6話:漢の帰還
俺の名前は天馬海斗。とある漢の帰還に歓喜の声を上げる武闘派の極道だ。
それはとある日の午後だった。俺は突然親っさんに呼び出された。その内容とは・・・
「天馬、ついに東北の抗争が終わったらしい。あの漢が帰ってくるぞ。迎えに行ってやれ。」
「ついにですか?あの抗争、とんでもないものだったと聞いてます。無事なんでしょうか・・。」
「当たり前だ。あの漢はそんなことで死ぬようなタマじゃない。お前が一番よくわかっているだろう。」
「そうですね。それでは即刻お迎えに上がります。」
「おう、行ってやれ。」
そんなわけで俺はとある兄貴分を迎えに行くことになった。その兄貴分というのが・・・・
「おぉぉ!海斗!久しぶりだなぁ!前よりも良い目になってる。たくましくなったもんだ。」
「おかえりなさいませ、鮫島の兄貴。東北の抗争、どうでしたか・・・?」
「あぁ、最後は俺が敵の大将討ち取って終わらせたぜぇ?凄まじくそして男前にな。」
「すごいです。兄貴は俺が一番尊敬している兄貴です。」
「ありがとな?海斗。」
この兄貴の名は鮫島陽介。男前という言葉が服を着て歩いているような、そんな兄貴だ。そしてこの兄貴が俺が一番最初に世話になった兄貴でもある。この兄貴は先にも言った通り、東北の抗争のに長期にわたって十六夜組からの助っ人として派遣されていたんだ。この兄貴が得手とするのはその拳、殺人空手を得意としている。俺も何度も稽古をつけてもらっているが一度として触れられたことはない。それだけすげぇ兄貴なんだ。
そして俺たちは組事務所へ戻る。すると早速兄貴は組長室へと向かう。
「親っさん、ただいま戻りました。東北の抗争、男前に終わらせてきました。」
「まずは礼を言わせてくれ。東北の抗争、大変だったとは思うが、無事で帰ってきてくれてありがとうな。」
「何を言いますか、親っさん。この渡世に生きる限り、俺にできねぇことなんてありませんよ。何事も男前にこなして見せますよ。」
「そうかそうか!では次は九州の抗争に行ってくれるか?向こうの親分が困ってるんだ。」
「なにぃ!?じょ、冗談ですよね??」
「はっはっは!冗談だ。今はうちも抗争中、助けに行ってやれるほど余裕もない。その代わり、これが本命の指令だ。水無瀬組との抗争、こっちでまた暴れてくれ。頼むぞ。」
「はい、承知しました。この鮫島陽介、粉骨砕身頑張ります。」
「うむ、行っていいぞ。」
「失礼いたしました。」
そして兄貴は組長室を出て俺の元へやってきてこう言った。
「海斗、この抗争、俺も前線に出ることになった。よろしく頼むぜ。」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします。」
「早速だが、俺は神楽地区に行く。お前も来るか?」
「はい!ご一緒させていただきます。」
そういうわけで俺たちは神楽地区へ向かうことになった。俺たちが神楽地区に到着すると、別行動をとることになった。
「海斗、気をつけろよ、ピンチだと思ったらいつでも俺の事を呼べ?」
「はい、そうさせてもらいます。」
そして鮫島の兄貴がとある公園に入った時だった。後ろから声がかかる。
「お前、見ない顔だな。十六夜組かぁ?」
「なんだあんちゃん。死にたくなかったら消えな。」
「やっぱり十六夜組だな。よくも日向の兄貴をやりやがって。てめぇは殺す。」
「日向?剣豪だな。やったのはあいつか。だが明確な殺意を向けられちゃあ黙ってはいられない。あんちゃん、名前は?」
「俺は水無瀬組の夏目智也だ。覚えとけ。」
「いいぜ?来いよ。男前にやってやる。」
そして兄貴は空手の構えをとる。その次の刹那。いきなり鉛玉二発、兄貴に向けて飛んできたんだ。
その主はもちろん夏目。
「おらぁ!死んどけぇ!」
「弾を避けるのは・・・・余裕だぜ?」
兄貴はそう言ってその鉛玉を完璧に外して見せる。そしてその瞬間には既に間合いを侵略していた。
「間合いってのはこう取るんだ。」
「なに・・・!?」(近接戦、ドスだ・・・!!)
「あんちゃん、気合いのこもった良い目をしてる。だが、俺とやるには10年早かったみてぇだ。」
「うぉぉぉ!!」
夏目は雄叫びを上げながらドスを抜こうとする。だが、それは間に合わない。兄貴の正拳突きが夏目の腹にめり込む。
「一発で絶命だ。男前に死んで行け。」
「ごはぁぁぁぁぁ!!」
「おぉ?やるじゃねぇか。あんちゃん。」
「へっ!てめぇも・・・一発くらい・・・貰っとけ。」
兄貴の腹にはなんとクナイが突き立っていた。だが、それは兄貴の臓腑には届かない。なぜなら、兄貴は腹にきつくサラシを巻いていたからだ。
「あんちゃん、俺に手ぇ出さなきゃ、もっといい極道になれてただろうに。残念だ。しかし、最後は男前だったぜ。」
「ごふっ!!俺は・・・・もう死ぬんだな。あんたとやったのが運の尽きだったみてぇだ。じゃあな・・・。」
そう言うと夏目は永遠にその目を閉じた。
そしてこの夏目の死こそが、この抗争をさらに大きな抗争へとする序章となるのだった・・・・
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