プロローグ「暗雲と霖雨」
第二章です!!
雨が降っている。
ガタガタと乗り心地の悪い馬車の中で、痛む身体を抱きながらじっと目的地に着くのを待つ。
雨は湿ってぬかるんだ地面を打ち、馬車の屋根を打ち、窓硝子を打ち、他に乗客のいない小さな馬車の中を外界と切り離す。
もう戻れない。
どうしようもない。
鞄の底に入ったものを壊してしまいたい気持ちを抑えて、彼女は強く目を瞑る。
「お兄ちゃん……」
目深に被ったフードから溢れた銀髪が曇天のかすかな光を反射した。
彼女はじっと耐え忍ぶ。
近く訪れるであろう、破滅の時まで。
+++
雨が降っている。
数日前からずっと降り続いている。
分厚い雲に覆われた空は暗く、昼間だというのに街灯が道をぼんやりと照らしている。
そんな街並みを雨粒が歪める窓からぼーっと眺めていた。
「外、出たくないなぁ……」
「でも、流石に今日行かないといつになるか分からないよ。僕もいつでも暇ってわけじゃないから……ほら、早く行こうよ姉さん」
振り返れば濃い灰色の曇り空とは対照的な、キラキラと光る青みを帯びた銀色が。
我が弟ながら本当に綺麗な髪だこと。瞳も晴れやかな空のような白みを帯びた水色だ。
いいなぁ。私も銀髪青目が良いなぁ。
面白味のない真っ黒な髪に金と間違われる黄色の目なんて、変えられるものなら変えたいくらいだ。そもそも両親は茶髪茶目だし。黒髪はおじいちゃんからの遺伝だとしても、黄色はどこから来たんだか。
顔も特別きれいな訳じゃないし、ねぇ。
「お前は本当にきれいな見た目してるねぇ……」
「……何言ってるの姉さん。僕を褒めたって、行かなくていいことにはならないからね」
そう冷ややかに言葉を返すユーリスだが、ちょっと照れているのか頬に赤みが差している。
容姿も良くて、才能もあって、頭も良くて……って、一体何者なんだか、私の弟。
姉の面倒まで見てて本当に偉いね…………
「……ねぇ、私ついてくだけでいいの?ガルスさんのお世話はユーリスがしてね?」
「お世話って、絶対にガルス支部長本人の前では言わないでね」
はぁ、行きたくない。
過剰な期待を寄せられて心が痛むくらいなら、とっとと冒険者辞めて誰にも迷惑をかけないようになりたい。でも冒険者辞めたら攫われた時にどうしようもないからなぁ。自分の仕事を自分でできるくらい有能になりたい。
あーあ、雨、やだなぁ。
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