7話:広がる戦火
俺の名前は辰巳龍星。連絡の取れない舎弟を心配する武闘派の極道だ。
俺は今、夕方から連絡の取れなくなった舎弟の夏目智也を探して奔走している。
「夏目~!!どこだ~!!」
その叫びに反応する声はない。そして俺がとある公園に入った時だった。俺はとんでもない光景を目の当たりにするんだ。
「夏・・・目・・・?嘘だろ?」
俺が目にしたものは・・・・夏目の変わり果てた姿だった。俺はまるで理解が追い付かない。そして怒りと強い悲しみが遅れてやってくる。
「うおぉぉぉぉ!!夏目ぇ!!なんでだぁぁ!!お前は死ぬような奴じゃなかっただろぉ!!」
俺はそう叫ぶもただ悲しく木霊するだけ。俺はその怒りを抑えつけながら組事務所に連れて帰ることにした。
「組へ帰ろう。夏目。ここじゃ寒いだろ。」
そう言って俺は冷たくなった舎弟の体を抱き起こす。
「こんなに冷たくなって・・・。辛かったろ・・。仇は必ず取ってやる。待っとけ。」
俺は夏目の遺体を車へ乗せ組事務所へ帰った。冷凍室へ運び込む途中夏目を一番可愛がっていた仙石の兄貴が声をかけてきた。
「おい辰巳、なんだそれ。俺は信じねぇぞ。」
「兄貴・・・俺も未だに信じられません。悲しすぎて、悔しくて、もう何が何だか分かりません。」
「辰巳、それをやったのは誰だ。絶対殺す。」
「まだ分かりません。早急に調べ上げて俺も全力で殺しに行きます。」
「いや、お前は調べるだけでいい、やった奴は俺が内臓全部潰してこの世から消すわ。」
「承知いたしました。」(この感じ、本気の時の奴だ。)
その後、俺たちは再び神楽地区に出向く。そして情報屋からの情報をもとに十六夜組の奴らがよく現れる場所へ向かう。そうすると雑魚共がたむろしてやがった。俺がそれに気づいた時には既に仙石の兄貴は動いていた。仙石の兄貴はその拳が最強の矛であり最強の盾である。中国拳法の達人だ。様々な拳法に精通しており、蟷螂拳、八極拳に加え、中国武術の基本技である崩拳をとんでもない速度で放ってくる。それがこの組織内最強とも揶揄される仙石の兄貴なんだ。
「なに!?仙石だと!?なんでここに・・・!!」
「遅い、そんなのじゃすぐ死ぬぜ。」
そして放たれたのは蟷螂拳の突き。
「蟷螂拳の突きは刺す。」
「ごふうぅぅぅ!!」
その一撃で心臓を打ち抜かれた一人は絶命。兄貴は瞬時に方向転換し、次の敵に向かっていく。
(やばい、全員殺しちまう。)
そう思った俺は瞬時にチャカを抜き一人の足を撃つ。乾いた銃声と足を撃たれた奴の悲鳴が木霊する。
そして俺はそいつに強烈な圧をかける。
「おい、うちの夏目智也を殺した野郎は誰だ、言え。じゃねぇとハラワタ抉り出すぞ。」
「ひ、ひえ。多分鮫島の兄貴です!助けてぇ!!」
「鮫島だと?」
「兄貴、知ってるんですか。」
「あぁ、少し前まで東北の抗争でこっちにいなかった奴だ。拳の勝負じゃ右に出る者は中々いねぇだろうな。」
「そんな強い奴なんですね。」
「そうだ、まぁ俺には勝てねぇけどな。」
「そうですね、兄貴は最強です。」
そんな話をしているうちに十六夜組の奴らは全員骸と化していた。情報を吐いたやつももちろん殺した。十六夜組の奴らは皆殺しだ。
そして俺たちは一旦組へ戻り、この事実を周知することになった。報告は仙石の兄貴がしてくれることになった。
「親っさん、夏目を殺したのはあの鮫島です。何人かに吐かせましたが確定です。」
「そうか、鮫島・・・。少し前に帰ってきたと聞いたがいきなりの暴れっぷり。向こうも本気のようだな。」
「はい、こちらも戦力を固めるべきです。」
「そうだな、あの男に帰ってきてもらうか。」
「まさか、轟の事でしょうか。」
「そうだ、こちらも本気を出すには、この男しかいない。」
轟 京介。関東裏社会で知らない者はいない。鉄パイプで人間を貫く狂人だ。ついた異名は「鉄パイプの轟」。俺も会ったことはあるがとんでもない覇気と力量だった。そんな兄貴が帰ってくることを聞いて俺は正直恐怖した。帰ってきたときの話はまた今度話そう。
そしてこの鮫島狩りこそがこの戦争の行方を左右することになるんだ・・・・
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