エピローグ「金星の苦悩」
このお話で第一章完結です!
「……だから、ギルは誰かと勝負しようとしない。キースが今ギル用の魔道具を作ってるからちょっとは我慢して。一人で訓練してる分にはいいから。メルは姉さんを離して。力の調節ができないなら姉さんに触るの禁止にするから。アンナは余計なことしようとしないで黙っててくれるだけでいいから落ち着いて。リオ、何かするなら報告してって言ったよね?あと全員帰還の報告は自分で協会まで行くこと!」
私達はテーブルを挟んで向かい合って座った。
こんこんと説教を始めるユーリスにみんな黙り込んでいる。まぁ、ちゃんと聞いてるかは分からないけど。
リオは目を瞑っているし、ギルはそわそわ、メルはふくれっ面でアンナは……ちゃんと聞いてそうだけど、理解できているかが不明だ。
うちの星七魔道士であり代名詞である得意魔法からとられた【流星群】の二つ名を持つアンナ・フィオーラ。
彼女はとても世話焼きな性格で面倒見が良い……のだが、慌ただしく不器用なため空回りしがちである。あと難しいことが苦手。
ちゃんとしようとすればするほど問題を起こしてしまう子なのだ。
「あと姉さん、あんまり協会に非協力的だと印象が悪くなるからやめてね。何も話したくなくても、居留守と逃亡はしないで」
「えーでも……すみません」
そのつけを押し付けてしまった以上、ユーリスには頭があがらない。申し訳ないです。
でも私だってどうしようもないんだよ。知らない、できないことを求められても断るしかできないじゃない?
私だって、ユーリスやシーファを困らせたい訳じゃないんだよ……
ユーリスなんて、本当に幼い頃から迷惑かけまくっちゃってるからね。私お姉ちゃんなのに。
ユーリス・セブンは私の義弟だ。
五歳くらいの時、森の中で倒れているユーリスを私が拾ってきたらしい。あんまり覚えてないけど。両親は行方不明ということで、我が家で引き取り家族として一緒に暮らしてきたのだ。
年齢的には同い年だけど、誕生日は私の方が二ヶ月早かったから私がお姉ちゃんになった。
ユーリスは幼い頃から聡明で大人びていて、それでいて私にとても従順だった。拾われた恩を感じているのか、何なのか……彼は私のことを昔から今に至るまでずっと慕ってくれている。
だが姉としての威厳を示せていたのはとっくの昔、というかほぼなく、今ではこうして世話を焼いてもらっている身となっている。
特に冒険者になってからの頼りっぱなし具合は目も当てられない。
「今日も代わりに会議出てくれたみたいで、ありがとうユーリス」
「……姉さんの手伝いならいつでもするから、ちゃんと僕に言ってね」
「ずるぅい!メルもクリアちゃんのお手伝いするもん!」
「あ、うん、ありがとねメルちゃん……」
一応言われたことを気にしているのか、二の腕あたりの服を掴んで揺さぶるメル。ちょっと、あの……揺れて気持ち悪くなってくるから……
「リオ、この前の討伐の時、盗賊の拠点に行ったよね?」
「えっ」
うぇ、うっぷ、バレてる。なんでユーリス分かったんだろう。まあユーリスだからか。
「えー!?リオも行ったのか!?俺も誘ってくれよ!」
「ま、まあまあ、ギル……お、落ち着いて……」
「そこで何か盗んだりしたんじゃない?」
「えー……まーいいか。クリアに自慢するつもりだったし。ほら、これ」
そう言ってリオはゴトリと棒状の何かを置いた。
……ただの太い棒に見えるけど。側面に少しばかり模様が入っているものの、あとはつるっとした白い棒だ。片方の端が尖っている。
「これは……遺物?」
「そー、名前は『絶対安心領域支柱』、キース知ってる?」
「え、と……あ、「物理・魔法攻撃以外のいかなる環境変化や魔法効果を打ち消す範囲型防御系の遺物」……だっけ」
おお、流石キース。遺物と魔道具についてなら何でも知ってるね。
名称がついてるってことは一度鑑定されたものが裏市場にでも出回ったのか。
「戦いに使えるやつか!?」
「ちがう」
「じゃあ、どういう時に使うものなのよ?」
ギルの問いかけを一蹴したリオは、説明が面倒なのかアンナの問いかけは無視している。答えてあげなよ、私も教えてほしいし。
「えっと、例えば、これを遺跡の中で、地面に刺せば……効果がある一定範囲内は、遺跡の効果……例えば、魔物の発生とか、魔力の力場による重圧とか……そういう、攻撃以外の全てを、防げるんだよ」
へぇー……
「それってすごいの?」
あ、私もおんなじこと思ったよ、アンナ。
「すごい、なんてものじゃないよ。これがあれば遺跡内に長く滞在していても、簡易の避難所にできるから安全に過ごせるってことになる。たとえ攻撃や敵の侵入を防ぐ効果はなくても、欲しがる人は多くいると思う。冒険者以外の一般人が遺跡に行くことだって可能になるよ」
