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プロローグ「捕縛と遭遇」

こんにちは、暮々多小鳥と申します。


プロローグと一話は三人称ですが、その後は基本主人公の一人称となります。

薄暗い空間。石の地面はひやりと冷たく、固い。

静寂の中一つの影が目を覚ました。


「ってぇ……」


ガンガンと頭が痛む。

部屋の中央に転がされていた少年、シュウは痛みに顔を輝めながら上半身を起こす。


「うっ……いて……」


身体中に負っていた傷が、身体を動かすことで痛む。手と足はきつく縛られ簡単には解けそうにない。いつも傍らに持っていた愛剣も今は姿が見えなかった。


シュウ・ケーネスは駆け出しの冒険者だ。

地元で冒険者となり経験を積み、速いペースで順調に強くなっていった。そしてさらなる成長の為、数多くの冒険者が活動している帝都シャルティエへ向かうことを決意した。


旅は順調だった。

しかし帝都まであと僅かという所で野盗と思われる集団から奇襲を受け、捕らえられてしまった。


正直、複数人相手でも勝てると思っていた。

地元では期待の新人と(うた)われ実際に実力もそこそこ高かった為、どこかで慢心していたのだろう。帝都の冒険者の質は田舎とは比べ物にならないほど高いという。そんな帝都近郊で活動しているのだから野盗達が強いのも当たり前だ。あっさり負け、この珍しい目が災いして売られるために捕まった。


このまま大人しくしていても趣味の悪い貴族か見世物屋にでも売られてしまうだろう。

まずどうにかして手足の縄をときたいが、食い込む程にきつく縛られている上に太く頑丈な縄の為、一般人より余程力の強い冒険者の端くれであるシュウでもこれを外すのはできそうにない。

せめてこの右腕につけられた禍々しい腕輪さえ無ければ、どうにかなったかもしれないのだが。


「くそ……どうする……?」


どこかへ売られるとして、いつかはスキが生まれる瞬間があるかもしれない。その時に逃げ出すか。

しかし、そんな時は来るのだろうか。

シュウの心に不安が滲む。


いくら優秀とはいえシュウはまだまだ駆け出しで弱い冒険者だ。奴ら相手にスキを見いだしても逃げ切る自信はあまり無い。

無理、かもしれない。


「……ねえ、少年」

「―っ!?だ、誰だ!?」


弱気な思考が意図しない他者の声に途切れる。

キョロキョロと辺りを見回せば部屋の奥の方に人影があるのがわかった。シュウは声をかけられるまでこの部屋に人がいることに気が付かなかった。


「お、女の子?」


その人影は自分とそう変わらない年に見える少女だ。自分と同じく足が縛られた状態で壁に背を預け座っている。

少女は薄く笑みを浮かべていた口を開いた。


「いや、怪しい者じゃないよ。私も少年と同じように捕えられてるんだけどね」


そう言う彼女の声からはこんな状況なのに焦りも不安も感じられない。

まるで世間話でもするような軽い調子で話しかける。


「でさ、もし少年が逃げようとしてるなら……」


彼女は後ろにまわっていた手をシュウの方へ向ける。

その手は縛られておらず、右手にはシュウの手足と彼女の足を縛っているのと同じ縄が握られていた。

シュウは驚愕に目をみはった。


「私、少しは手伝えると思うんだ。よかったら私も逃してくれないかな?」


暗闇で光る金色の瞳を細め、にっこりと可愛らしく笑った。

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