表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁の誓い、お嬢様は剣をとる  作者: 脇汗ベリッシマ
暁の誓い
3/75

小さな背に、剣を背負って

「……またかよ、あいつ」


訓練場の片隅。

夜が更けても、ひとり素振りを繰り返す小さな“少年”の姿があった。


周囲の騎士候補生たちが次々と寝静まる中、

その細い腕は、何百回目かも分からないほど剣を振っている。


呼吸は乱れ、腕は震え、足元はふらついている。

それでも──“彼”は、立ち止まらない。


「……バカじゃねぇの、こいつ」


影からこっそり様子をうかがっていたフィオは、呆れたように呟いた。

だが、その声にはどこか、敬意が混じっていた。


エル──本当の名をエリスといい、名門の令嬢である彼女は、

男のふりをして騎士団に入り、誰にもバレずに日々の訓練をこなしていた。


だがその実力は、周囲に比べて決して突出してはいない。

むしろ、力も体格も劣っている。


だからこそ──彼女は、誰よりも努力していた。


フィオは気づいていた。

その姿を、毎晩のように見ていたからこそ、何も言わずに帰れなかった。


「……やめとけよ、そんな頑張っても意味ねーって。

……って言っても、聞かねーんだろうな」


ため息交じりに呟きながら、

フィオはその場に小さな包みを置いた。中には温かいパンとスープ。


「食えよ、バカ。倒れたら意味ねーだろ」


そう言い捨ててその場を去る。


「……ありがと、フィオくん」


気づいてないようで、ちゃんと気づいてるエルの瞳は、少しだけ緩んだ。


小さな背中に剣を背負って、彼女は今日も立っている。

誰よりも努力を重ねて、誰にも負けない“強さ”を手にするために。


そして気づかないうちに──

その姿は、フィオの心を少しずつ動かしていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