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共感の枯渇

 共感は、無限ではない。


 この事実を、あまりにも多くの人が忘れている。


 共感は感情であり、

 感情は資源であり、

 そして資源には、必ず枯渇が訪れる。


 


 最初の「読まれていない」は、純粋だ。


 誰もが一度は通る道であり、

 多くの人が胸を痛め、

 自分の過去を重ねる。


 だから人は手を伸ばす。


 「分かる」

 「つらいよね」

 「応援するよ」


 


 だが、二度目、三度目はどうだろう。


 


 また同じ言葉。

 また同じ嘆き。

 また同じ構図。


 


 人は、ここで無意識に数え始める。


 ――この人、前にも言っていなかったか?

 ――あれ? その時はPV伸びたって言ってなかった?

 ――今回も、また同じ話だな。


 


 共感は、疑念に変わる。


 

 そして疑念は、静かな距離になる。



 重要なのは、ここだ。


 本当に人間が無関心になれば、

 怒らず、噛みつかず、否定もされない。


 ただ、離れていく。


 だって、どうでも良いのだから。


 


 これが最も致命的だ。


 


 批判されているうちは、まだいい。

 アンチがいるうちは、まだいい。

 何かを言われているうちは、まだ舞台の上だ。


 


 だが、共感が枯れた瞬間、

 作者は舞台から追いやられていく。


 


 TLに流れてきても、目にも留めない。

 義理RTはしても、開かない。

 PVという数字は残るが、誰の心も動かない。


 


 ここで多くの人が、勘違いをする。


 


 「飽きられたのは作品のせいだ」

 「運が悪かっただけだ」

 「タイミングが悪い」


 


 違う。


 


 共感を使い切ったのだ。


 


 人は、同情には慣れる。

 悲劇にも慣れる。

 努力アピールにも慣れる。


 


 そして慣れた感情には、

 二度と心を動かされない。


 


 これは冷酷な話ではない。

 ごく自然な、人間の性質だ。


 


 だからこそ、

 「共感」を宣伝に使う行為は、

 短距離走に向いていて、

 長距離走には致命的なのだ。


 


 共感で集まった読者は、

 作品ではなく、感情を読みに来ている。


 


 感情が更新されなくなった瞬間、

 彼らは次の「読まれていない」へ移動する。


 


 ――別の誰かの元へ。


 


 ここで、残酷な結論を言おう。

 共感は、ファンを作らない。


 共感は、

 「その瞬間だけ味方になる人」を作るだけだ。


 作品を好きになる人は、

 感情ではなく、体験を求めている。


 面白かった。

 苦しかった。

 刺さった。

 忘れられない。


 それらは、聖者の施しからは生まれない。



 施しとは、上位者である聖者が、持たざる可哀想な餓えた貧民の腹を一時的に満たすと同時に

 自分がこの貧民よりも上であると、無自覚の内に上下関係を再認識する手段でしかない。


 


 だが創作とは、転び打ち据えられたとしても何度でも立ち上がり、歩き続ける行為だ。


 


 共感の施しに慣れた者は、誰かが手を貸してくれるまで、自力で立ち上がる事をしない。

 ひな鳥が親鳥にエサをねだる様に、口を開けて待っているだけなのだ。





 だから、最後に残るのは――


 


 数字が減った時、

 もう使える言葉がない作者。


 


 「読まれていない」と言っても、

 誰も振り向かない。


 


 その時、本当にみられていたのは、

 作品ではなく、人間だったと知る。


 


 共感は、薬にもなる。

 だが、用法を誤れば、依存になる。


 


 蛇蝎は、ここで再び問う。


 


 あなたが欲しかったのは、読者か?


 それとも、慰め役か?

 

 あるいは、金銀財宝(PV・評価ポイント)か?



 この違いを誤った者から、

 静かに、創作の席を立っていく。


 


 失敗は人を育てる。

 だが、身に合わぬ成功は、人を蝕む。


 

 毒はいつだって、甘いシロップの顔をしてやって来るのだから。

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