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そのひとくち、至福

甘さを残して

作者: 春隣 豆吉

トムトム様の作品に登場する「まあくん」と「あいちゃん」を見かけた

拙作「天使の前髪」の宮本課長の話です。


★トムトム様から快く了承をいただきまして、互いの作品の登場人物が顔を見せております。

 課長から今日は所用があるので直帰する旨のメールがあって、その後になって今度は携帯のほうに定時で家にきてほしいとメールが届いた。


 定時で退社し、インターホンをならすと、課長の「いま開けるよ」という声がした。玄関に顔を出した課長は、私の手をとると「さあ、入って入って」となんだかうきうきしている。

 ダイニングテーブルの上には、見覚えのある透明なプラスチックの容器と黒色のフタに金のリボンのパッケージが二つ。

「和哉さん、これ」

「出先の千葉で思わず買っちゃった。董子の好きな“初恋ショコラ”」

 残業中にこれを食べてたら課長が戻ってきて、課長に食べさせる羽目になったあげくに持ち帰りされたあの日を思い出して恥ずかしくなってしまう。

 チョコレートは媚薬とはよく言ったもんだ・・・翌日の会社が辛かったうえに和哉さんがつけた鎖骨のキスマークがばれないように更衣室で着替えるのがいかに大変だったことか。

 ほんと、背中のキスマークは断固拒否してよかったよ。

「董子、顔赤いけど、どうしたの。あ、もしかしてこの間のことでも思い出した?」

「な、何を思い出すって?」

「動揺しちゃって。かわいいなあ、もう」

「知りません、もうっ」

 はっ、これって思い出したって認めたようなもんじゃんか。思わず課長のほうを見ると、やけに嬉しそうに「お茶でも入れるから、コート脱いで座ったら」とイスをすすめられた。


「和哉さんが、甘いものを買うなんて珍しいですね。某松モナカ以外は苦手だと思っていました」

「俺、某松モナカもそんなには・・・あれはまあ、けん制みたいなもので」

「は?けん制?」

 何に対してのけん制?某松モナカを持ってきた山崎くんと何かあるのか?

「いや、それはまあ、いいんだ。どうして初恋ショコラを買ったかと言うと・・・」と課長は強引に話を“初恋ショコラ”を買った理由に話題を変えてしまう。

「今日、休憩ついでに出張先の近所にあるコンビニに立ち寄ったんだ。そこは高校の近くでね学生がたくさん来ていたよ。そのなかで、夫婦漫才コンビを見かけたんだ」

「夫婦漫才コンビ、ですか?」

「そう。たぶん、その高校の生徒だと思うんだけど、見た目からして草食系の”まあくん”と呼ばれている彼氏とハキハキした気の強そうな”あいちゃん”という彼女でさ。

 その2人の会話のテンポときたら、あれは相当年季が入ってるな。”まあくん”のほうが“初恋ショコラ”を一緒に食べようって”あいちゃん”におねだりしてるんだけど、彼女はあっさりとそのおねだりを却下しまくってたんだよ」

「へえ」

「俺も思わず気になっちゃってさ、買い物するフリをして近くで聞いてたわけ。そしたら今度は彼氏が懇願し始めて、その内容がマッサージしてあげるとか朝起こしてあげるとか・・・そこまで言われたせいか、彼女のほうも次第に軟化してきてさ~。」

「ふふっ、可愛いですね。そのカップル」

「実際に遭遇してみると、なかなかすごかったぞ。同じ高校の生徒らしい子は慣れてるのかスルーしてたけど、俺みたいな知らない人間はちょっとぎょっとして、そのカップルの後ろを誰も通らない。

 あれって、彼女のほうは“ツンデレ”って言うのかなあ。俺、はじめてみたけど、すごく自分が年とった気分になってしまった。」

 課長の情けなさそうな顔・・・なんて貴重な。私は見知らぬ女子高生の”あいちゃん”に思わず“グッジョブ!!”と心の中で親指を立ててみる。


「・・・とまあ、そんなわけで俺もつられて“初恋ショコラ”を買ってみたんだ、董子」

「そうなんですか。」

 すると、課長はなぜか1個だけフタをあけて、フォークも1本だけ出してきた。あれ?ケーキは2個なんだけど・・・

「和哉さん、ケーキは2個あるけど」

「このケーキ、電子レンジであたためるとクリームがとけて美味しいらしい。だからもう1個は明日の分」

「そうなんですか」

 そう言うと、課長はケーキを一口分私の前に差し出した。

「は?和哉さん?」

「董子、口あけて。俺が食べさせてあげる」

「はい?」まさかの逆!!今度は私が口あけるんですか!!

「ほら、ここには俺たちだけだし。口あけて?」

 課長は私がおとなしく口をあけるまでやめるつもりはないらしい。早く終わってほしい私がおずおずと口をあけると、ケーキが口の中に入ってきた。

「美味しい?」

 美味しいですけど・・・恥ずかしさがそれを上回っております、課長!!しかも、何嬉しそうに私の様子を見てるんですか。その視線、妙に色っぽいんですけど。

 見られながら飲み込むという私からすると羞恥プレイをなんとかクリアすると、今度は課長の唇の感触。うっかり口を開くと課長の舌が侵入してくる。

「んっ・・・」

「ケーキとぼくのキス、どっちが好き、だっけ?やっぱり俺は董子のキスのほうが好きだな」

 だから、耳元でささやくのは反則だって・・・。

「・・・泊まっていくよな?」

「・・・背中と鎖骨に跡をつけないって約束してくれるなら」

「じゃあ、今日は見えないところにたくさんつけようか」

 どんだけ、跡をつけるのが好きなんですか・・・課長。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


「まあくん」と「あいちゃん」にジェネレーションギャップを感じる宮本課長なのでした。

 それはともかく、課長は私の作品の「肉食部門」担当になりつつあるのは気のせいですかね。


活動報告にて「登場人物の声を妄想してみる」というのを

書いているのですが、他は結構いろいろ候補を頭の中で考えたのですが、

課長の声だけは即決でした(笑)。



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