「うん……地面に、刺さなきゃいけなくて、範囲がかなり、狭いっていう、制約はある、けど……中々ない珍しい効果だから、貴重なものだよ」
「へぇー」
へぇー……
え、ってことは魔力強化よわよわで遺跡の重圧に全然耐えられない私でも、遺跡内で安全に過ごせるってこと?それはすごい。
「リオはさ、なんでこれが欲しかったの?」
「遺跡内でサボる時により楽できるから」
ですよね。君は本当にブレないね。
「つまり、盗賊はこれを出入り口に設置することで遺跡の効果で生えてくる竹を防いでいたってことか……ただ、竹も生きている植物だから、成長を止められていた分遺物を取った時に何本も生えてきたってところかな……」
あぁ、あの竹びっしりの出口。盗賊があんなに動揺してたのはそういうことか。
じゃあ結果的には逃亡を防げて良かったってこと?でも遺物盗んで来ちゃったんだからお咎めなしとはいかないか。
「で、どう対処するつもり?」
「姿は一人にしか見られてない。処理はしてる。ボスが遺物のことを話すかもしれねーけど……たぶん話さないだろ。バレてねーんならわざわざ不法所持の罪を暴露するメリットがない。協会や騎士団が自力で遺物の存在まで突き止めるのも無理だな。そこまで重点的に調べることじゃない」
「でも、詰められたら話すかもしれない」
ふっとリオは鼻で笑った。
「じゃー、今度おはなししてくる」
「……くれぐれも気付かれないようにしてよ」
え、おはなしって何?ボスと??
「おはなしって何よ?」
「ちょーっと牢屋に行って話してくるだけだよ。平和的にな?」
「え?会えるの?」
笑みを深めて首を傾げるリオ。
……忍び込むってことね。まあ、リオなら大丈夫でしょ。普通に犯罪だけどね。
アンナは犯罪だって分かったら怒って止めそうだからこのままにしておこう。
別に、仲間が罪を犯すのを容認するつもりはないけど……誰かに迷惑かける訳じゃないと思うし……大丈夫だよね?
▷▷▷
ユーリスのお説教とリオへの尋問も終わり、ようやくみんな落ち着いたところではたと気づく。
「そういえば、みんなおかえり。キースは改めて、討伐お疲れ様」
こうしてパーティ全員で顔を合わせるのはみんなが行っちゃう前だから、かなり久しぶりだ。
みんな無事に帰ってきてくれて、少しホッとしている。みんななら大丈夫だろうとは思ってたけど、冒険者は常に危険と隣り合わせだからね。
「今回行った遺跡のこととか、どんなことがあったかとか色々聞かせてよ。そうだ、夜ご飯みんなで食べに行かない?」
「わぁ、行きたい!クリアちゃんとごはん!」
「どこに行く?姉さん、仮面付けるのは面倒じゃない?」
「いや、あの仮面変形できるし、口のところ開ければ普通に食べられるから大丈夫」
私の真っ黒仮面は『漆黒仮面』という何ともシンプルな名前の遺物で、その能力は仮面を自由に変形させられるだけというシンプルなものだ。
シンプルだが、何か食べる時にいちいち外す必要がないからかなり便利なのだ。
「おれ近いところがいーな」
「あたし!お肉食べたい!」
「にくー!!」
「キースは?」
「ぼ、僕はどこでも……」
お肉食べられる近所のお店ね。って言ったら結局いつも行ってる酒場にならない?
「じゃ、「ハッピーアプリン亭」でいいかな」
そうなるよね。
私達が帝都に来て間もない頃から通っている酒場だ。アプリンという果物を使った数々の料理やお酒が絶品で、ギルドハウスからも近いことから事あるごとに訪れている。
「確かに、あそこ行かないとみんな帰ってきたって感じしないもんね」
「にくー!!」
「ギル、静かに!早く行きましょ!」
「誰が早く着くか競争しよう!!」
「あっ、ギル、アンナちゃん……!」
初めて帝都に来た日も、ギルドを結成した日も、ギルドハウスを建てた日も。
パーティのみんなで、時には他の冒険者も一緒に、ぱーっと食べて飲んで、とするのが慣習なのだ。
そうして仲良く楽しくご飯を食べている時は、みんなで冒険者になって、みんなに出会えて良かったな、なんて思える。
「あ、言い忘れてた。姉さん、支部長が今度協会に来てくれだって。聞きたいことがあるって言ってたよ。僕が空いてる日なら一緒に行ってあげるから、すっぽかさないでね?」
……やっぱり、冒険者になんてならない方が良かったかな。
ようやく終わったと思ったのに。私に何か言われても何もできないんだもん!!
みんな私を放っておいて!!あと攫わないで!?
安全なお部屋でのんびりさせてよぉ!!
第一章 完
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第二章もどうぞよろしくお願いします!




