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ハートのお菓子

昔々、ある所にお菓子の国の王女様がいました。


王女様は王様とお妃様のたった1人の女の子です。

大事に大事に失う事のないように、過保護に育てられていました。


「あーあ、国のお菓子食べ飽きちゃったなぁ。もっと美味しいお菓子はないかしら」


王女様は小さな内から美味しいお菓子を食べ、贅沢三昧です。


最近では、色々な事にウンザリしてお城の塔から外を眺めていました。

結構長時間眺めているので、国民は王女様のその愛らしい顔を眺める事ができました。


王女様は愛に包まれて生きてきたので、妖精のように可愛らしいのです。

美しいもの、可愛いもの、素敵なものだけを見続けた結果、目はキラキラと星のように輝いています。


国民はそんな王女様を見ると、微笑ましく、自然に笑顔になれるのです。


「そうだわ。お父様とお母様に言って、この世で1番美味しいお菓子を持ってきて貰いましょう」


王女様はパチンと手を打ち合わせました。

名案です。

お父様とお母様なら、この国の王様とお妃様なんだしきっと叶えてくれるでしょう。



王女様の、


「この世で1番美味しいお菓子が欲しいわ」


という望みを聞いて王様とお妃様は困りました。

お菓子の国だけあって、ありとあらゆる美味しいお菓子はもう王女様に食べさせた事があるからです。


それでも王女様の望みを叶える為に、またありとあらゆるお菓子が運ばれました。

王女様の望みを聞きつけた国民も、思い思いのお菓子を持ってきます。

王女様の前には色とりどりのお菓子が積まれました。


「美味しいけれど、どれも食べた事があるわ」


王女様は何か足りない物を感じていました。

お母様が作った国一番と言われる大きなケーキだって、とっても美味しいけれど何か違う。


「待って下さい! まだお菓子は募集してますか?」


そこに国民の1人のとても美しい少年が駆け込んできました。

手には綺麗にラッピングしたお菓子を持っています。ピンクのフリルのリボンが付いていて可愛いのです。

ラッピングからして王女様の好みです。


「王女様に捧げ物です。僕が作りました」


包みを差し出してから少年はサッと手を後ろに隠しました。

でも、その指は指先が赤くなって、火傷のようになってるのを王女様は見逃しませんでした。


「ありがとう」


少年の美しい澄んだ黒い瞳が王女様を映します。

包みを受け取る時に、少し触れてしまった手に心臓がキュッと痛みました。

胸がドキドキと高鳴ります。


王女様がリボンをとくと、中にはハート型のクッキーが入っていました。

イチゴの色の砂糖が降りかかってキラキラと輝きました。

形はちょっとでこぼこでした。


王女様は可愛いクッキーの端をかじりました。


口の中にさっくりした食感とイチゴの甘酸っぱい香りと味が広がります。

王女様は美味しくて夢中で食べました。

食べる度にクッキーの素朴な甘さが胸いっぱいに広がります。


特別な材料は使ってないようなのに何故か美味しいのです。


「美味しいわ、クッキー」


王女様は嬉しくて笑いました。

鈴のなるような可愛い笑い声とキラキラした笑顔です。


クッキーを持ってきた少年は、王女様に笑って貰えて嬉しくなりました。

塔の下から王女様を見ていた少年は王女様に笑って欲しかったのです。


「このクッキー、母さんに作り方を教えて貰ったんだけど、簡単で美味しいんです」


「そうなの? 私にも作り方を教えてちょうだい?」


「もちろんです。王女様」


王女様はクッキーのお返しに、自分も作ってこの少年にプレゼントしたいと思うのでした。




それから、王女様と美しい黒い目の少年はお菓子作りを通じて親しくなりました。

やがては結婚し、子供にもクッキーの作り方を教えます。

好きな人の作ったお菓子はこの世で1番美味しい事、そして好きな人の為に作ったお菓子はきっと美味しいと言って貰える事を。


お菓子の国では王女様と少年が出会った日を、好きな人とクッキーを送り合うお祭りとしたのでした。

ありふれたお話ですが、読んでくださってありがとうございます。

誰かが私の文を読んで下さる事が、いつもとても嬉しいです。

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