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ダンジョン配信の理由  作者: 八谷 響
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戦闘

 気が散りそうなので、一旦イヤホンをオフにする。ブレイドが後方へ跳ぶのと同時に、穣が前に出た。


 ブレイドの武器はショートソード。ダンジョンでは、あまりリーチの長い武器は使えない。壁や天井にぶつかるからだ。彼の突きや斬りつけはトロルにすべて当たっていたのだが、すでにいくつかは塞がりかけている。


 穣は、一番深手だと思われる傷口に向けて、拳を叩き込んだ。


『お! こ、これは! ジョーさんの必殺技!』


 力を集中する。頭の中で、破裂するイメージを作り上げる。


 拳が熱を帯び始める。


『いっけぇえぇぇぇ!! バーニング・ナックル!!!!!』


 意図したわけではないが、ウグイスが適当な技名を叫ぶのとトロルが爆散するタイミングが重なった。


「よっし、一体撃破!」


 かぼすが親指を上に立てて合図してくる。そのまま彼は、二体目のトロルに向かっていく。


 彼の武器は珍しい。中国武術で使う、トンファーというものだ。平板な板の裏に持ち手が着いていて、それを軽く握って板を回転させることで打撃を与える。それが二つで一組、両手で持って戦うのだ。


「おらあっ!」


 トロルの背後に回り、かぼすはトンファーで続けざまに殴る。トロルは鈍い声を上げたが、致命傷にはなっていないようだ。


「ミラー!」


「OK!」


 かぼすが地を蹴ってトロルの間合いから離れると、ミラーが武器を構えた。マシンガンだ。


 轟音をあげ、次々に銃弾がトロルの身体に吸い込まれていく。トロルがとうとう倒れ込んだところで、かぼすが再び動いた。


 武器を持ち替えている。刀身は短いが、恐ろしく切れ味が良さそうな片刃の剣。日本刀に似ているが刃渡りは五十センチほど、鍔が非常に小さい。


 『環首刀』という、中国の武器だそうだ。片手で振り回しやすく、ダンジョンのような狭い場所でも使い勝手がいい。


 かぼすが床に伏したトロルの頭部にその刀を鋭く振り下ろすと、まるで豆腐を切ったときのような手応えのなさで胴体から勢いよく飛んで行く。


『フレイザー印の、ダンジョン用環首刀! 刀身はダンジョンで採れた最も固いエフレイド鉱石を使用し、日本が誇る刀剣職人監修の下、一振り一振り丁寧に仕上げてます!』


 あっという間に仲間を二体減らされた残りの一体は、さすがに警戒しているのかじりじりと後ずさりを始めていた。


 深追いする必要はない。だが、応援を呼ばれても困る。


「ジョーさん、援護お願いできますか?」


 ブレイドも同じ考えだったようだ。穣はうなずいて、駆け出したブレイドのあとを一歩遅れて追う。


 トロルは、大きく振りかぶって手にした棍棒でブレイドを狙った。しかし動きが遅く単調なため、難なくかわされる。


 穣は、体勢を崩したトロルのがら空きの脇腹を狙い、拳を叩き込んだ。


 押しつぶされた牛のような咆哮が上がる。口からねばねばした液体を吐きながら、トロルは床に転がる。

『うわー、きったなー』


 ウグイスの実況が終わる前に。


 ブレイドが、トロルの首を刎ねていた。

かぼすは、大分県出身です。

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