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ダンジョン配信の理由  作者: 八谷 響
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緊急会議

 フレイザー社大会議室。集まったのは、内閣危機管理監、ダンジョンを管理する防衛省からは防衛政策局長とダンジョン対策室長、ダンジョン資源の利益の流れを司る財務省の主計局主計官と経済政策室長、そしてチーム・クリスタルと穣。もちろん上杉社長とフレイザー社の役員もいる。


 あの発見の日から三日後。緊急で開かれた会合で、社長自らが状況説明を行った。地下三十五階で発見された豊浦のモールス信号、穣もミラーから聞かされたダンジョン内タイムループ説と、豊浦生存の可能性。そして、豊浦が曖昧ながら示唆した、三十六階への階段の位置について。


「自衛隊が三十五階の探索を引き続き行っているはずですが、なぜ三十六階への階段、及びこのモールス信号を発見することができなかったのですか?」


 主計官が質問する。卓上のネームプレートに肩書きと一緒に『杉田』と書かれていた。


「まず、こちらの地図をご覧ください」


 ダンジョン対策室長が立ち上がり、会議室の画面に映像を投影した。


 蜘蛛の巣というよりも毛細血管のような、と例える方がしっくりくるような、ダンジョン三十五階の地図が投影される。


「こちらは、自衛隊と民間のダンジョン探索者がこの五年間かけて作成した地図になります。このように、エレベーターを起点として探索を行っておりますが、道の分岐が非常に多いのです。全体の広さもわからないので、迂闊に深入りするのは安全上推奨しておりません。現時点で、エレベーターから一〇〇キロまでの地図は完成しておりますが、それでもまだ全体を把握しているとは言えない状態です。三十五階全体でどれくらいの広さがあるのかすら不明です」


「弊社の探索者は、自衛隊作成のこの地図を元に探索範囲を決めており、当該の日は新たに発見され整備されたばかりのエリアを探索予定でした」


 フレイザー社役員が引き取った。


「他社の探索者もすでにトロッコ終着点付近での探索をしておりますが、未探査の部屋も多いため先へ進むよりも周辺の地形の把握をメインとしていた者が多いです。弊社探索チームのクリスタルは、これまで誰も入ったことのない部屋へ入りあのモールス信号を発見しました」


「問題は、生配信時にモールス信号の内容の一部が外部へ漏れてしまったことです」


 杉田がこつこつと机を爪で叩いた。


「『階段』や『もうだめだ』というような部分が解読されてしまいました。SNSや動画で、話題になっていますよ。あれは一体なんなのかと。そろそろ正式に発表しなければ、いらぬ憶測から政府への批判や流言飛語が飛び交うでしょう」


「内閣府のほうで、対策を進めていますよ」


 おっとりと口を挟んだのは、内閣危機管理監の館野。のんびりとした口調だったが、杉田はびくりと動きを止め、「僭越でした」と頭を下げた。


 財務省はダンジョンで採取され加工などをされたアイテムが、世間で販売される際の流通や収益を司っている。特にグソール燃料については今や主要輸出品ですらあるので、この件で支障が出ると困るのだ。


「SNSの発言については対策室で監視し、特に不安を煽り扇動などを起こしかねない発言については削除しております。その他、動画サイトでも何やら勝手な考察をした動画が出回っていますね。こちらについてももちろん抑えに入っておりますが……火元を絶たなければ限界があります」


「理解しております」


 上杉社長が立ち上がった。


「防衛省の方々には、事前に確認を取っていただきました。豊浦誠さんは、行方不明になった当時二等陸曹。三十四階探索という同じ任務に当たっていた班員を逃がすために隊列の最後にいたため、モンスター……ヒュドラに襲われ、三十五階へ引きずり込まれた。その際に、三十五階へ降りる階段も発見された、と」


「探索班に所属していた自衛隊員にヒアリングしました。間違いありません」


 ダンジョン探索室長、町田が答えた。


「そちらの民間探索者平岸氏は、豊浦二等陸曹の同期であり任務に共に当たっていたとか」


「……はい」


 町田はしばらく穣をじっと見つめていたが、無言で視線を逸らした。


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