バーンアウト
通路が狭いのが幸いだった。ウロボロスの攻撃が単調になる。
突進してきたウロボロスを穣が抑え、側面からミラーとブレイド、かぼすがとにかく攻撃を加える。ウロボロスがひるんだ隙に、かぼすが麻酔槍を打つ。それを三度くらい繰り返した。
麻酔が効いてきたのか、ウロボロスの動きが若干鈍くなってきた。ダメージの蓄積もあるのだろうか。そうであってほしい。
穣は力を振り絞って、ウロボロスの顔面に魔力を叩き込んだ。不快な摩擦音と共に、大きな頭がどうと倒れる。そのまま、動かなくなった。
『あと十五分ほどで、救助の自衛隊がトロッコに乗ってきてくれるそうです。みんな、がんばって!』
『おお! よかった!』
『自衛隊来てくれるのか! もう少しだ、頑張れ!』
『応援しかできないけど、頑張れ!』
コメントの読み上げ音声が、ぼんやりと幕を通したように聞こえる。さすがに疲労が溜まっている。
「……豊浦は、どうなった?」
『無事に病院へ搬送されたそうです。ダンジョン資材研究所の所員も同行しています』
「そうか……」
それならよかった。
だらりと、腕が落ちた。
助けられた、とようやく実感が湧いてくる。
終わったのだ、と。
「ジョーさん?」
誰かに呼ばれた。返事をする気力もない。
もう、いいのだ。
終わったのだから。
『ミノル』
後ろから手首を引かれた。
『危ないわ。こっちへ』
トロッコのレールの終着点まで連れて行かれた。チーム・クリスタルのメンバーも揃っている。シールドだけが立っているのは、ウロボロスを警戒しているのか。
「疲れたっすよね。ジョーさん、こっち座ってください」
かぼすが隣を空けてくれた。ミネルヴァの手を借りて、ゆっくり座る。
「もう麻酔ないんで、トロッコが来るまであいつが寝ててくれるのを祈るしかないっす」
全員、くたびれている様子だった。無理もない。
穣も、正直もうこの場で寝てしまいたい。




