第六話 話し合い
治療師の婆さんによって部屋から追い出された二人は、特に何か話す訳でも何かする訳でも無く黙って机を挟み椅子に座って向き合っていた。
「そういえば、話を聞いていなかったな。」
「まず、嬢ちゃん。」
「君は誰だ?」
「何て名前だ?」
「どうやってうちの弟子と遭った?」
「あの状態になった理由は?」
師匠はそうやって一気に問いかけた。少女はしばらく黙り込んでいたが、何かを思い出したのか勢いよく話し始めた。
「あの!!!私は怪しい者ではありません。」
「こちらの方に事前に手紙が届いていたと思いますが、それはどうなっているのでしょうか。」
「手紙?」
「ちょっと待ってろ。」
師匠はどこかに消えていった。
暫くして戻ってくると、両手一杯に手紙を抱えていた。師匠はそれらの手紙を机の上にドサッと置いた。
そのほとんどは開封されておらず、封をされたままの状態だ。
「すまん。」
「送り主は誰だ?」
「ドワーフ族のオーガスト様です。」
「私達の長老を長年担っておられます。」
「オーガスト…。」
「オーガストか。」
「懐かしい名だ。」
暫く師匠は名前を繰り返していたが、不意に望郷から戻ると沢山ある手紙の名前を一つづつ確認しながら目的の手紙を探していく。その様子を見るに見かねたのか
「あ、手伝います。」
少女も目の前にある手紙から順々に名前を確認していく。二人で暫く探していると少女がそれらしき手紙を発見した。
「あった!!」
少女はそう叫んだ。
「どうぞ。」
すぐにその手紙は師匠へと渡る。
「ああ、ありがとう。」
感謝を言いながら師匠は手紙を受け取ったが、すぐにその顔が曇った。
「魔力印か…。」
「対象は俺だな、まあ当然か。でもちょっと面倒だな。」
手紙の封の部分には複雑な紋章が刻まれていた。手紙を書く人と受け取る人の魔力を照合する事により、開封する事が出来る魔力印と呼ばれる封の方法だ。げんなりとした顔を師匠は暫くしていたが、どうしようもないと気が付いたのか気合と根性で魔力を指先に集めて魔力印の解除を目指して行く。
「あ、…。」
「すみません。」
その様子を見て何かに気が付いたのか、少女は謝罪するが集中を続ける師匠には一切聞こえていない。暫くの集中の末に十分な魔力が指先に集め終わると、指先を魔力印に擦り付ける。指先に込められた魔力は解除に対して不足していたようで上手く認証されなかったが、師匠は少し指を離してもう一回魔力を籠め直す。そうして、ようやく魔力印は解除された。師匠は素早く手紙を開いていく。