12話:最強VS最強
俺の名前は辰巳龍星。最強の兄貴が動き出したことに少し恐ろしさを覚える武闘派の極道だ。
苛烈を極めるこの神楽地区大抗争。先日、ついに水無瀬組の最強タッグ、仙石の兄貴と轟の兄貴が動き出した。そしてこの後互いの最高戦力同士がぶつかるんだ。
兄貴たちは神楽地区に到着すると別行動をとった。なぜなら、その方が接敵率が高くなるからだ。
仙石の兄貴は西区、轟の兄貴は東区を回っている。狙っているのはもちろん敵の最高戦力、龍神と鮫島だ。鮫島はうちの夏目を殺っている、報復は覚悟しているだろう。
そして時は経ち、暗闇のなか、外套の光だけが頼りのなる時間、轟の兄貴がとある公園を歩いていた時だった。偶然そこに居合わせた男がいた。
「ん?お前は・・・・。」
「ほう?面白くなってきたねぇ。」
そこにいたのは・・・・龍神拓真だったのだ。その瞬間、二人が殺意をぶつけ合う。
「お前が龍神かぁ。探してたんだよ。お前をなぁ!」
「奇遇だな、俺もお前を探してたんだよ。」
「十六夜組の奴は俺が全員殺すって決まってるんだ。さぁ、死んでくれ。」
「舐めんじゃねぇよ。こっちも舎弟をやられてる。お前は殺す。」
そして二人は互いの得物を抜く。轟の兄貴の手には長さ60センチほどの鉄パイプ、龍神の手には鉄鋼鉤だ。張り詰めた空気の中、機先を制したのは龍神だった。龍神は息を吐くようにチャカを抜き放つ。
だが、闇雲に狙ったチャカがこの轟の兄貴に当たるわけもない。兄貴は当たり前のようにサイドステップで躱し、それと同時にまるで何かが爆発したかのような踏み込みを見せる。
「面白いじゃんお前!でも俺には届かないなぁ!!」(チャカの精度が半端じゃない。一気に叩き潰す。)
「ふん、お前にこれが当たらないのは承知の上だ。」(踏み込みが練り上がってる。恐らくは受けきれんだろう。なら後ろに飛ぶ。)
次の刹那、既に兄貴は懐を侵略していた。
「吹き飛んじまいな。おらぁ!!」
「ちぃ!!」
龍神は腕を交差してバックステップを踏む。だが、轟の兄貴のそれを躱しきれない。ギリギリで鉄鋼鉤を挟むも甲高い金属音とともに吹き飛んでいく。
「重量級の武器か、相性悪いな。」
「お前は俺に勝てない。とっとと死ぬといい。」
そしてここから、さらに激戦が繰り広げられることになる。
ところ変わって神楽地区の繁華街の裏の空き地にて・・・
そこには一人の男が佇んでいた。それは月を見上げる仙石の兄貴だ。
「今日も月が綺麗だな。良い日だ。外道を殺すにはな・・・・。そろそろ現れたらどうだ?鮫島。いるんだろ?」
「やっぱり気づいてたかい。あんちゃん。」
「当たり前だ。気配に気づけないほどあほじゃねぇ。」
「あんちゃん、俺の事狙ってるんだろ?」
「そうだ。お前は可愛がってた夏目をやりやがった。ここで死んでもらうぞ。」
「いいぜ?死んでやる・・・とはならねぇな。この男前を壊せるのは、俺だけだ。やるのかい?あんちゃん。」
「とことんやってやる、どちらかが死ぬまでだ・・・!」
そういって二人はバックステップを踏み間合いを取る。
先手を取ったのは鮫島だ。鮫島は独特なステップで踏み込み、一瞬で間合いを詰める。さすがは空手の使い手といったところだろう。そこから放たれたのは右の正拳突き。それは並の人間ならば一撃で息の根が止まる威力だ。だが、この仙石の兄貴は中国拳法の使い手、打撃に対してはプロだ。
「一発で絶命だ!はぁぁ!」
「まともに受けたら終わりだな。」
その刹那、仙石の兄貴は凄まじいバックステップを踏みその正拳突きを躱す。だがなんと躱した先を鮫島は読み切り、後ろ回し蹴りを放ったのだ。
「ぐぉぉ!半端ねぇなぁ。鮫島・・・!」
「男前だろ?あんちゃん、お前の打撃も見せてみろ。」
「いいぜ?いくらでも喰らわせてやるよ。」
そしてこっちの死闘もさらに激しいものとなっていくんだ・・・
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