お風呂と千歳の秘密。
「さっきのアートの顔は面白かったね」
私はお風呂の中で手足を伸ばしながら笑う。
アートはもう少し心配されて「もうしつこいなぁ」くらいの悪態をつきながら眠りにつく予定だったのだが私が思いの外引き留めずに「んじゃよろしくね」と言ったので驚いていた。
結局セカンドではなくファーストの高級ホテルのお風呂にした。
ここはお風呂が大きいし綺麗で貸切風呂になるので気兼ねしないで入れるから好きだ。
「千歳様、アートは大丈夫でしょうか?」
「もう、大丈夫だよ。それこそ王様も黒さんも居るから平気だよ」
そう言ってもジョマの顔が暗くて心ここにあらずだった。
「ジョマ、聞いてもいい?」
「何でしょうか?」
「6年前のジョマもこんな気持ちだったのかな?」
「はい?」
「ウチでアートの事を話したらお父さん達から「そう言う事、折角千歳も振り回す立場から振り回される立場になったんだから頑張りなさい」「親ってそんなものよ。皆気を揉むのよ」って言われたんだよね。
サードの時に私が周りの制止を聞き入れないでコピーガーデンを救いたい一心で動いた時にジョマも気を揉んだ?」
「もう、当たり前じゃないですか。
京太郎と次元の果てまで地球の神様が迎えにきてくれた時、予知の結果を聞いた時には生まれたばかりのアートよりも千歳様の事を考えました。
そして京太郎と何回泣きながら自問をしたことだか」
…思ったよりも重い返答で申し訳ない話だ。
私は素直に「ごめんね」と謝る。
「良いんですよ。千歳様の思う通りに、それが京太郎と私の願いでしたから」
「じゃあ私もアートの思う通りにって応援した方が良いかな?」
きっと私は母親だとしたら過保護な方だろう。
今もこうしてあれこれ手を回している。
「あの子はまだ6歳ですよ」
「そうだね。じゃあ暴走しないように見守らなきゃダメかな?」
「はい。そうしてください」
「それにしてもジョマもありがとうね」
私は話題を逸らすべくジョマにお礼を言う。
「何がですか?」
「ジョマじゃなくて東道子でお風呂来てくれて」
そう、目の前に居るジョマはけしからん体型の装飾神ジョマではなく慎ましい体型の東道子としてお風呂に入ってくれている。
「もう、別に千歳様は気にし過ぎですよ。そんなにモデル体型がお望みなんですか?」
「いや、持たざる者の気持ちは持つ者にはわからないと言うべきか…」
「じゃあ一度持ってみませんか?」
「え?」
ジョマが「ふふふ」と笑うと私の胸が大きくなっていく。
うわぁ
大きいのに軽い。水に浮くって本当なんだ…
じゃない。
「ダメだよジョマ!」
「ふふ、楽しくなってきました」
ジョマが楽しい時の表情でそう言うと突然お風呂場に裸のルルお母さんとリーンさんが現れる。
「え!?」
「うわっ!なんだ!?」
「きゃぁぁぁぁっ」
2人は少しゆっくり目にお風呂に落ちてくる。
速度はゆっくりなので怪我の心配はない。
「何だここは?風呂?」
「え?ルル?チトセちゃん!?と…誰?」
2人はキョロキョロとお風呂場を見渡すと見覚えのない道子状態のジョマを見て疑問を口にする。
「ふふ、こんばんはルル様、リーン様」
「その声…ジョマか?」
「え?ジョマなの?」
「はい」と笑うジョマ。
そしてルルお母さんもリーンさんも真っ先にジョマの胸を見るとホッと一息つく。
プールや風呂場ではまず胸を見るのが貧乳軍団のルールになっている気がする。
