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ダンジョン配信の理由  作者: 八谷 響
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銀鈍色の

「お、ジョーさん知ってたんだ。詳しいね」


「まあ、それくらいはな」


 名前の由来は、古代ギリシア語の「尾を食べる者」だという。円環の姿をしていることから、永遠や無限、再生、循環のシンボルとしてその図像が用いられてきた。


 確かに、時を留め回し続ける蛇に相応しいかもしれない。


「この名前でぜひ呼んでみてよ。他の人にもお勧めしてみて」


「……機会があればな」


 店を出て、穣は本屋へ足を向けた。電子書籍で買ってもいいのだが、紙の本の方が使いやすいのだ。特に大勢で同じ内容を読む場合は、紙書籍の方が回したりしやすい。


 生物関係の本棚を探し、は虫類図鑑を何冊か手に取る。けっこう高額だがしかたがない。


 家に帰るとすぐ、ミネルヴァと手分けして本を読んだ。ミネルヴァにはオンライン上の同系統の情報も当然インプットされているが、知識を正確にするためだ。


『あの蛇の生態がこちらの蛇と同じであれば、作戦は成功する確率が高いわ。でも、今まで誰も見たことがないモンスターだから』


「量子コンピューターの分析は?」


『九〇パーセント以上の一致だそうよ』


 まだ計算の域を出ないが、賭けるしかなさそうだ。


 フレイザー社、防衛省などを交えて検討した作戦は、あのステルス・スネーク――田中の名付けを採用するならウロボロスが具現化した直後に捕獲し、腹を割くというものだった。


 あの巨大な身体を押さえ込めるかもわからないし、当然危険は伴う。チーム・クリスタル、穣、そして自衛隊の精鋭と合同での作戦になる。


 でも。


「……ありがたいな」


『どうしたの?』


「今まで一人でやってきた……お前もいたけどな。それが今になって急に、助けてくれる人がたくさん現れた」


 フレイザー社の社長、チーム・クリスタル。


 政府関係者。


 田中やギルドの人々。


 そして、生配信を見守ってくれている視聴者たち。


「俺だけじゃ何もできなかった。あと何年かかるんだろうって、正直絶望してた。だから本当に……とてもありがたいんだ」


『ミノル』


 ミネルヴァが、ミノルの手を取った。機械の、冷たい感触。関節部分が皮膚に当たる。


『大丈夫。これからも、私があなたを守るから』


 半透明のカメラアイ。口の部分には何もない。表情などわからない。


 銀鈍色の、穣の相棒。


「頼む」


 無機質な硬い手を、穣はしっかりと握り返した。


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