続彼女との距離
口調は自分ではわからないものですね。
僕--田中拓海は高校生になってから実家を離れて暮らしているなんの取り柄もない男だ。 今日は学校もバイトも休み⋯久しぶりにダラダラ出来る。 こんな日は、一日中布団に潜りゴロゴロしておこう。そう幸せを噛み締めていた時。 不意に部屋のドアが空き、彼女--小川瑞希が部屋に入って来た。
「おはようございます。拓海」
「おはよう~瑞希朝早いね!もっとゆっくりしようよ~」
「朝ご飯の準備ができました。拓海」
「いつもありがと~瑞希、でも今日はゆっくりしたいなぁ~あとで食べるから、僕の分置いて~先に食べて!」
「用意が出来ました、行きましょう拓海」
「へぇ?わかったって!行くから~無理に引っ張らないでよ~お願いだから!」
机に食事が並ぶ、僕も手伝うと伝えたが、「座ってください」しか言わない。 僕は何時も通り用意されるのを待つだけだ。 いつも通りと言えばそう、瑞希の服装もだ、休日なのに学生服にエプロン姿なのである。 本人に何時も「なんで休日なのにその格好なの?」といつも、きいているのだがまともに取り合わない。 まぁ小さい頃から僕といる時はそんな格好だが。
でも僕は知ってる、瑞希は僕のいないところでは私服であることを、学校の友達と遊びに行く時だってそうだ。
まぁ別に⋯そんなことはどうだっていい、僕は彼女の作ったご飯を食べる。
「今日も美味しいよ~瑞希!、やっぱり瑞希の作るご飯は最高だ~」
「そうですか」
「そうだよ~、将来、毎日瑞希の作るご飯を食べる、誰かさんは幸せ者だね~」
「そうですね」
食事が終わり、今度こそダラダラしようと、部屋に戻ろうとした時、彼女が話しかけて来た。
「買い物に行きます拓海」
「うん、気をつけてね!行ってらっしゃい~」
「行きます拓海」
「うん?だから気をつけてってなんで引っ張ってくるの!えぇ?」
ここは近くのショッピングモール⋯僕は渋々ついて来た。 まぁ荷物持ちがいたほうがいいよね。
「拓海、ここです」
「うん~いい眺めだね、今日はいい天気だから見晴らし最高だね!瑞希」
「そうですね」
「拓海、ここです」
「いい雰囲気のカフェだね!なに頼むの?」
「はい」
「えっと~ラブラブデートアイスパフェ? すごい名前のパフェだね~」
「そうですか」
「そうだよ、なんかカップルが頼むみたいなやつじゃん!」
「そうですね」
「まぁ瑞希が食べたいならいいか~すみません、店員さんこちらのパフェふ『一つお願いします~、あとスプーンは二つくださいね!』えっと⋯あ!それとホットコーヒー二つお願いします。」
店員さんに会計してもらう時に微笑んでもらって顔が赤くなって恥ずかしい気持ちになった。 うん気持ちを切り替えて今度こそ荷物持ちだね。
⋯あれおかしい、さっきからずっと色々な場所に行ってるのに荷物増えないぞ? そうかわかった、彼女は僕に気を使って、かさばる買い物は後にとってあるんだね、だったらそんなことしなくてもいいようにしっかり言わないといけないね。
「瑞希、僕は力持ちだからね!だからいつでも買い物してもいいんだよ~」
「はい、そうですか」
「うんそうだよ、だってその為に僕を呼んだんだよね~」
「?」
おかしいな、話しが噛み合ってないまた彼女の事を理解してないようだ。その時、不意に横から声が聞こえた。
「あれ、瑞希、こんな所で会うなんて奇遇だね」
「こんちわ瑞希ちゃん。てかなんで制服着てるの?学校帰よってたん?」
こいつらは、彼女と仲がいい、福田環奈と松田葵だ。僕は気づかれない様に、三人から離れて様子を伺う。
「うん、まあ~そう言うことにしといてよ!」
瑞希は学校で見せる笑顔を彼女たちに見せる⋯所で瑞希の話し方は独特だな。
「よし、じゃこれから一緒に遊ぼうか、何処行こっかね」
「屋上のカフェ行きたい。今日も天気がいいから景色がいいよ」
「環奈、葵、~ごめん!今日はついでに来ただけだから~また今度ね!」
「そっか残念、しょうがないか」
「また明日ね、瑞希ちゃん」
瑞希がこっちに来る、僕は思った事を彼女に言った。
「いいのか?あいつらと一緒に遊びに行かなくて!」
「はい」
「そうか、じゃ~用事とやらを終わらせて、帰るか!」
「もう、終わってます」
「へ?なにも荷物になるもん買ってないけど?」
「帰ります、拓海」
「はぁ~わかったよ! だからそんなに引っ張らないで~お願いだから!」
荷物持ちじゃないって、じゃなんのために来たんだ僕⋯まるでデートみたいじゃないか。
やっぱり僕は彼女の距離がわからない。