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戦場だけの食卓を

暗闇が火の心地よさを引き立てている。


 狩猟班が狩ってくれた狼が五等ほど並んでいた。


 戦地というジャングルに一ヶ月も揉まれれば自然にも好かれるのだろう。


 米はない。何を食べるのかって?最近で炭水化物をとった記憶はじゃがいもくらいだ。最近というのは、食べれない日もあるからだ。


 たまぁぁぁぁぁぁに、ジャガイモとかなんかよくわからないじゃがいもに酷似したやつがあるからそれ見つけたらもう優勝みたいな感じ。


 野草は基本何束か摘んできてそれを煮たり焼いたり、色々して食べることが多い。


 草は本当に助けになる。肉がない日は毎日とお世話になった、肉あってもお世話になった。


「今日は一段と豪華な日じゃねぇか。狩猟班は流石だな。」


「そうですね、こんなご馳走にありつけるなんて……久しぶりの幸せですよっ!」


 煮詰めた肉を見るだけで涎がたらたらと垂れてきてしまう。


 肉という単語を聞くだけでもう……ムリっ!


「こんな日がずっと続けばいいな、もちろん戦争なんか終わって一般的なお家のリビングで食卓を囲めればそれがベストなんだが、そんな妄想するよりも今はこっちか。」


 相当家族愛が強い人なんだな。逆にそれが鎖になっている節もあるが…………

 

 

「うまぁぁ…………!!」

 

 ぐつぐつと煮込まれた肉たち、肉の他にもじゃがいもや、何かの野草、その他調味料が入れられていて、こんな美味しいご飯にありつけたのも久しぶり(再度認識)だからまじでうめぇなこれ!

 

「いやぁ、やっぱり梓はうまそうに食うから、こっちも獲ったことがうれしく思えるよ。」

 

「うん、そうだ。今日はたくさん取れてよかったよ。」 

 

 狩猟班の面々は満面の笑みを浮かべた。

 

「はい!まじでありがとうございます!料理うますぎですよ!く、あとは保存できて、軽ければ……」

 

 肉は他の資源に比べて保存が効かない。

 かと言って干し肉にしてもかなり嵩張ってしまうから、できない。

 

 だからこそ、こんな食べれるのは感謝すべきことなのだ。

 

「そういえば、ここってどこなんですかねぇ。」

 

 進軍するはいいものの、今日どれほど進んだのかは知らない。

 

 だって、全て軍曹さんに任せていて、地図を開く暇なんてないんだもん。

 

「そうだなぁ、一ヶ月くらい前にクワントンについて、三日前にはチョンチンをでた、だからこのままシンジャンとかに行って、そこから絹の道に沿って、進軍していくんだと思う。」

 

「もうそんなに進んだのか、じゃああと10日くらいでエイジアを出て、ユアロップへ進出か。」 

 

「全く、どれだけの国を敵にまわしているのだろうな。こんな戦争終わればいいのに。」

 

「それ言ったら終わりだろ。政府の兵として、悟らずに国を信じて進軍するのが一番だ。」

 

「つまりは現実逃避ということか。」

 

 軍曹は違うところで食べている。

 

 だから、小さい声で話す必要はない、だが万が一のためにちょっと控え目に話している。


 まあ軍曹もかなりこたえているはずだが、立場上律さなければならないのだ。

 

 建物の瓦礫に座って飯を食う。

 

 気まずい雰囲気になって、みんな黙り込んだ。

 

 うーん、やっぱり私こういうの苦手なんですけど、ちょっと誰か話してくださいよ!耐えれない……

 

「もしさ、戦争が起きていなければ、世界を飛び回るほどのシェフになりたかったんだ。」

 

「確かに、めちゃくちゃ料理上手ですよね。」

 

 この晩ごはんを作った張本人が、かしこまっていった。

 

 思えば、この人が作るご飯はどれも美味しい、いくら材料が少なくても、調味料のバリエーションがなくても、料理自体美味しいのだ。量が少ないだけで。

 

 てか、めちゃくちゃうまいよ。


 この話で合点が一致した感じだね、うん。

 

「そうだなぁ、俺もお前の飯を毎日食べているが、めちゃくちゃうめぇ、本当にその道の人みたいな味だ。」

 

 言いたかったことの代弁に続いて、うんうんと頷いた。

 

「まあな、うちは家が料亭だったんだ、和洋折衷、いいとこ取りの飯をたくさん開発して独自の料理を提供してきた。もちろん幼かった俺はフライパンを握ることはできなかったが、料理を運んだり、皿を洗うことはできた。その時のお客さんの食に興味を持ちキラキラとした笑みを浮かべている姿を見て、うちも将来は料理を広めたいと思った。限られたコミュニティにだけでなく全世界へ。」

 

 二十歳を過ぎたあたりの青年だ。

 

 その年にして、人生をどう進むか、何するのが幸せなのかと言う問いに対するアンサーを持っている彼を、ちょっぴり羨ましく思うが、それ以上に尊敬が強かった。

 

