嘘吐き
嘘を吐くなら死ぬまで突き通せ、そうすれば君に騙されている馬鹿にとって君の嘘は真実でしかなくなる。
それはわたしが十歳の頃に迷い込んだ世界で出会った命の恩人の言葉。
わたしの朝の星、わたしが嘘を突き通す決心を固めることができたのは、あの人のおかげだった。
あの世界から無事帰還した後、わたしは嘘をつき続けた。
アレからもう二十五年、色々なことがあった。
わたしの人生は、やっぱり嘘まみれだった。
それでもホントウのこともあった、愛しい人は本当に愛しいし、その人との間に生まれた我が子は本当に可愛くて大好きだ。
それでもわたしはその子にも嘘をつき続ける、それがわたしにとっての愛であるし、なによりあの人がそう言ったから。
嘘を吐くなら突き通す、あの子がわたしみたいにならないように、あの子だけはホントウのわたしの世界から遠ざけよう。
それがいいことなのかはわからないけど、それでも。
二十五年も経ったからだろうか、わたしはもうあの人の顔をよく思い出せなくなっていた。
言葉は覚えているけど、どんな声だったのかも曖昧だ。
それでも、きっと一目見ればあの人のことはわかるだろう、わかるはずだ。
わたしはもう一度だけ確実にあの人に会うことが確定している、その再会の日も近い。
その時は、とびきりのおしゃれをして、あの日ちゃんと伝えられなかったお礼をしよう。
わたしの人生は、半分はそのためにここまで続けてきた。