表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

1

あいよ! また突発的に書いてしまった新作ラーメンだよ!

( `・ω・´ )つ

いつものうちのスープを使ってますよ


短いので5話行かずに終わります!!(多分)


 最近私の婚約者の様子がおかしい。前は頼んでいないのに私の世話を焼こうと無理矢理付き纏っては私の交友関係に口を出して、やれあんな下賤な女とは関わるなだの、あの子息は評判が悪いから友人付き合いをするなだの難癖をつけてきていた。

 いくら婚約者だからといって、誰を友人にするかまでエレオノーラの指示を聞く謂れはないというのに。自分が嫌いな人間と私が仲良くしているのがよほど気に入らないらしい、何から何まで自分の思い通りにしないと面白くないのだろう。私の友人などは「愛されてるな」などと茶化すが、本人としては全く笑い事ではない。

 しかしその、私が何度言っても接し方を改めようとしなかったエレオノーラが、ここ最近様子がおかしいのだ。


 今も教室に向かう私を認めて、廊下の端に寄って粛々と頭を下げている。確かに模範的な臣下として、老人達も満足する対応だが。これでは私が学友として連れている伯爵家や子爵家の子息令嬢に対して「公爵令嬢が最上の敬意を払っているのにそなた達が身分を弁えずに王子に侍るなど」と頭の固い親世代から(そし)りを受けてしまうではないか。

 いや、この女の事だ。もしかたらそれが狙いかもしれない。


「エレオノーラ、早いな」

「王国の若き太陽、アルベルト殿下にご挨拶申し上げます」


 深々と頭を下げたエレオノーラは私から声がかかると、私のみに向けて挨拶を述べるとさっさと自分の教室へ向かった。私と共に教室に向かっていた、私の学友達には一切の興味がないとあからさまに示すように。私の学友達は皆エレオノーラより身分が低い。あの女から声がかからないと挨拶もできないというのに。友人達は私の婚約者に挨拶ができなかったと気に負っているようで、申し訳なさそうな顔を私に向けてきた。

 気に病ませて悪いことをしてしまったな。いやエレオノーラが悪いのだが。

 あのわずらわしさから解放されて清々したのは最初の数日だけで、今では気味の悪さの方が勝る。一体何を企んでいるのか。


 今までなら、学園内は身分の垣根はないのですからと私の過去の発言を逆手に取って、勝手に「アビー」と呼ぶこともあった。その上で「アビーも、婚約者なのですからエレナかノーラと呼んでくださいまし」なんて私を振り回していたのに。それを受け入れて愛称で呼んだことなどはないが、それがこうパタリとなくなると……不気味だ。そう、何を考えているか予想がつかないからこそ嫌なんだよ。そのせいでエレオノーラの事ばかりこうして考えてしまう。



「エレオノーラの家にご機嫌伺いですか」

「婚約者としての当然の交流でしょう。なんですかご機嫌伺いとは」


 学園から戻るなり私を小さい子供のように叱る母上に、ついげんなりしてしまう。王妃として、王太子の婚約者であるエレオノーラを教育する母上は、小さい頃から娘のように接している彼女に肩入れをする傾向にある。同じ女だから、私や父上……陛下は毎回悪者にされてしまう。気が利かなくて細かいところまで考えない私たちが悪いらしい。そうですね申し訳ありませんといつものように、お小言を話半分に聞き流していた。母上は、エレオノーラが最近私と個人的に過ごす時間がないのが大層気にかかっているらしい。様々な教育を城に受けには来ているが、その後も私と会おうとせずにすぐ屋敷に帰ってしまうと。

 毎回お茶や庭園の散策に付き合わされる時間がなくなって、執務に向かう時間が増えたと快適だったから私はこのままでいいのだが。ああ、心底そう思うよ、私は。


 私達は、政略の婚約だが良好な仲を育めるようにと月に一度の交流を義務付けられている。今まではその義務での顔合わせ以上に、隙があればあの女が押しかけて来ていたので「そういえばそんな決まり事があったか」と私も忘れかけていた。

 様子のおかしくなったエレオノーラは、自ら私と関わる事をやめた。以前は何かしら用事をこじつけては頻繁に城に登っては私と共に過ごしたがっていたというのに。それこそ三日と開けずに。最後に個人的な交流を持ってから一ヶ月は経っていないのだが、エレオノーラがお気に入りの母は「すぐにプレゼントを持ってあの子の家に行きなさい」とお冠だった。

