表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉の箱庭  作者: mumei_muon0923
第一章 【記憶の覚醒】
10/12

第九話 断片的な疑問

「なんとも言えない感じだな…」


 黒の制服と白のシャツが合わさった隊員専用の制服。手には先ほどの黒服たちから渡された銃剣とその鞘を持っていた。服に関しては、少し重さを感じ取ることができ、耐久性はかなりのものだ。

 そして鏡に映る自分を見つめてみると、普段とは違う雰囲気を感じ取った。


「…これが、今の俺か」


 昔の零時は、とにかく精神が歪んでいた。その昔の姿と同化するかのように、過去の自分がこちらへと見つめてくる。けど、零時は目を瞑り、もう一度自分自身を見ると、やはりそこには自分しかいない。


「とりあえず、今はるなと合流しないとな。それに、今しばらくはこの組織とかについて知っていかないといけないし」


 零時はそう独り言を呟き、更衣室から出ると、鼻歌を歌いながら待機していた、制服姿のるなが見えた。

 るなはこちらに気づいたのか、口を大きく開け、驚きと感動で、彼女の心は躍っていた。


「おぉ!! 零時もついに制服デビューだねぇ! めっちゃ似合ってるじゃん!」


「アハハ、それはどうも…」


 目を輝かせながら詰め寄ってくるるなの姿は、まるで天真爛漫の妹のような存在で、思わず目線が泳いでいた。るなは首を傾げながら、零時は咳払いし、改めてるなの制服姿を見る。


「へぇ、女性の制服ってこういう感じなんだな。結構軽装備というか…」


「まぁ女子は男子より動きやすさが欲しいところがあるからねぇ。それで、零時零時。何か言うことあるでしょ?」


「? うん、似合ってるぞ、すごく可愛い。」


 その瞳には嘘がなく、真剣な目で言われ、るなは思わずたじろいでしまい、目元を手で覆い隠す。

 その様子を見ていた零時は、言葉を間違えたのかと少し頭の反省会を開いていたが、るながこちらへと目線をやってきて


「あ、あんまりそう易々と可愛いとか言わないで…普通に恥ずかしい…」


そう放つ姿は、恋する乙女のようだった。


「すまんすまん、つい昔の癖が。でも俺は凄く似合うって思うけどな」


 るなは歯ぎしりしながらも、零時の手首を掴む。だがその掴む力が強すぎて、零時は「いててて…!!」と、悶絶していた。

 るなは零時のことなど気にせず、余裕な表情なんか見せつけられず、自身に自惚れていたことに、ただただ惨めを感じていた。


 ----------------------------------------------------------------


 〈ノスタルジア-明月の応接室〉


 そうして、るなは零時を連れて、明月の応接室まで向かっていき、中へと入った。そしてそこには、穏やかな目をした明月がいたのだ。


「お二人とも、お待ちしていました。休日はどうでしたか、ゆっくりと休みになられましたか?」


「は、はい! 本当、すっかり休ませてもらいました! 本当いろいろありがとうございます…!」


 るなは礼をしながら、感謝の言葉を言う。その健気さには、明月は少しだけ微笑むだけだった。すると、明月は突如席から立ち上がる。


「では天ヶ瀬さん、いつも通り仕事に戻ってもらって大丈夫です。今から諏訪部さんと話したいことがありますので」


「は、はい! では失礼します! 零時も頑張ってね!」


 そう言い、応接室から一人が部屋を後にした。残された零時はそのまま明月に促され、席へと座る。零時と明月が対面するが、改めて零時は少し緊張していた。彼の瞳は、零時を理由もなく恐怖を覚えてしまうからからこそ、弱肉強食という言葉の意味を、肌で理解してしまう。


「そ、それで…俺と話をしたいって、一体…」


「君はまだ知らないような出来事が多くあると思いますが、それらは後です。まずは僕から話をさせてください」


 明月は目を細め、零時を静かに見据える。それだけの仕草のはずなのに、今この瞬間、部屋の空気が一気に変わったのが分かる。零時は手を震わせていたが、それをなんとか抑えつける。


「君は、歳忘の生態について、知っていますか」


「え、は、はい。確か人の記憶の集合体…でしたっけ」


「その認識で大丈夫です。僕が話したいのは、その歳忘についてですけど、君は確か数年前から、歳忘狩りという名称の元、活動していましたね。」


 歳忘狩りは、ノスタルジア・システムや自警団「鳥籠」などに属さない、ならず者たちの烙印。零時は身近な人たちを失い、ならず者へと成り下がった要因でもある。


「そこで聞きたいことがありますが、ひとまず、僕が最優先で聞きたいこととしては、ここ最近、歳忘の勢力が増していたと、感じたことはありませんか」


 明月の疑問に、零時は顎を指に当て、目を細める。

 彼がまだ活動して2年ほどの時、明月が言った通り、歳忘の勢力があまりにも活動が頻繁になっていたことがある。それも数ヶ月、いや、今でもそう感じていた。


「…はい。確かに歳忘の勢力さは日に日に増していって…確かこの前加西市で、プロレスラーみたいな身体と、異様な能力を持った歳忘に苦戦していたな…あれも稲美町と会った巨人と同じくらいきつかった…」


