていたことに気がついた。明日以降はどんな目に遭わされるのかと不安になりながらも、俺はセレスティアの申し出を素直にありがたいと思った。
この世界の今の季節はどうやら秋から冬にかわるタイミングであるようだった。そのため、日中であっても暑さを感じることはなく、むしろ肌寒さすら感じさせるような陽気であった。というか、スカートがスースーするせいで余計に寒さを感じていたというのもある。そうはいっても、冷や汗や魔力を使ったことによる疲労と共に汗もかいていたので、風呂には入りたいと思っていたところだったのだ。
「じゃあお風呂をいただきます。お風呂場まで案内してもらってもいいですか?」
俺がそうお願いすると、セレスティアは早速俺を浴場まで連れて行ってくれた。なぜか、女湯にではあったけれど。
「あの、ここは女性用のお風呂ですよね? 俺は男です。男性用の浴場はないんで……」
言い終わらない内に、俺は女体化の魔術をかけられ、身体は女の物になってしまっていた。
「な、なにを……!?」
「さきほど私が申し上げた通りです! あなたには、骨の髄まで女の子になってもらわなければなりません! これはそのための訓練です!」
そう叫びながら俺の服を剥ぐセレスティア。一気に素っ裸にされ、大事な所がこれでもかと露わになる。
「これのどこが訓練ですか!? こんなのただの婦女暴行ですよ!?」
「おやおや、婦女などと……。これは良い傾向です。あなたは今自身が女性であることを受け入れ出した証拠ですね」
「うおっ!? しまっ……た!?」
いつの間にか身体がチェーンの様なもので固定されていた。どうやらこれは、魔力で編み上げられた鎖の様だ。いったい俺の身体の自由を奪って何をしようと言うのか? ってかこの状況、エロ同人なら確実に襲われるやつだ! 俺の純潔がこの鬼畜眼鏡に奪われる展開だ!
「大丈夫。別にあなたに乱暴をするつもりはありません。私は女性を性的な目で見たりはしませんので」
性的な目では見なくても、明らかにドSな光をその金色の美しい瞳が放っているのは気のせいではないはずだ。純潔は奪われずとも、何か大切なものが奪われるのは確実なんじゃないだろうか……。
浴場の扉を開けるセレスティア。手を動かせない俺の背中を押して浴場の中へと連れて行く。それにしてもとんでもない大きさだ。日本の温泉宿の大浴場よりも大きいんじゃないかこれ。
大浴場には他に人はいない。他の女性に裸を見られないで済んだのはいいけど、彼女は俺をここに連れてきて何がやりたいのか?
「では、私も脱がせていただきます」
「ちょっ!? なんであなたが脱ぐんですか!?」
「他に誰も人がいなければ訓練にならないじゃないですか? いきなり面識のない女性では大変でしょうから、まずはこの私で慣れていただければと思いまして」
と言って、本当に服を脱ぎ始めるセレスティア。止めようにも腕が動かないので止めようがない。俺は目を瞑って抵抗するしか方法がない。
スルスルっと布が擦れるような音。そして次の瞬間には、
「うひゃあ!?」
俺の脇を襲撃する鬼畜眼鏡。俺は耐えきれず目を開いてしまう。するとそこには……
「な、なんだ、水着を着ていてくれましたか……」
「いきなり全裸ではあなたにはハードルが高いと思いましてね。第一段階としてはこの程度です。ガッカリしましたか?」
「が、ガッカリなんて、す、する訳ないじゃないですか……!」
とは言っても、彼女が着ている水着もなかなかに際どいものだった。彼女が着ているのはなぜか、日本の学校で女生徒が着るようなスクール水着だったのだ。しかも、彼女の適正サイズよりも明らかにワンサイズ小さい。そのせいで、彼女の大きな胸の形がくっきり浮き出ており余計にいかがわしさがアップしているように思えてならなかった。
「あ、あの、もうちょっと普通の水着はないんですか? それだと、何と言うか、見えてはいけないものが見えてしまうと、言いますか……」
「何をさっきから言っていますか? これは訓練なんですから、余計な考えは持たないでください」
それは無茶というものじゃないだろうか? いくら今の俺は女体化し完全な女の子になっているとはいえ、俺の脳みそ自体は男のままなんだ。そんな刺激的な格好をされたら動揺しないはずがない。
「これからこの程度の状況はいつも起こり得るものだと思っていた方がいいです。そのために、あなたに女性と接することに慣れてもらわなければなりません。さ、身体を洗います。こちらに来てください」
そう言って俺を連れていくセレスティア。ってかタオルくらい巻いて欲しいんだけど……。あなたは水着着用なのに、なんで俺は全裸じゃなければならないのでしょうか……。
セレスティアに押されて歩くたびに俺の胸が揺れる。何が悲しくてこんなでかい乳を得てしまったのだろうか? 勇者なら戦場を走りまわって戦うだろうに、こんなもの間違いなく邪魔だと思うんだが。
シャワーのあるところまで連れて行かれ、小さな椅子に腰かけさせられる。そしてここからは筆舌に尽くしがたい辱めを受ける羽目になる。
ボディーソープの様なものを泡立て、彼女は俺の身体を洗い始めた。そりゃもう遠慮なしに。おっぱいも、お尻も、大事なところまでも……。
「うー、こんな辱めを受けるくらいなら、いっそのこと殺してください……」
「この程度で根を挙げてどうします? シャムロック様の親衛隊には女性しかいないのです。風呂もトイレも男性用の物はありません。なので、あなたは必然的に女性として行動しなければならないのです」
「そのための訓練だとしても、そ、そこを、何度も、擦る必要が、あ、あるので、しょうか……?」
なぜかセレスティアが大事なところを執拗に狙って来るせいで、俺は妙な気分になりかけていた。頭に血が昇り、呼吸が荒くなる。男の興奮とはまた異質な、身体の奥が熱くなる様なそんな感覚だ。
「おっと、これは失敬。しかし、女性の身体を知ることで、あなたはより女性への抵抗感が減るはず。これはそのためのものです」
嘘つけ、と抗議の気持ちを視線に込めてセレスティアに送るも、彼女はそれを華麗にスルーしてみせた。これ以上は色々と問題になるので、セレスティアは攻撃の手を止め、俺の身体についた泡をお湯で洗い流してくれた。そして手が使えないので、彼女はそのまま頭まで洗ってくれたのだった。
「それでは、訓練第一段階はこれで終わりです。ひとまず湯船にでも浸かって休んでください。あ、手のそれも外しておきますね」
セレスティアはそう言うとようやく俺の手の拘束を外してくれた。俺はヘトヘトになった身体を癒やすべく、お言葉に甘えて湯船に身体を沈めた。慣れない身体を適度な温度のお湯が包み込む。心なしか、本当に身体の疲れが引いていっているような気がした。
……と、こんな感じで冒頭に戻って来るわけだけど、もしかしてこんなことが毎日続くんじゃないだろうね? そんなの冗談じゃない! これが第一段階なら第二段階は一体何をされてしまうんだ? 考えただけでも恐ろしい。俺は思わず大きな溜息をもらした。
そんな時だった。俺の溜息の音しかしていなかったこの浴場に、別の音が飛び込んできたのだ。その音の正体は……
「あ、あんた……」
「へ? まさか……」
扉がある人物によって開かれたものだった。そして、それを開いた人物は、
「あ、アオイ!?」
よりにもよって、ある意味じゃセレスティア以上に怖いアオイだったんだ!
アオイは急いで手に持っていたタオルで大事なところを隠す。その顔は湯あたりでもしたのかと思えるほど真っ赤になっていたのだった……。




