顔
穣は、自分の端末を見た。待ち受けの画面は、半年前にウグイスに強く言われて成り行きで変えたときのまま。
打ち上げという名目で、チーム・クリスタルと一緒に食事に行った。全員横に並んで撮影した集合写真。
髪は、豊浦が見せてくれた写真よりも伸びている。ぼさぼさだ。無精ひげも生えている。そして何より、茫洋とした顔。
ひどい有様だ。
今もあまり変わっていないに違いない。
「平岸」
疲れたのか、豊浦はベッドに横になった。
「お前、これからどうするんだ? 配信休んでるんだろ?」
「ああ」
配信ができる状態ではなかった。けれどその間も、ダンジョンには潜っていた。政府やフレイザー社から依頼された調査の仕事を引き受けていたのだ。だから無収入ではない。配信主が、チーム・クリスタルやその他の誰かだったというだけで。
「自分の配信は、ちょっと無理だからな」
ミノル、と呼んでくれていた声。
もう、傍らに彼女はいない。
「アーカイブで見たけど、一緒にやってたAIがいたんだよな。……俺を助けてくれたときに、ウロボロスにやられたって……」
ミネルヴァは、ウロボロスに噛み砕かれた。胴体は粉々で、頭部も損傷していた。
彼女はAIだ。生きた人間ではない。だから、そもそも死んではいない。
そう考えようとしても、喪失感は未だに埋まっていない。
「配信できないの、そのせいか?」
「……半分は、そうだな」
穣は、実況が下手だ。ウグイスのように訓練を受けているわけではないし、そもそもの性格からして口数が少ない。だから最初のうちは視聴者がほとんどいなかった。
うまくいくようになったのは、ミネルヴァのおかげだった。
「確かにミネルヴァはAIだ。だが、五年間俺を支えて、助けてくれていた相棒だ。その恩を、返したいんだ」
「どうやって?」
穣は、端末から顔を上げた。
「ミネルヴァを、生き返らせる」