「ふむ。一般的サイズで好感が持てるな」
「そうだね。ジョマともっと仲良くなれる気がしてきたよ」
ルルお母さんもリーンさんも嬉しそうに言う。
「ルルお母さん、リーンさん、このジョマの姿は日本で過ごす時の東道子さんの姿だよ」
「おお、そう言えばツネツギが一目でジョマとわからないと申しておったな…千歳!?」
「あ!チトセちゃん!?おかしいよ!!」
普段どれだけ私の顔を見ていないかが伺える。
もう胸のサイズに気が付いている。
「ルルお母さん?リーンさん?」
「裏切り者!ついに欲求に負けて神如き力を行使したのか!」
「そんな!チトセちゃんはずっと仲間だと思っていたのに!」
…貧乳軍団が凄い言いようだ。
ちなみに貧乳軍団はマリーさんとマリーさんの娘さんのマナさんとマリナさんだ。同年代にも仲間が居ることが救いだ。
結局リンカさんたちは私を見捨ててあちら側の世界に行ってしまった。
**********
「違うよ。これはジョマがやったの」
「はい。千歳様の憧れが強すぎて仕方ないので願いを叶えてみました」
ジョマが嬉しそうにニコニコと私のかおを手で指して言う。
「くっ、私とて願いの強さなら負けないぞ!」
「私だってどれだけお祈りをしたか!」
握りこぶしを作って必死な顔のルルお母さんとリーンさん。
未来の事は分からないけど母と義理の母が一緒になって胸の話をするのは何だかなぁ。
「なります?」
「へ?」
「え?」
「あー、お2人はご存知ないですが一時期千歳様はコピーガーデンのちとせ様と同期した時には手足を成長させて一時的に身長差の違和感を誤魔化していたんですよ。
それだけ身体操作は簡単なんです」
「ならば千歳も…」
「やらないだけで出来ますよ」
「キョロも?」
「はい」
そう返事をしながら2人を豊胸してしまうジョマ。
アラフィフ2人は目を輝かせ…否、目を潤ませて両手で胸を持ち上げる。
「おおおぉぉぉ………。ジョマ!お前と言うやつは!」
「わぁぁぁぁぁぁ………夢みたい!夢じゃないよねチトセちゃん!?」
「あー、現実だよ。リアルだね」
私もこんなに必死なのかと2人を見ていて気付いてしまう。
「くっ、惜しむべくはもう若くない事だ」
「うん。私もキョロに見せてあげたいけどもうおばさんなんだよね」
「なります?」
「へ?」
「え?」
その声で若返るルルお母さんとリーンさん。
いくらストレス溜まっていてアレコレしたいとは言えやりすぎだ。
「ジョマ!ダメだって」
「一時的ですよ。全部戻します」
ジョマはアートのモヤモヤを吹き飛ばすように言う。
そう言われている間の2人はどんどんと若返っていく。
「はい。出来ましたよ。千歳様と同じ24歳です」
私の前に現れたルルお母さんとリーンさんは24歳のナイスバディ。
それだけでも十分なのにルルお母さん綺麗すぎないか?
昔も思ったがなんでお父さんなんかと結婚したんだ?
リーンさんは愛らしい顔つきだ。これでナイスバディは犯罪に近い気がする。
「ジョマ、鏡を…鏡を見せてくれ!」
「私も!私も鏡を見たい!」
2人はお風呂場に用意された姿見を見ながら打ち震えている。
「くっ、千歳よ。あとでこの姿を写真にしてくれ!ツネツギに見せてやりたい!」
「裸なのに?」
「構わん!」
ええぇぇぇ…頭おかしくなってない?
「チトセちゃん!私も!キョロと見るの!」
「ええぇぇぇ」
ちょっと待て、ヤバいって。コンプレックスをこじらせるとこんな風になっちゃうの?
