屋根裏に住んでいるお姉さん
※『第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』参加作品です。
言えない秘密があった。
僕がそれを知ったのは幼い頃で、どうしてなのか理解できていなかった。
僕の家は、郊外の田んぼが広がる景色の中に、山を背にして建つ数軒だけある家の中の一つ。つまりは田舎にある。ただし周りは全て……という訳じゃないけど、ほぼ僕の家と繋がりのある人たちが管理している。
「子供は近寄っちゃいけないよ?」
そう言われ続けながら育ってきた家だけど、僕の家には行ってはいけない場所が存在した。
お爺ちゃんもお婆ちゃんも、お父さんやお母さん、そして僕の兄弟たちも、そこには近付かない。
――どうしてだろう? どうして行っちゃいけないんだろう?
考えたけれど答えなんか出せなかった。
そんな僕がした行動。「行っちゃいけない」と言われると、どうしても行きたくなる。鍵が掛かってるけど、そこに行けないわけじゃないんだから。
好奇心に負けた僕が、そこの扉を開くのはもはや不可避な事。
『あら?』
「…………」
誰かいるなんて思っていなかった僕は、その場で固まる。
『ここに人が来るなって珍しいわね……。しかもこんなに可愛いなんて……』
「……あ、あの……」
『え? あれ?』
目の前で突然おろおろしだすお姉さん。そこに居たのは年代物と思われる和服を着た黒髪の女の人。
「あの……どうしてこんな所にいるの?」
『……私の事が見えてるの?』
「うん。もうばっちり、しっかり」
『そうかぁ……』
小さな声をこぼして僕を見つめるお姉さん。
「ここで何をしているの?」
『うぅ~ん……ここに住んでる感じ?』
「住んでるんだ……」
『あ、ボク? この事は内緒にしてね。私と会った事もね。約束してくれたら、ボク達の事を護ってあげるから。ね?』
「わかった。でも……」
僕はお姉さんの言う事にこくりと頷いた。
『でも?』
「お姉さんに会いに来てもいい?」
『いいわよ』
優しく微笑んでくれるお姉さん。
お姉さんと秘密を共有して、既に十数年が経つ――。
『あの時の事覚えてる?』
外見が変わらないお姉さんが、僕の事を微笑みながら見つめる。
場所は家に唯一存在する屋根裏部屋。
「もちろん。約束守ってるだろ?」
フフフと笑うその顔は、あの時からまるで変わっていない。
――そりゃそうだ。幽霊なんだもの……。
行ってはいけない場所の原因はこのお姉さんだった。そして出会った事を言わない約束も守り続けている。
――何故かって?
お姉さんは今も僕の家の屋根裏に住んで、僕らを護る存在になっているから。
お読み頂いた皆様に感謝を!!
結構な量の文章を削ったので、少しわかりにくい箇所があるかと思います。
時にはこういう作風なモノもいいでしょう。実際こういうストーリーは書き慣れていますしね。
内容的にジャンルに迷いまして、ホラー的な要素でもないし、ヒューマンでもない。かといってローファンというのも……。といった感じで未だに迷子ではありますが。(^▽^;)
ジャンル違いだったら申し訳ない。m(__)m