9話:忍、動く
俺の名前は天馬海斗。抗争の早期終結を願う武闘派の極道だ。
今日の俺は組事務所で事務作業だ。山のようにある事務を俺が一人で片付けている。はっきり言って超大変だ。そんな中、ある人物から連絡が入る。その人物とは・・・月城の兄貴だ。月城の兄貴は親っさん、カシラに並ぶ組織No.3を張る武闘派だ。戦術は王道のドスを30年にわたり磨き続けてきた。この人は仁義や任侠って言葉が一番似合う漢かもしれない。
「月城の兄貴、どうされましたか?」
「海斗、今すぐ神楽へ来い。お前が必要だ。」
「わ、分かりました。」
そして俺は電話を切り、即座に準備をし、神楽地区へ向かう。
神楽地区に到着すると月城の兄貴が出迎えてくれた。神楽地区でヤサとしているのは廃ビルの一室だ。
「海斗、突然すまねぇな。どうしてもお前の力が必要なんだ。」
「承知いたしました。どのような用件で?」
「この抗争、俺も前線に出る。向こうの武闘派の居場所を探ってほしい。」
「月城の兄貴が主力に・・・ですか?ありがたいです。これからよろしくお願いします。その件、引き受けさせていただきます。」
「あぁ、頼んだぞ。」
そんなわけで俺は調査に出ることになった。調査に協力させたのは舎弟の桐生だ。こいつは投擲を得意とする珍しい極道だ。
俺たちは少しでも情報を多く得るために別行動をとることになった。この後、あんな悲劇があるとも知らずに・・・。
そして調査を開始して4日目の事だった。桐生が一人で路地裏を歩いていると正面に一人の影が現れる。
その男はこう言い放つ。
「おいお前、十六夜組の桐生だよな。ちょっと教えてほしいことがあるんだわ。」
「なんじゃてめぇは。まさか水無瀬組か!」
「ご名答。俺は水無瀬組の鬼龍源。お前に選択肢がある。鮫島の居場所を言うか、ここで無残に死ぬかだ。」
「なんだと?鮫島の兄貴の居場所か?舞浜駅を降りてちょっと行ったとこだよ。」
「それデ〇ズニーランドの場所だろうが。もういい、お前には無残に死んでもらう。覚悟しな。」
「おらぁ!お前が死んどけぇ!!」(それと同時にあれを押す!!)
桐生は瞬時に投げナイフを抜き放つ。だがそれを紙一重で躱す鬼龍、こいつも猛者だ。懐から瞬時に煙玉を抜き、地面に叩きつける。辺りが白煙に包まれる中、鬼龍の声が木霊する。
「君の投擲はプロ並みだな。だが、俺には届かない。」
「なんだと?来いよ!鬼龍!!!」
「後ろだ。見えてないだろ?」
「なに!?」
なんといつの間にか鬼龍は桐生の背後にいたのだ。そこから放たれたのは忍者刀による一刀。それを避ける術は桐生にはなかった。桐生は背中を一気に切り裂かれる。それは明らかな深手。だが、それを喰らっても桐生の心は折れちゃいなかった。
「お前も喰らっとけよ。」
そう言って後ろに向けてクナイを振るう。だがそれも鬼龍に当たることはない。
「無駄だ。俺には当たらないよ。」
「どこじゃ、コラぁ!!」
そう叫ぶもそれは悲しく木霊するだけ。この鬼龍という男の強さはその隠形にあったのだ。この煙の中では隠形を見破ることは極度に難しいだろう。そしてついにその時が訪れてしまう。
「お前には死んでもらう。素直に吐いてくれれば殺しはしなかったんだけどね。しょうがない。」
そう軽口をたたきながら鬼龍は桐生の正面へと現れる。その刹那、神速の突きを放つ鬼龍、それは深手を負った桐生には避けられない速度だった。
「さぁ、地獄へレッツゴー。」
「ごあぁぁぁぁぁ!!」
その突きは桐生の心臓を正確無比に貫いていた。だが・・・・・なんと桐生は最後の力を振り絞り投げナイフを深々と鬼龍の腹に突き刺していたのだ。それを見て鬼龍は嘲笑う。
「ほう?やってくれるねぇ。」
「ごふっ!最後のあがきじゃ。」
「じゃあ、ばいばい。」
そう言って鬼龍は刀を引き抜く。すると糸が切れた操り人形のように桐生は地面に倒れ伏す。そしてそのまま、桐生は永遠にその瞼を閉じた・・・。
「素直に吐けばいいのにな。残念だよ。」
そう吐き捨てる鬼龍、だが、その男のもとにとある人物が現れる。その人物とは・・・そう、月城の兄貴だ。なんと桐生が一発目の攻撃を仕掛けると同時、緊急のアラートボタンを押していたのだ。
到着した月城の兄貴が口を開く。
「兄ちゃん。俺の可愛い舎弟をよくもやってくれたな。てめぇみたいな外道は生きる価値はねぇ。ここで絞めさせてもらう。」
「へぇ、月城か。相手にとって不足なしだ。今日で二人も死ぬなんて、十六夜組がかわいそうだ。
でもさぁ、こっちも夏目をやられてんだよね。鮫島はどこいんのよ。教えろコラ。」
「黙れ。この外道が。てめぇは極道としての背骨がねぇみたいだ。俺がイロハを叩きこんでやる。覚悟しろよ兄ちゃん。」
そう言って月城の兄貴はドスを抜く。鬼龍の手には忍者刀だ。戦いが始まることは明白だった。
そしてこの戦いは壮絶なものとなる・・・・
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