「見せます?」
「へ?」
「え?」
その瞬間2人の姿が消える。
とてもとても、それはとっても嫌な予感がして神如き力で追うとセカンドやファーストのガーデンでジョマが常時確保してある複数あるホテルの中でシングルルームの部屋にルルお母さんとリーンさんはそれぞれ飛ばされた。
「ジョマ?やり過ぎだからね」
「そうですか?ルル様もリーン様も喜ばれてますよ?」
ジョマが悪びれずにシレッと言う。
結果をわかった上での意地悪だ。
何が意地悪かと言えばお父さんの立場で言えばルルお母さんが慎ましい体型でお母さんはけしからん体型。
言い方はアレだがお父さんはカレーで言えば辛口と甘口を同時に味わえる立場なのだ。
それは王様も同じ事で、究極美魔女のジチさんとフィルさんがいる中でリーンさんまでけしからん体型になる必要が無いと言うかむしろなら無い方がバリエーション豊かなのだ。
だから簡単に言えばお父さんも王様も喜ばない。
それはルルお母さんとリーンさんをガッカリさせる程に喜ばない。
私はそう思っている。
そんな間にもジョマは日本からお父さんを呼びつける。
お父さんはお風呂に入っていたのか裸だ。
アラフィフ父親の裸なんて見たくない。
「セカンド!?なんだなんだ!?ルル!?」
「ツネツギ!ジョマが呼んだのだな!」
お父さんは部屋を見ただけですぐにセカンドだと気付くのが仕事人で立派だなと思った。
そしてルルお母さんに気づくとすぐに「お前、若返ってんのか?何があったんだ?」と言う。
「私もよくわからない。千歳と道子状態と言われたジョマが風呂に入っている所に呼ばれたのだ。そしてそのままここだ」
「なんだそりゃ…ジョマの悪ふざけか?あー…違うか、ジョマの奴は京子の事でストレス溜まってんな、だからってなんで素っ裸な俺とルルをこんな部屋に放り込む?」
「まあとりあえずどうだツネツギ?」
若いルルお母さんは真っ赤だ。
**********
「どうってルルはいつだって綺麗だろ?そりゃあ昔のルルが見られて俺は嬉しいぞ」
「そうか、そうであろう。だが違う。そうではない」
ルルお母さんが怒り口調でお父さんに詰め寄る。
「…お前、俺があえてスルーしたのを察しろって…」
「何!?そこは凄いと喜ぶ所ではないのか?」
あ…ダメなやつだ。
私はジョマの顔を見て「もうやめてあげて」と言う。
「ここからが見せ場じゃないですか?」と不服そうなジョマが笑う。
「じゃあ時間を止めて、今度はリーン様を見ましょう」
リーンさんも別のシングルルームにやられていてそこに王様が呼び出される。
「くっ、僕を強制移動させる?誰だ!?」
王様はお怒りで辺りを見渡すとリーンさんに気付く。
「キョロ」
「リーン?ジョマからリーンを借りるねと言われたんだけど何をしてるの?」
王様は驚いた顔で布団の上に座る裸のリーンさんを見ている。
「ほら見て」
そう言ってリーンさんは王様に胸を見せる。
正直恥ずかしくて見ていられない。
「ジョマの仕業?」
「ジョマがやってくれたんだよ。折角だからキョロも年齢制御で24歳になって?」
リーンさんの甘える声と顔。
本当に恥ずかしくて見てられない。
「…アートの事を面倒みてたんだけどなぁ」
「向こうのキョロや神々が一緒でしょ?」
王様は仕方ないと言いながら見た目を若返らせる。
リーンさんがそれを嬉しそうに見ている。
「キョロどう?って返事は「リーンが嬉しければ1番さ」だよね。私が理由を聞いても「リーンがフィルさんやジチさんを意識してなりたかった姿なら僕は歓迎するけどリーンらしさが無くなっちゃうかな」だよね?」
「当たりだよ」
リーンさんはエスパーかよってくらい先読みをする。
王様の事が好きすぎてずっと一緒に居た結果本当に最強の理解者だ。
「今はジョマとチトセが見てるからここまでにしよう。今のリーンは登録したから今度2人の時にその姿で過ごそうか?」
「約束だからね」
「ああ、約束だ」
王様はリーンさんにキスをすると「ジョマ、もういいだろ?」と言う。