「……すごいいい夢ですね。うまく言い表せることはできないんですけど、自分と向き合って、したいことに見通があるって本当にすごいですよ。生きる活力ですね」

 

 そうだ、何をすれば幸せかわかるなら、それを実行するのみ、茨の道を進んでも。

 

 いくら戦争でも、生きていたらしたいことがあればそれだけで力になり、勝利になるんだ。

 

「そんな大層な夢じゃないよ……まあ生きる活力になっていることには変わりない。現に今ここで料理を振る舞えているのも幸せだ、戦争の途中で、限られた食材、調味料でどれだけ美味しいものを作るかと言うこの状況は、一料理人としての修行な気もして、結構よくやらせてもらってるよ。」

 

「おうっ、その勢いだぞカゲル!戦争が終わったら、今度は万全の体制で本気の料理を俺に食わせてくれよ」


 応援するような言い方は、人生を先に歩んだ重みが伝わる。

 

 もしかしたら、息子のように見ているのかもしれない、もちろん私のことも娘のように見ているのだろう。

 

 なぜかそう確信できた。

 

「ああ、もちろんだよフェイロンさん、フェイロンさんだけじゃなくて、梓やグジョウも来いよ!」

 

 なんか華やかでいいな、ちょっぴり幸せを感じた。

 

 ちなみに、弱い40の男はフェイロンという名前だ。ちょっと呼びずらいよな……

 

 カゲルとグジョウは双方似て異なるような存在だ、二人とも料理が好きな20代だが、カゲルは本格派で、グジョウは家庭派だ。

 

 具体的にいえば、カゲルはお店とか、旅館とかで出てくるレベルの料理だが、グジョウはお母さんの味。

 

 だからこそ犬猿の仲なのだ。

 

 私たちからもてはやされるカゲルのことが嫌いらしい。もてはやすなんてことしてないんだけどね。


「しょうがねぇな、だけど飯代は抜きで頼むぞ」


 やっと口を開いた。

 

 カゲルの語り出しからずっと俯いて、聴く耳だけを立てていた。

 

「ああ、その時は奢るよ。梓もくるよな」

 

「はい、もちろんですよ!めちゃくちゃ美味い飯食わせてください」

 

 半ば言わされた気もするが、食べたいという気持ちが本心。

 

 行けるなら行きたいね。

 

「じゃあ、それで決まりだな。きっとこの戦いもすぐに終わるさ、まあ俺たちが躊躇なく敵を抹殺できればの話だが」


「抹殺か…………」

 

 夢を語り合っていたのにもう現実に戻ってしまった。

 

 もうちょっと夢見心地を味わいたかったな、まあ戦争がなければ、カゲルさんやグジョウさん、フェイロンさんとの出会いもない訳で、決して戦争に感謝するわけではないが、出会い自体には感謝しておこう。

 

 ありがとね。

 

「いや、もうその話は無しにしようぜ、ほら、夜も更けてきたしもう床につくとしようぜ」

  

 フェイロンさん……!!

 

 言いたいことをちゃんと言えるフェイロンさん、言いたいことの代弁をしてくれるフェイロンさんには本当に感謝しかないね。

 

 私もそうやって本音を言える勇気が欲しい。

 

「ああ、そうだな夜ばかりは休んでも許されるはずだ、何も考えないで寝るか。」

 

 互いにおやすみ、と言ってそれぞれのテントに入る鞄に備え付けておいたやつだから軽くて頼りない気もするが、意外と綿でしっかりとしているんだ。風も全然入ってこない。

 

 寝袋の中に入る。ずっと使っているものだが、今日はいつもと使い心地が違った。

 

 いつもより温もりを感じた。この暖かさはなんでもない人との関わりだったんだろう。

 

 一ヶ月以上戦争の岐路を共にしたが、毎晩毎晩愚痴ばかりで互いのことを知る機会などなかった。

 

 やっぱり、交流は楽しい。

 

 みんな違う郷里で、戦争のために集められ、価値観や方言も違う中協力して任務を達成する。戦争がなければこんな出会いはなかったんだろうな。

 

 私はまだ引き金が引けないから、恐怖や自分を痛める思いはしないが、そろそろ頭打ちが来るだろう。

 

 引き金を引く時に重たくて指が動かないのだ。

 

 相手が生殺与奪の権を持っているのだとしたら、それは自分も持っていて……異国で言葉も通じないが、撃ち合いはしたくないという意思は繋がりあって、何回も避けてこれた。

 

 けれど、世の中そんなに甘くないことはもう承知している。

 

 いつの日か必ずトリガーが引かれ、相手を殺す日、もしくは殺される日が来るのだ。

 

 そんな覚悟ができる気がしない、だけどそれはいつ起きるかわからない。だからこそ今覚悟するのが正解なんだろうが、できないのだ。

 

 人なんて殺したくない、殺せない。

 

 そんなことをさっき考えるなと言ってくれたフェイロンさんがいたのに結局考えてしまって、気分が落ち込んだなか夢の世界に入った。

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