 三日後学園で会うからその時でいいと思うのだが。こうなった母上に反抗しても良い事が何もないのは知っている。仕方ない、訪問の約束を取り付けるか。


 急かす母上に監視される前で手紙を書くと、その晩のうちにエレオノーラ宛にガストル公爵家へと遣いを出した。しかし彼女からは丁寧な謝罪とともに「しばらく十分なお構いは出来かねますので、お話があるならば規定通りの交流会の日に伺います」との返事が返ってきた。

 以前なら私が母上に言われて嫌々誘った予定にも尻尾を振る犬のように大喜びでやってきたのに。屋敷に行くという王子の言葉を断るとは随分余裕ができたものだな。


「まぁ。アルベルト、貴方があんまりにもエレオノーラちゃんを無下にするから愛想を尽かされたんじゃないの? もてなしはいらないから顔が見たいと言ってすぐ向かいなさい」

「明後日は学園だからそこで話をすればいいでしょう? ダメなんですか……はぁ。母上はいつもエレオノーラと顔を合わせてるから元気なのはご存知でしょうに……しょうがない、あまりに態度が変わったから母上が心配していたと伝えに行きますよ」

「まぁなんですかその言い方は! 大体貴方は同じ敷地にいるのに一つ学年が下のエレオノーラちゃんにろくに構いもしないではないですか。あんなに良い子が他にいないのを全く理解してないんだから……」


 また適当に小言を聞き流して、その日の午後はしょうがなく時間を捻出してガストル公爵家へと向かった。母上の息のかかった侍従までうるさく言うので小さな花束でも持っていくか。

 まったく、どうせ卒業したら結婚するしかないと言うのに。母上も心配性だ。



「グレッグ、ちょうど良いところに。わが婚約者殿の顔を見に来たのだが屋敷に入れてもらっても良いかな?」

「王太子殿下?! も、申し訳ありません喧騒しくて……」

「エレオノーラは屋敷にいるか」

「お嬢様はご在宅ですが……次にお会いするのは定例のお茶会だと伺っておりました、大変申し訳ありません」

「いや、良い。都合があったとはいえ先ぶれの到着と変わらぬ時間にこうして来てしまったのはこちらだからな。待たせてもらって良いだろうか」


 なんだか屋敷中が慌ただしい。一応先ぶれはしたのだが話が通っていないようだ。そういえばガストル家の警備も詰所ではなく馬車から見える敷地の外にいたな。対応をしかねてどうしたものかと狼狽える使用人の後ろに顔を知っているガストル家の従僕を見つけて声をかけると、まずいところに来たと思っているのか一瞬不安が浮かんでいた。

 顔に出るなんて彼にしては珍しい。


「様子を見てこいと母上がうるさくてね。勝手は知っているから案内もいらないくらいだが……」

「アビー?! 来てくれたの?!」


 サロンに行ってもいいか、とグレッグに聞こうと思っていた私は横からかけられた言葉に硬直した。その愛称で私を呼ぶのは、しかし声が随分と幼い。いや幼すぎる。


「エレオノー……ラ……?」

「アビーいらっしゃい! アビーから来てくれるなんてとっても珍しいわ! 今日は良いことがありそう。いいえ、アビーが自分から来てくれたんだもの、これが良いことだわ! ねぇ一緒にお庭でお茶をしましょう」


 そこにいたのは5歳か、6歳くらいの見た目のエレオノーラだった。なぜ、どうして、と固まっている私は現状が理解できずに何も反応ができずにいる。子供の体格を生かして茂みに隠れていたようで、頭には葉っぱが付いていた。

 エレオノーラの専属侍女の声が聞こえた。「こんなところにいらっしゃったのですか」と焦ったような様子で、ああ彼らはこの子を探していたんだなと腑に落ちる。


「この子は……エレオノーラだろう? どうして……子供になってしまったのか?」

「いいえ、アルベルト殿下。わたくしはこちらにおりますわ」


 屋敷の中から優雅に出てきたのは私のよく知る姿のエレオノーラだった。学園で見た姿と相違ない。ではこちらは親戚の子供だろうか? しかし私の愛称を勝手に口にするとは、公爵家の縁者としてはあまりに……なら何故私の知己として振る舞っているのか。

 あり得ないとは頭では認識しているのに、考えれば考えるほどこの子供がエレオノーラとしか思えない。


 対面して数度瞬きをしている間にそこまで考えて、ニコニコ見上げてくる幼な子を腰に巻き付けたまま、グレッグが「お嬢様、アルベルト殿下をサロンにご案内してもよろしいですか」と提案するまで固まっていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