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第3章:監獄塔の紅蓮姫

その少女は、炎に愛され、そして炎に裏切られた。


かつて「焔の巫女」「紅蓮の剣姫」と讃えられた戦士、レイナ・アークフレイム。

__王都に属する騎士団の副団長でありながら、“魔王の愛妾”と謗られ、冤罪のまま地下監獄に閉じ込められた存在。


ノアは今、その監獄塔を目指していた。


「ここが……“終焉の灯”か」


監獄塔【終焉の灯】は、王都から隔絶された断崖に建てられた禁忌の遺構。

かつて火の精霊王が封じられたという噂があり、今は国家にとって「不都合な者」を葬るための場所だ。


ミリィとユリエ、二人の少女を連れて、ノアは監獄の正面に立った。


「燃えるような剣士……って、どんな人なんだろう。ノアさん、また“口説き落とす”気ですか?」


「嫉妬、してる?」


「……してませんっ!でも……ノアさんのこと、大好きなので」


隣でユリエがくすりと笑った。


「なら、私はもっとあからさまに嫉妬するわ。“紅蓮姫”などという派手な称号、私の“氷の王女”に比べれば、少々うるさすぎるわね」


ミリィがむっとした顔をする。


「それはそれでかっこいいと思いますっ!」


「ふふ。けれど心はノアのもの。ならば、どんな火だろうと、私は凍らせてみせる」


ノアは、少女たちのやり取りに小さく笑いながら、監獄への足を進める。


**


監獄塔の内部は、常に熱気と蒸気が充満していた。

かつての火の神殿の跡地に築かれたせいで、建物そのものが“生きている”ようだった。


地下深く。

そこに、彼女はいた。


鉄格子の奥、燃えるような赤髪が、揺れていた。


「……新手の拷問係か? それとも、物好きな死刑執行人か」


うっすら笑いながら、紅蓮の少女__レイナ・アークフレイムは、ノアを見つめた。


細身ながらしなやかで引き締まった身体。戦士であることが一目でわかる。

肌は小麦色、目は金色に燃えていた。


「違う。俺は……お前をここから救いに来た」


「……は?」


**


数分後_


レイナは監獄から解放され、外の空気を吸いながら呆然と立ち尽くしていた。


ノアのスキル【菌糸操作】によって、塔に繁殖した微生物たちを制御し、腐食させ、鍵も扉も全てを侵食。

外部の魔力障壁さえ分解され、塔の結界は崩壊した。


「まさか……あの牢が“開く”なんて……こんなこと……」


「信じられないなら、信じなくてもいい。ただ__お前は、ここで死ぬべき人間じゃない」


「…………」


レイナはしばらく黙っていた。


その瞳に、感情が少しずつ戻っていく。


「……あの時、誰も私を信じなかった。“魔王に抱かれた裏切り者”と罵られ、味方も、仲間も、家族も全部……」


「なら、もう一度信じろ。俺が、お前の味方になる」


レイナは、ゆっくりと歩み寄る。


「……そんな顔、するんだな。面白い男だ。……いいだろう。あんたの剣になってやるよ、ノア」


**


夜。

焚き火の傍に集まる三人の少女。


レイナは、ユリエと向かい合い、妙な空気を作っていた。


「アンタが氷の王女? 冷たそうな顔しやがって、案外胸は……」


「……それ以上言うと、貴女の唇を凍らせるわよ」


「へぇ、上等。私も昔は女の子によく絡まれてたもんでね。……あんたみたいなタイプ、嫌いじゃない」


「ふふ、ならそのまま凍って死になさい」


「おいおい、マジかよ!?」


ミリィが間に入り、慌てて宥めた。


「け、喧嘩はだめですよ〜! ノアさんに嫌われちゃいます!」


「……はっ、ノアに……嫌われるのは、やだな」


ぽつりと呟いたレイナに、ユリエが目を丸くした。


「……ふ、ふん。なら良いわ。私は“ノアの心”を譲らない。それだけ」


その様子を、ノアはどこか嬉しそうに見守っていた。


《現在の仲間:3名》

《精神リンク安定:紅蓮の剣姫、好感度急上昇中》


…3人目。

彼女たちは、ただ従っているだけではない。

確かに心を通わせ、想いを持って、隣にいる。

多少は能力の干渉だとしても、きっとそう。

…そう思わないと罪悪感でどうにかなりそうだ。


それは“あの勇者”には決して手に入らなかったもの。


**


次なる舞台は_ついに、王都。

ノアたちは、裏切りと支配の象徴“王都メルゼン”を破壊するため、ゆっくりと歩を進めていた。

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