「7月下旬で起きた件ですか。僕も大阪部隊から話を聞いています」


 すると、明月は席を立ち、ゆっくりと歩きながら、語り始める。


「なぜこのようなことを聞いたのかというと、ここ最近、歳忘による襲撃事件が多発しているのです、それも10年前よりも。多くの隊員が派遣されては、亡くなっているのです」


「…確かにニュースで聞いたな。町の被害や死亡者は年々右肩上がりって…」


「えぇ、だからこそ僕は、その諸悪の根源を根っこの底から摘んであげないといけません。そういう使命なので…」


 明月の表情には、先ほどまで穏やかだったのに、その諸悪の根源の一言で、少し険しくなった。


「諸悪の、根源?」


「えぇ、ですがまだ、あなたには話しません」


「え?ここまで振っておいて話さないんですか?」


「今はその時ではないからですよ、諏訪部さん。君の実力と成果さえ上げてくれれば、すぐに君が欲するその真実の一部を、君に教えます」


 明月は机の上に飾ってる花の花弁が一枚落ちる。明月はその花弁を、じーっと見終わると、零時の向かい席へ座る。そして、いつものの表情へと戻る。


「では、次はあなたの番です。いろんなことを聞いてもらって構いません」


「…じゃ、じゃあ…」


 俺が一番に疑問に思っていること。

 るなの寝言で言った、あの言葉。


「──無縁って、一体なんなんですか?」


 すると、明月は穏やかな表情から、少し変わった。


「無縁、ですか。まず、それはどこから聞いたのですか?」


「…るなの寝言で聞きました」


「天ヶ瀬さんの、寝言ですか…」


 深く深呼吸した後、彼はゆっくりとこちらへと向ける。


「君は、『栄光の忘者』の逸話を聞いたことがありますか」


「『栄光の忘者』…ですか?」


 どこか聞いたことがありそうで、やはり聞いたことがない名前だった。


「『栄光の忘者』。今からおよそ165年前に、最初の憶忘者である4人に与えられた最初の称号でもあります。彼らはその逞しさで多くの人を導いていったという逸話です。その『栄光の忘者』の逸話には、その言葉の根源である『無縁』という、全てを終わらせる神がいました」


「全てを…終わらせる…?」


「総称として、その無縁というものは、『終焉の神』とも言われています。」


「………」


 ただただ、戦慄と驚愕をするしかなかった。終焉。その言葉には、多くの重きが背中、腕、足、身体全体に伝ってくる。


「…終焉の、神……」


「無縁について分かることは、今のところこの逸話でしか情報がありません。ですが、君の疑問を多少は解けてよかったです」

「ではそろそろ時間ですので、立ってください。今から訓練場へと行き、それから見回りなどについて教えていきます。少し僕の方で準備がありますので、一旦席を外させてもらいます」


 明月は立ち上がり、身支度を整えに行ってきた。いなくなった同時に、俺はデカいため息をついた。無縁の正体が、昔に存在した終焉の神ということが分かったのが、嬉しい限りではある。

 だが、もう一つ、もう一つと根が伸びていくように疑問が生じてくる。


「どうして、るなはこんな大事な事を忘れているんだ…。てか、明月さんが言った諸悪の根源もなんなんだ…?全部、分からないことばっかりだ…」


 るなの記憶喪失、栄光の忘者、諸悪の根源………

 零時は髪を掴みながら考えていた。けど考える度に、考える度に、謎が深まっていくばかりで、零時は考えることをやめた。


「…いつかそこら辺は、どこかで分かっていくだろうな。俺はそういう人間だ、今慌てないのも…一つの策だもんな」


 落ち着きを取り戻し、零時は身体を立ち上がらせ、先ほどあの黒服の人たちから受け取ったレミニセンスを見てみる。


「ID…隊員番号が167-24。基本的に外には持ち運ばないていう感じだもんな…だったら身分証とかがあるのか?第三者に奪われないようにするために設けた制度だろうな」


 と、レミニセンスを興味深く眺めていると、応接室の端のドアの開閉音が聞こえる。


「おや、そんなにレミニセンスを見つめて、興味を持たれましたか?」


 そこには、先ほどのスーツもそうだが、右腰に何か強くオーラを感じ取るほどの武器を下げていた明月の姿があった。零時は少し赤くなる。


「…あ、すいません…凄く作り込まれていたので…ついガン見していました…」


「ハハ、ノスタルジアの皆さんも、最初の頃はよく興味深く見るので、ご安心ください」

「それでは、ノスタルジアの訓練場へと向かいましょう。ここから、君の物語は始まります」


 明月はそう言い、応接室から出ていき、零時もすぐに明月の後を追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