ジョマは成る程と言ってリーンさん達の時間を止めて今度はお父さんを24歳にして時間を動かす。
…ジョマのなるほどは年齢制御をして若返らせたお父さんをぶつければ万事解決と思ったのね。
「喜ぶって言うか…」
「ツネツギ!?」
「あ?どうした?」
「お前も若返っておる!」
「なにぃ!?ジョマか?」
そう言って若返ったお父さんはまあ格好悪くはない。
だが裸は見たくない。
「どうだ?何か言うことはないか?」
「…ったく、ルルはただでさえ綺麗なのに胸までデカくなったら俺は1発でノックアウトだよ」
お父さんが降参した顔で照れながら言うとルルお母さんの顔はパァっと明るくなる。
本当に嬉しそうで、お父さんの事が好きでたまらないと言うのがよく分かる。
「そうだろう?そうであろう?今度千歳に頼んでこの姿にして貰うからファーストを案内せよ」
「あれか?千歳達がやったお姫様か?いいぜ」
「よし!言ったなツネツギ!財布の紐は緩めておけよ!」
「ひぇっ」
出費大っ嫌いのケチツギの顔で困った声を出すがお父さんは満更ではなさそうだ。
「そう言えばジョマが千歳も豊胸をしてだな」
「なに!?」
お父さん達がそんな事を話している間にジョマは満足そうに私を見る。
ドヤ顔だ。
「まったく、装飾神様は気が済んだ?」
「ふふふ、まだです」
道子からジョマになったジョマが怪しく微笑んだ。
「え?」
その瞬間、私はルルお母さんともリーンさんとも別のシングルルームに居た。
やられた。
でもさせない。
「神如き力!」
「だめ、千歳様の真似、神如き力キャンセラー」
ジョマが私の力を抑え込んできた。
ここまでするか?
まあ神如き力キャンセラーはそもそも私の技だ。
解除策くらい用意してある。
「あらあら、千歳様ってまた強くなられたんですね。本気の一歩前まで力を出さないと抑え込めないなんて。ふふふ」
ジョマが私の成長を喜ぶように言うが嘘だ。多分良くて二歩前までだ。
そしてジョマはそこにとんでもない事をしてくる…と言うかここまでくると想定内で案の定ビリンさんが現れる。
「なんだぁ!?」
「いらっしゃい」
ここで隠し球のキャンセラーキャンセラーを出す訳にもいかないので諦めた私はベッドで布団に包まれながらビリンさんを迎える。
**********
「チトセ?裸?なんで?」
「ジョマだよ」
そこで私はアートのやらかしからジョマを元気付ける為にお風呂に誘った事、スタイルの話から豊胸になってルルお母さんとリーンさんも豊胸されてそれぞれ私と同じく別々のシングルルームに飛ばされてお父さんと王様を呼び出された話をする。
「うわぁ…そこまでするか?」
「アートの事がショックだったのよ」
ビリンさんが引き気味に驚く。
「母さんが24歳にされて素っ裸で父さんと同じ部屋にいるとか、聞きたくないなぁ」
「私だってルルお母さんとお父さんの裸ツーショットなんて見たくなかったよ」
2人して顔を見合わせてため息をつく。
「で?どう?」
「どうってこの前アートに聞かれて答えたけどどっちも似合ってるからチトセの好きな方でいいぞ?」
ビリンさんはマジマジとは見ないで答えてくれる。
一応彼女の立場としてはありがたいがまあここまで来たら折角のお胸様なので感想を求めてしまう。
「まあ想定内の答えだね」
「だってなあ…似合うのはどちらも本当だし、大きい方が良いと言っても良くないと言ってもチトセは面白くないだろ?」
「むぅ、ビリンさんのくせに」
「まあ、簡単になれるのなら今度2人でプールに行く日にその姿で居てくれるか?そうしたら周りを気にせずにゆったりと遊べるだろ?」
まあ確かに他の女性を見たりビリンさんが目移りしていないか考えてしまって私は落ち着かない。
私は「おっけー」と返事をする。
「んで、これはどうしたら終わりなんだ?」
「ん?多分、先に切り上げたルルお母さんとリーンさんがこれを見てるからもう終わりじゃない?」
「成る程。そういえばただ戻すんじゃなくて自然に元が0で…」
「ゼロ?」
そこまでない訳ではないだろう?
