5話:龍虎相討つ
俺の名前は天馬 海斗。武闘派兄貴の戦いを見届ける武闘派の極道だ。
龍虎相討つとはまさにこのことだろう。飛龍の兄貴と水無瀬組の剣豪、日向 賢仁が今、激突する。
機先を制したのは日向だった。日向は竜巻の如き斬撃の雨を降らせる。
「飛龍!!お前さんの剣術を見せてみろ!!
「ふん、この程度の斬撃ならば、全て受けきれる。」
日向は片手の斬撃、兄貴は受けきれると思っていた。だがなんと受けた斬撃が止まらず、兄貴が吹き飛ばされたのだ。
(リストが常人離れしているな。受けは通じんか。ならば・・・!)
「飛龍!その程度かぁ!我が剣は受けの通じぬ最強の剣よ!」
「ふん、一発吹き飛んだ程度でよくほざく。」
その時見せた目はまさに冷酷な目だ。それに対して日向は自信に満ちた目を返す。そして再び二人が構える。兄貴が見せた構えは刀を正眼に構える本流の剣士の構え、それに対して日向は腰を低くして刀を胸の前で交差させる特殊な構え。それを見れば誰もが強烈な殺気を感じるだろう。
そして先に踏み込んだのは飛龍の兄貴だ。兄貴は電光石火の踏み込みを見せる。
「日向!これを受けきれるかぁ!」
「むぅぅぅ!!」(速すぎてもはや見えん!!」
「一文字切りじゃあぁぁぁ!!」
「はあぁぁぁ!!」
兄貴が放ったのは神速の一文字切り。それは速すぎてもはや光のようだった。それを日向は受けようとするも間に合わない。
「ぐぁぁぁ!!」
その一文字切りは日向の胸を深く切り裂く。それは臓腑にこそ届いてはいないだろうが、それなりの深さだ。
「ぐはぁ!とんでもない速さだな、飛龍・・・。」
「ふん、この程度が受けきれんとはな。見損なったぞ。」
「この日向 賢仁を舐めるんじゃねぇぞ。この程度の傷、何万回と受けてきてんだよ。エリートのてめぇにはわからんだろ。」
「エリートだと?この俺がエリートだとでも言うのか。」
「お前のような本流の剣士は大抵がエリートの類だ。功名心に目がくらんで経験を積むんだろ。」
「ほう?俺が功名心で動いていると思っているのか。残念だが、功名などに興味はない。血反吐を吐き、何十万、何百万と剣を振り、己の才能のなさを思い知り、それでも技を磨き続けた。それが今の俺だ。」
「そりゃすごいなぁ飛龍。ならばお前の鍛錬の賜物、見せてみろ。」
「いいだろう。俺が磨き続けた技の一つを見せてやる。」
そうして兄貴は腰を低くして刀を後ろに構える特異な構えを見せる。その時の覇気は凄まじいものだった。まるで空気が歪んで見える。
「我が剣は神速。誰にも避けることはできない。」
「凄まじい圧だ飛龍!」
「では行くぞ!日向!!」
その次の瞬間だった。兄貴が神速の踏み込みを見せる。俺には兄貴が消えたように見えたんだ。
「うぉぉぉ!日向!この世に別れを告げろぉ!!」
(先ほどよりも速く、そして鋭い!これは避けられん。ならば・・・!)
その刹那、日向の喉を兄貴の刀が貫いた・・・・と思った。だがなんと日向は肩でそれを止めてやがったんだ。
「ぐぅ!!これで止まったなぁ!飛龍。お前の刀貰ったぞ。」
「むうぅぅ!!ちぃ!!」
「おらぁ!一旦離れとけぇ!!」
日向は残った右手で剣を振るう。それに合わせて兄貴はバックステップを踏み紙一重で躱して見せる。
「剣士の命刀を奪ったぞ、飛龍。これでお前は戦えまい。」
「戦えないだと?何を言っている。貴様などこの拳で捻り潰すのが十分だ。」
「ほう?ならばやって見せろ。」
そう言って日向も刀を捨てる。
そして二人の猛者が三度構える。それはまさに龍と虎。間違いなく過去類を見ない激戦だ。
「飛龍、行くぞ。」
「あぁ、来い。」
その刹那、日向が踏み込む。それはまさに電光石火。そこから放たれたのは強烈な右フック。だが兄貴はそれをサイドステップで躱し、放たれた腕を掴んだのだ。
「掴んだぞ日向。」
「何の意味がある。」
「はぁぁぁぁ!!」
「・・・・なに!?」
なんとそこから合気の投げを放ったのだ。兄貴は剣豪と知られているが、その本質は合気の達人でもあるのだ。日向はその投げを対処しきれず縦に一回転。背中から地面に叩きつけられる。
「ごはぁ!!」
だが日向も猛者だ、瞬時に立ち上がる。しかしなんと日向に異変が起こる。
「う・・・お・・・なんじゃあ?」
「ふん、血の流しすぎだな。もう貴様は戦えまい。」
「なんだとぉ?俺はまだやれるぞ・・・・。ごふぅ!」
「海斗、行くぞ。この男は放っておいてもいい。殺害指示は出ていない。」
「は、はい。承知いたしました。」
そして俺たちはその戦場から離れた。その後の日向はというと・・・応援を呼んでなんとか助かったらしい。
そしてこの後、この抗争に転機が訪れるんだ・・・
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