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「終戦」


昭和54年8月15日ホノルル

日本は、米国との単独講和を結んだ。条件は、インド、太平洋における日本の単独主権を認めること。米国は、西海岸を割譲すること等、全面的な日本の勝利で米国との戦争は終わった。

他の連合国とは、9月から年を経て、55年11月までに、講和が成立した。

帝国軍は、講和条件が合わないと、兵器で、D弾を使うという風潮が世界に蔓延し、結局、連合国は、我が国の要求を全て飲んだ。

大日本帝国版図は拡大し、米国以南のアメリカ南北大陸は、それぞれに、日本が任命した王と貴族を頂く国になった。他にも書くべきことは山ほどあるのだろうが、まぁ、私の書きたい関心事でもないので割愛したい。

大日本帝国は、上に天皇陛下を頂き、元老院と征夷大将軍家が治める、非近代国家と言っていい。

日蒙戦争が、日本の勝利に終わり、ヨーロッパで言うところの中世に大陸に進出した日本国は、大陸に於ける各大名家の暴走という形で、様々な国家を成立させてきた。

しかし、天皇家を中心とした身分制度は、健在であり、日本国は帝国として、それらの国家に影響を及ぼした。

近代、英国の通商を求める船団によって、我々、日本人は、新たな知見を得た。

それ以来、欧州型の貴族制度によって、大日本帝国版図は中央集権化を進めた。

各国王、各大名、各公家等は、それぞれに、王、公爵、侯爵、伯爵等と、名前を変えられ序列を付けられた。

最下級は、私有奴隷である。

日本人は、他の民族との混血を望まなかった。

中世以来、大陸に於いて、日本人と見た目の違う人種や、反抗的民族は、大名たちが挙って奴隷化していった。

日本に去勢の文化が入ってきたのも、その頃である。

日本の外国にとっては変な文化として、去勢アイドルという存在が上げられる、まぁ、興味はないが。

我が、鴨志田家は、徳川家の縁戚として、大陸に攻め入り、当時、満州国西部を本拠としていた、大名樋口家を滅ぼし、そこに本拠を定めた。

それから、もう、数百年の時が経つ。

近隣には、近縁や家臣を配置し、満州国国王よりも、権力を持っていると言われる。

その、鴨志田侯爵家に生まれたのが、私、鴨志田与一郎だ。

「坊ちゃん、見えてきましたよ。」

「去年も来たじゃないか」

「アレが、恒星間宇宙船って、未だに信じられないわ」

「ト、トイレ」

バスの中にはクラスメートたちが詰め込まれている。しかし、巨大で豪華なバスなので少なくとも僕の回りは窮屈ではない。

「ユリ、さっさとトイレ行ってきなさい。」

絵里がバス後部を指さす。ユリが青い顔をして立ち上がった。

「さっき、女の子たちが、坊ちゃんの事噂してましたよ」

「へぇ、なんて?」

麻里は、へらっと笑い。

「スカトロ野郎って」

「ははははっ」

「こら、止めなさい、他の人もいるのよ、お坊ちゃまを、家でのように悪く言ってはダメよ。」

「はい、すみません」

「それで、本当は違うんでしょ」

「はい、結構ませた子がいるのか、それとも親に言われたのか、私に坊ちゃまへの取次を申し出る女生徒が多いのです」

「まぁ、当然よね!!このワ・タ・シ!の坊ちゃまですもの」

絵里が貧しい胸を張る。

「で、坊ちゃまは、気になる娘とかいるんですか?いるなら、手を付けても問題ありませんよ」

「怖いよ、絵里・・・・」

ユリが席に戻って来た。

「うぅ、気持ち悪い」

「・・・・、坊ちゃま、アレの所有権を旦那様は勝ち取ったという話です。私は難しいことは分かりませんが、戦争も終わりましたし、たぶん、近々、本土に行くことになると思います。」

「た、楽しみです」

「ほら、アンタはゲロ袋持って、窓の外見てなさいよ、ユリ」

麻里が指さす方向にそれはあった。

要塞に囲まれた銀色の城、その特異な様相は、急激に変わりつつある自分を映したようで、ウンチが・・

「ちょっと、トイレ行ってくる」

「麻里、付き添いなさい」

「はい」

クラスメート達が楽しそうに話している。

誰もが朗らかに、小学2年の遠足を楽しんでいるのだ。

そんな中、ただ、僕だけが、暗く深い奈落の底に落ちていくような気がした。

「あっ!」

麻里が僕の反応を見て、手を引っ張る、トイレに向かって。

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