「意味が違うからな。元が0で今が100なら戻す時は0じゃなくて自然な10くらいにしておけば?そうしたら皆幸せじゃないか?」
「あー、それいいかもね。ジョマ湯冷めするから帰してよ。またねビリンさん」
「おう、またな」
その声でお風呂場に戻される。
お風呂ではジョマの横で帰ってきたルルお母さんとリーンさんが夢見心地な顔でお風呂に浸かっていた。
「人の目が気にならないお風呂ってサイコーだねルル」
「まったくだなリーンよ」
最愛の人に夢だった若い姿の巨乳姿を披露できた2人が嬉しそうに話している。
「お帰りなさい千歳様」
「まったく、気は済んだ?」
「はい」
「じゃあ元に戻して」
このままは良くないと思って言うと夢見心地だった2人が過敏に反応をする。
「何っ!?もう元に戻すのか!?」
「チトセちゃんの鬼!」
物凄い剣幕で仕方ないのでビリンさんの案を伝える。
「何?一割増し?」
「え?ほんの少しだけ大きくしてくれるの?」
「今うんって言わないと元に戻すかマイナスにするよ」
まあマイナスってどうなっちゃうんだろう…とは思う。
「よし!手を打とう」
「私も!」
じゃあそう言う事でと体型を戻そうとした時にルルお母さんが真剣な顔で私を見る。
「千歳よ、一つ大事な事がある」
「何?」
「マリーにはまだ言うなよな」
「あ!それ大事だね!私もそう思うよ!」
見せびらかしたいんかい。
まあ、いいけど。
だがこの先の展開も読める。
マリーさんが間違いなくマリオンさん経由かペックお爺さんからのドフお爺さん経由で私を呼びつける。
そうなればマナさんとマリナさんも来るだろう。
…当分疲れそうだな。
私は呆れながら力を使うといつもの慎ましいサイズよりほんの少しだけ大きくなる。
「おぉぉぉ…これでも嬉しいぞ千歳!」
「本当だよねルル!肩凝っちゃたらどうしようか?」
平和だなー。
キャッキャウフフと胸の話で盛り上がるルルお母さん達を眺めながら温まったら帰ろうと思っていると神妙な顔のジョマがこっちにくる。
「あの、千歳様?」
「なにジョマ、ダメだった?」
「いえ、このくらいならいくらでもやって貰って構いませんけど1つだけお伝えしたい事が…」
そのジョマの真剣な表情に私は何事かと思う。
「何?」
「千歳様って体型で悩まれていますけどルル様達に気を使って無意識に神如き力で成長を止めてますからね?」
「は?」
え?なんて言ったの?言葉がうまく耳に入ってこないよ?
「ですから、14歳の千歳様がルル様達とエテに泊まられた時にルル様から裏切らないように釘を刺されたじゃないですか。あの事があるから千歳様はルル様の為に無意識に胸の成長を止めているんですよ?
一応言いますとコピーガーデンのちとせ様なんて千歳様が同期をやめれば半年もすれば千明様みたいになりますからね?」
「……な……え?…なんですと?」
「さっきの千歳様はルル様達に遠慮しなかった時の千歳様ですよ?別に私は千歳様を豊胸なんてしてません」
「…」
言葉に困って私は黙ってしまう。
ジョマはハッキリと「してません」と言う。
「…え……と…」
「してません」
それが聞こえていたのだろう。
ルルお母さんとリーンさんが申し訳なさそうに私を見る。
その私は身体が震えてしまう。
「…うそ…だよね?」
「いいえ、嘘はつきません。千歳様も千明様と同じ風になります」
…
……
………
「何いいィィィ!?」
「そこまで気にされていたからいつか神如き力で体型を変えるかと思って黙っていましたが一向に変えないので、今日思い切りました」
とりあえずその後の話し合いで私は4日で1%元に戻るようにした。
一年と少しあれば周りも気付かないだろうし遅れて成長したと言い切れる。
ジョマが冗談交じりに「100日にしませんか?100日で巨乳になる千歳ちゃんとか流行る気が…」とふざけ出したので却下した。
その後、帰宅してお母さんに事の経緯を報告したら遠い目で「今までよく頑張ったわね。偉いわ」と言われていたたまれなくなった。
ビリンさんはリーンさんから聞いたのだろう。
夜中なのに会いに来てくれて「まあ色々思う所はあると思うが良かったなチトセ」と言ってくれた。