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午前中

朝の決意から、3時間が経過した。

 

 現在午前10時である。

 

 太陽が燦々と私たちを照らしていて、体がムシムシと汗ばむ。

 

 だが、いつものように軍曹に喝を入れられて動くような一同ではなかった。

 

 一人ひとりの瞳孔は一寸たりとも譲る気はなく、殺気に塗れている。

 

 そして、どしどしと荷物をふくみ重たい足を運ばせ戦場の物々しさを語っている。

 

「この調子だと予定よりも早く合流地点に辿り着きそうだ。」

 

 言った途端に彼の額の汗が目の中に入り、痛っと片目を閉じるフェイロンさん。

 

「ああ、そうだな、だがその反面一同の様子もおかしい……」

 

 それに続いたグジョウさん。

 

「気を張り詰めすぎている、これじゃ戦闘になる前に力尽きてしまう。」

 

「はぁ、はあ、はぁ」

 

 そんな話に口を挟む暇もなく、疲れ息が乱れてしまう私。

 

「こりゃ、休息が必要そうだな、まあでも安心しておけ。あとちょっとばかしで目的地の小山だ。」

 

「ああ、速く行進しているし、長い時間休息を取れるはずだ。」

 

「ふぅ、ふぅ、」

 

 疲れちゃった私は、すかさずカバンの背についた水筒を取り、水を飲んだ。

 

 歩いているのに既視感を感じる。

 

 飲み終えたので、カバンにまた戻した。

 

 そういえば、カゲルもかなり疲れているようだ。

 

 家は料理亭からか、あまり運動していなかったのかな?まあ、その分料理美味しいけど。

 

「カゲル、大丈夫?」

 

 カゲルは息をはあはあと切らせて歩いていて、顔色も青くなっていて明らかに病人だ。

 

「ああ、少し疲れているだけだ。大丈夫、大丈夫……」

 

「うーん、明らか大丈夫な人の反応じゃないな」

 

 瞳孔も覇気がなく、どこを見つめているかわからないし、指を3本立てて何本見える?とか聞いたら5本とか返ってきそうな感じがする。

 

 このままじゃやばい、肩を支えるか?でも、私自体力がないから、二人で倒れる未来が見える。じゃあフェイロンさんに頼む?私たちを導いてくれる班長の役割のフェイロンさんにこれ以上迷惑をかけるか?いやでも、報連相があるしそっちの方が良いか。

 

「フェイロンさん、さっきからカゲルの調子がすぐれないようです。」

 

 すかさずフェイロンさんに声をかけた。

 

 ことは早く済まさなければいけない、ましてや今日は計画日なのだから。

 

「本当かっ?気づかなかった。」

 

 そう答えたフェイロンさんはカゲルに向かった。

 

「カゲル、ちょっと体かせ」

 

「は、はい」

 

 フェイロンさんはカゲルの体を持ち上げた。ウイスキーの入った大樽を持ち上げるかのようで、フェイロンさんの筋骨隆々な体が顕著に現れていた。

 

 す、すげぇ、カゲルって確か70キロはあったよな、しかも荷物も持ってるのに片手でなんて……

 

 カゲルはフェイロンさんの肩の上で意識を失った。

 

 

「お、そろそろ見えてきたぞ」


 カゲルが運ばれてから30分程度が経った。

 

「つ、ついたぁぁぁぁぁ〜〜」

 

 疲れ切った時の達成感が絶大すぎる、筆記試験で学年一位を取るよりも気持ちいいかもしれない(筆記試験でとったことないけど)。だけど疲れもあり、ややか細い声だった。

 

「予定よりも、1時間半も早く到着とは、めちゃくちゃ早足で来ていたんだな」

 

 切り株に荷物をドスンと置いてから、グジョウさんがカゲルがぶっ倒れた皮肉をつぶやく。

 

「軍曹はなにをしているんだろうな、まあ文句を言っても報告をしなかった我々の責任だか……」

 

 軍曹に報告なんて、無理に決まっている、頭が硬い人だから、言ったって『軟弱者!このくらいで狼狽えるな』と、カゲルに鞭を打たれ馬車馬の如く歩かされただろう。

 

 そのくらい緊迫している戦場というわけだが、兵士の精神も考えてもらいたいものだね。

 

「むなことでも、ぶっ倒れるんだぜ?カゲルが、青年がだよ、いくらなんでもひどくねぇか?」

 

「まあまあ落ち着けグジョウ、今日が終わればその分休息もあるさ、そういうところあの軍曹はあるからな。」

 

 カゲルと犬猿の仲のグジョウさんであるが、人一倍心配もしているらしい、喧嘩するほどなんとやらというが、まさにその通りなんだね。

 

「フェイロンさんは軍曹さんと何回か戦場を経験してるんですか?」

 

「ああ、そうだ。過去に一回しか戦闘をしていないが、途中まではガンガン飛ばして厳しい印象があったが、戦闘が終わると意外と休ませてくれる。まあ戦場の休息ゆえ、一日中ばかしの休みだがな。」

 

「はぇ、そうなんですか。」

 

 1日でも休みがあるのは非常に嬉しいことだ。体を休めるとともに談笑したり、戦闘の事を少しでも忘れられる。

 

 勝てばの話だけど。

 

「それよりも、カゲルを起こすぞ、戦闘直前に起こされても覚悟ができまい」

 

 そう言って、フェイロンさんは自分の水筒を取り、蓋を開けた。

 

「ほれっ」

 

 そのまま水をカゲルの顔にぶちまけた。

 

「うぇ、コホッ、コホッ!」


 水をかぶったカゲルは咳をしながら蘇生された。

 

「お、大丈夫か?」

 

「あれ?ここは……?」

 

 カゲルは辺りを見渡した。

 

 碧々とした木々に包まれ、生命の息吹の根源である草花がありのままに存在する。

 

 御天道様は南中には少し早くちょっとだけ東に傾いている。


「目的地だ、体調がすぐれないようだったから担いで運んでやった」

 

「あ、ありがとうございますっ!」

 

「まったく、フェイロンさんはかなり苦労していたと思うぞ」

 

「そ、そうだよな、ご迷惑をおかけしてすみません」

 

 グジョウさんの態度が戻った、ツンデレ?塩対応っていうのかな、すごい変わりようだ。

 

 それに沿って、カゲルはフェイロンさんに謝罪した。

 

「謝るでない、戦場は助け合いよ、たとえ銃を相手と交わ得なくとも」

 

 フェイロンさんはめちゃくちゃかっこいい、こんな言葉を恥もせず言えるとは、人生って積めば積むほど恥を感じなくなるのかな。

 

 まあフェイロンさんはちゃんと助けてるから恥じる必要もないのだけどね。

 

「一同よ聞け!今より、谷勝中尉率いる第三大隊と合流す!」

 

 軍曹の声がラッパとして響き渡り、私たちの背筋を正した。

 

 中尉が大隊を率いるとは、かなり日の本も大変なんだな……そういえば私たちの中隊も軍曹が率いているし。

 

「一同、右へならえ!気をつけ!敬礼!」

 

 右へ習い、隣との感覚を合わせ、気をつけをし背筋を正した。

 

 敬礼は、地面と平行に45度ピシッとまげて、鉄兜に少し人差し指の先をを触れるくらいにする。 

 

 さて、そろそろ本格的になってきました、時間が経つと実感が湧いてくるね。 

 

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