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マフィアの女とその男  作者: 弥月ようか
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遺されたもの





弾はそいつの首に直撃したように見えた。

けれど、そいつは逃げ遂せていた。


その場に残っていたのは、そいつの真っ赤な血痕と、あたしがそいつの首に巻きつけた銀のチョーカーだった。残された血だまりの大きさから、上手く逃げても生きてる確率は低いという話が聞かされた。




それからの日々は覚えていない。

作戦は、あたしのせいで失敗したと思っていたのに、なんのお咎めも来なかった。


廃人同然になって、そいつの借りてた部屋に移り住んだあたしは、もう何日も何日も部屋の外には出ていなかった。



幾日過ぎたかも分からなくなってベッドに転がっていたある日、部屋にボスが現れた。


「マリア、俺のところに来い」


あたしを救いに現れたのは、やっぱりボスだった。

よく考えれば、あの作戦であたしを囮役にしたのは、敵のスパイがそいつだって…あたしの男だって知ってのことだったんだろう。ボスからすれば、放り出しておいた玩具を横取りされた気分だったのかもしれないし、あたしのボスへの忠誠を量ろうとしたのかもしれなかった。

でも、そんなのどうでもよかった。

ボスの思惑がどうであれ、そいつがあたしを騙して裏切ったことに変わりはなかった。そして、置いてけぼりにされた自分が惨めで憐れで不甲斐なくて悔しかった。

叫び喚いて抵抗しながら、あたしはボスに半ば強引にその部屋から引き離された。


あたしは相当暴れたと思うし悪態もついたはずだった。けどボスは黙ってあたしを抱きしめた。




それはあの時と同じだった。

当時のボスがこの世を去って、あたしが一人、部屋に取り残されているのを見つけに来てくれた、あの時と。




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