二十一話「炎剣の決着」
シュウは〈幸星〉と共に特訓したここ数日間を思い出し、気を奮い立たせた。
「シュウ、下がれ!」
「っ、はい!」
地面が盛り上がり、鋭い角を形作って盗賊へと迫る。後ろに大きく飛んでそれを避けた盗賊へ、背後からムゥラが肉薄する。
「ちっ」
剣でムウラの短剣を弾く。追い打ちをかけようともう片方の剣を振るうがムゥラは素早く後ろに下がり、そこへシュウの燃え盛る剣が迫る。
「ぐうっ」
シュウの腹を蹴って盗賊は距離をとる。だが、彼の衣服と髪は一部焦げてしまっている。
「大丈夫?」
「はい」
〈幸運を呼ぶ星〉とシュウは二手に分かれて盗賊団の幹部二人と戦っていた。
シーラとジェーンが魔道士らしき人物を、シュウ、サミュ、ムゥラの三人が剣士らしき人物を相手にしている。
「ギャー!!ヤバイヤバイ死ぬー!!」
シーラとジェーンが戦っている魔道士は短剣とを使い分け遠近戦共に器用に対応する手ごわい敵だが、パーティの中でも特に実力の高い剣士二人が連携すれば問題ない。
まだ多少の余裕があるのか騒ぎながら逃げ回っている盗賊だが、そのうち二人が勝つだろう。
シュウ達が対峙しているのは両手に二本の剣を持った双剣使いの剣士だ。動きが素早く手数が多いため、三人で攻撃を仕掛けても防ぎ、避けられる。
だが、全ての攻撃を防ぐことは流石に不可能なようで、徐々にダメージが蓄積している。
「動きは悪くないよ、シュウ!このまま攻めていこう!」
「はい!」
シュウの動きに他二人が合わせるかたちで攻める。
サミュは離れた位置から魔法で攻撃やサポートを行い、ムウラは素早い動きでシュウが攻撃する際には距離を取りながら短剣で果敢に攻めている。
盗賊がサミュを狙って駆けてくる。サミュが杖で地面を指すと盗賊との直線上にボコッと穴が空いた。
盗賊は身を翻して穴を避け、シュウがその移動先を狙って剣を振るう。
「!」
炎を恐れてか剣を大きく避けた盗賊だが、炎はあがらない。ムゥラが投げナイフで死角からの攻撃を試みるが剣で弾かれ、もう一撃と剣を構えるシュウへ斬りかかる。
シュウは咄嗟に魔力を込めて炎を出す。一瞬怯んだ盗賊だったが迫る剣は止まらない。
「ぐあっ……!?」
盗賊が痺れたように動きを止めた。しかしすぐに後ろに飛ぶと距離を取る。サミュの拘束魔法だ。
拘束魔法は抵抗されやすく、強い相手であれば余計に効きづらい。隙をついたり弱っているところに使ったりすれば多少は効くが、通常は一瞬でも動きを止められれば僥倖である。
ムゥラがすぐさま追いかけナイフを投げる。いまだに抵抗感が残る身体でどうにか避けるが、ムウラの短剣が脇腹を裂く。
「くそ……っ」
反撃しようと剣を振るが素早いムゥラには当たらない。
駆けてきたシュウが炎をまとった剣を振り抜く。盗賊の左腕が飛んだ。右手の剣でシュウの頬を斬りつける。サミュの土が盗賊の腿を刺す。
「シュウ、やれ!」
シュウの剣が盗賊の右肩に深く突き刺さった。
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「シュウ君大丈夫かな」
「大丈夫だろ、サミュもムゥラもいる。シュウも俺達と特訓して自身ついたみたいだしな」
「ちょっとー!!ボクを無視しないでよ!!」
「いやしてないって」
飛んできた投げナイフをジェーンが弾き落とす。
なかなかしぶとい盗賊だ。何度か攻撃が入りダメージも蓄積されていそうだが、自分で回復魔法をかけて傷を治してしまう。
逃げ足も速く、ちょこちょこと逃げ回っては魔法やナイフを放ってくる。
「ちょっと、そろそろ終わらせるか」
「そうね」
パッと二人で駆け出す。二人で挟み撃ちにするつもりだ。
「うわぁ!来るなよ!!」
盗賊は器用にシーラヘナイフを投げつつジェーンに火球魔法を撃つ。シーラは弾いて盗賊と剣を交えるが、ジェーンは魔法を剣で防ぎつつ直撃した。
「あちっ、あ!また髪焦げた!」
「ジェーン!!」
早くしろとばかりにシーラが怒鳴り、ジェーンも剣を構えて近づいていく。盗賊はシーラを押し戻すとジェーンの剣を受け止めた。
トントンと盗賊が踵を踏むと地面から火柱が上がった。シーラは後ろに下がって回避、ジェーンは剣を交えたまま右足に火柱が直撃した。
「うおわ!あっっちい!!」
「お前バカなの?うわ!」
ジェーンが剣を大きく弾き、体勢を崩した盗賊の足を斬りつける。火球を出しつつ下がるが剣でかき消される。
「痛い!痛い痛い死ぬ……ギャ!!」
下がって回復しようとしたところをシーラが追い打ちし背中を浅く斬りつける。ジェーンが剣を斬り上げ杖を吹き飛ばす。
「うわぁああ!!ボクの杖!!」
剣に持ち替えながら、再びトンと盗賊が足を鳴らす。胴への追撃を狙っていたシーラは強い抵抗感に一瞬身体を止め、ジェーンに地面から突き出た土槍が迫る。土がジェーンの出る右腿を裂き、右肩を傷つけた。
「痛っ……」
「ざまぁ……んギャ!!」
二人の間から逃げようとした盗賊だったが土槍に全く怯む様子のなかったジェーンの剣を受け止めざるを得なくなる。こうして何度か攻撃は当たっている。のに、止まることはない。
「お前怖……あ!!」
ジェーンが盗賊の剣も弾き飛ばす。背後にいたシーラが盗賊の後頭部を剣の柄で強打する。
白目を剥いて倒れた盗賊に素早く魔封じを取り付け、縄で縛る。
「ふう……ジェーン、盗賊にまで怖がられてたわね」
「痛みに強いのだけが取り柄なんでな……」
ジェーンはあまりにも怪我や事故の頻度が高いため、多少の怪我では動じなくなっていた。逆に痛みに強いからこそ、ここまで事故三昧で身体が常にボロボロでも冒険者を続けられているのかもしれない。
「とりあえずはい、ポーション。……向こうも終わったみたいね」
シュウ達が盗賊を縛っている姿が見えた。
幹部二人は制圧完了だ。
シーラはボス同士の戦いに目を向ける。
彼らは向き合って動かない。一瞬、盗賊頭領がこちらを見た気がした。
にい、と笑みを深めた頭領に、シーラは嫌な予感を感じた。
戦闘描写が苦手すぎて……
クリアじゃないですが、誰かにパパッと盗賊倒してもらいたくなります。




