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初接

そこは真下に海が広がっていた


いや、それを下と言っていいのかどうかには疑問が残るが、重力が働いている方向を下というならそれは下で間違いない。そして付け加え言うならば、もしその海で泳ぎたい場合はここから400kmほど落下をする必要がある


地球、衛星軌道上。わかりやすく言うとここはそういう名前になる


「ワープドライブ航法終了、通常推進に切り替えます」


太陽系統合政府軍第3艦隊所属、巡洋艦ディセンベル。現在の任務は威力偵察で、要するに敵戦力を知りたいから巣をつついてこいと言われたのである。何の事は無い、ちょっかい出してすぐ逃げるだけ


「これより本艦は国連軍プラットフォームへ接近する、アサルトギアを上げろ」


眼下に広がる美しい光景と敵地に単艦侵入している恐怖を振り払い、レオハルトは戦闘状態に入る事を部下全員に告げた。艦橋手前にあるカタパルトがハッチを解放する


『クラブ1テイクオフ、良い眺めだなこれは』


『景色を楽しんでる場合ではないわよ、クラブ2テイクオフ』


そこから2機の人型兵器が飛び出したのを確認してから艦のメインエンジンが火を噴き出した。間も無くこの位置に人工衛星が現れる、目標となる補給基地だ


「攻撃後すぐに離脱する、今のうちにエネルギーを貯めておけ。クラブ隊、交戦は2分だけ許可する、置き去りにされたくなかったら戻ってくるんだ」


『不本意ながら了解しました、艦長殿』


近距離仕様の1番機が言い、溜息をつきながら遠距離仕様の2番機が続く。口ではああ言っているがわかっているはずだ、別段心配はしていない


「レーダーに感あり、特定します」


来たか、と、艦橋の空気が引き締まる。レーダーサイトに映った光の方向へ舵が切られた


「コンディション1に移行、射程に捉え次第攻撃を開始する」


巨艦が体を捻って回頭を行う、機動部隊は先行するべく速度を上げていく。アサルトギアと呼ばれたそれは共に黒い塗装、武装の違いはあれど同型機である、綺麗な2機編隊で艦から離れ


「っ…艦長!プラットフォームじゃありません!戦艦1、接近してきます!」



予定通りの行動はその一言ですべて崩壊した



「クラブ隊、作戦中断だ、本艦の直掩に回れ。予定を変更、敵戦艦との交戦後、エネルギーが確保でき次第ワープドライブに移行する」


望遠映像で出されたそれは全長およそ200メートル、やや小さいが戦艦、ないし巡洋戦艦である事は間違いない。だが違和感を感じたのはそのフォルムだ、槍の穂先のような恐ろしく鋭利な艦体、サイズに似合わず確認できる武装は前部単装砲2基、連装副砲が左右に1基ずつのみ、VLSミサイルを搭載していると考えたってあまりにも寂しすぎる。考えている間に右側の装甲が解放され、発艦用カタパルトがせり出てきた


観察している暇は無い


『旧体制派のオンボロ艦なんて俺達だけで十分ですよ、沈めちまいましょう』


「クラブ1、命令に変更は無い」


『了解、りょーうかい』


ただの戦艦とは思えない、強烈な悪い予感がする。できれば今すぐ逃げ出したいが、通常航行だけではどうしようもない


「国連艦から通信です、どうしますか?」


「…繋げてみろ」


通信士が回線を繋げる。クラブ隊は命令通り艦直上に帰ってきた


さて、どうなる



『カタパルト進路クリア、フレスベルク、発艦してください。……フレスベルク?ミドリさーん?』


『おうどうした』


『なんかフレスベルクから応答が…まだ乗ってないとかじゃないよね…?』


『いやーあのガサツの化身でもさすがにそれは……ありえるな』


『えっと…ミドリさーん?乗ってますかー?』


『アリス、接続先を間違えてるぞ』


『へ?…ぇ……ひゃあああああああああああああああ!!?』




さてこれはどうしようと本気で頭を抱えた




『ここっ!こちらは国際連合軍所属戦艦ヘリオスフィア!貴艦は当方の領空を侵犯しています!だから…その……』


『降伏勧告だ』


『降伏勧告ですぅ!!』


ふざけている、ふざけてはいるが、敵艦の主砲が動き出したのを確認してしまった、仮にも戦艦の搭載砲、1発でも食らえばこのディセンベルはバラバラに砕け散る


「操舵士、避ける準備をしておけ。クラブ隊、アサルトギアが出てきたら接近前に撃墜するんだ」


返答はしない、考える時間を稼げるならそれが最善だろう。主砲を榴弾から徹甲弾に切り替える、ミサイルは発射寸前まで持っていく


『誰も答えてくれない…トラウマになりそう…』


『めげるなアリス、もう一度だ』


『うぇぇぇぇぇぇ……』


そういう話は通信を切ってからしろと言いたくなるが情報筒抜けなので黙っておく


『艦長、こちらクラブ2。先制攻撃が妥当と思います』


この珍妙な通信を聞いていない機動部隊が冷静に進言してくれた。確かにこちらから始めてしまえば反撃も読みやすくなるし、機動力では間違いなく勝っている、主導権はこちらにあるはず


「主砲1番2番照準」


203mm連装砲2基、地球の重力圏内であることを考慮して修正を加える。装填してあるのは装甲を貫く事だけを考えた徹甲弾だ、戦艦といえど無傷ではすまない


『これを最終通告としますぅ…貴艦は国際連合の領空を侵犯しています…降伏しなければ直ちに攻撃を』


照準完了、砲塔問題無し、システムオールグリーン



「撃てぇ!!」

用語説明


・アサルトギア

直訳で攻撃機械、別段この名前が気に入っているわけではない。宇宙空間で戦闘行動を行う小型兵器というジャンルにおいて最初期に作られたものは箱状、または球状の筐体にバーニアユニットと武装を搭載したものだった。それに拡張性を付加するため追加パーツのハードポイントを増設していき、あらゆる状況での汎用性を求めていった結果人型になった。平均サイズは全長15メートル程度、液体燃料を使用し主に戦闘艦や衛星軌道上プラットフォームで運用される。なお定義が定まっておらず人型であるなら大抵はアサルトギアと呼ばれる




・ワープドライブ

瞬間移動の類と思われがちだがテレポートとは別物という事になっている。直訳で宇宙空間歪曲航法、あらゆる物体は光速を超える事ができないという壁を気合と根性で乗り越える移動方法である。本作で使用するものはメキシコ人アルクビエレが発表した最も古くかつ原始的な方法で、単純に言えば艦後方の空間を膨張させ(押し出す力)艦前方の空間を収縮させる(引き込む力)事で川に流れる葉っぱの如く強引に光速を突破しようという考え方である。瞬間移動している訳ではなく単純にとんでもない速度で移動するだけのため障害物があるとワープ不可能となる。なお、この航法を現実のものとするためには現在観測されている全宇宙の持つすべてのエネルギーの100億倍のエネルギーが必要とのこと

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