第四話 看病
家に戻ると少年は布団の上に倒れ込んだ。額には痛みによる冷や汗が流れ明らかに体調が悪そうに見える。
「おい、大丈夫か?」
「…。腕めくるぞ。」
師匠は少年の服の腕を慎重にまくって状態を確認する。痛みが極力に無いように師匠はゆっくりと少年の腕をまくる。右腕の痣の色は紫がかったおり、素人目にも相当痛そうに見える。
師匠はゆっくりと腕の痣を触り状態を確認する。
「ああ、これはまずいな。」
「やせ我慢のしすぎだ。」
「もしかしたら骨が折れてるかも。」
「治療師の婆さん呼ばないと。」
「嬢ちゃんは…。」
「大丈夫か?」
「ええ、特に痛みもありません。」
「大丈夫です。」
「それじゃあ嬢ちゃんはここで看病を頼む。俺はちょっと村まで走って婆さん呼んで来る。」
そう言って師匠は着替えもせずに大急ぎで家を飛び出していった。家に残された二人にとっては余り心地よくない時間が流れる。
「ええっと、その…。」
「何でもありません。」
「…。」
少女にとってもは何を話せば良いのか分からない。少女は何かできないかと少年の腕に手を伸ばしたが痛そうな様子に気が引けてすぐに引っ込めた。
「あ、ええと、何かいりますか?」
「あの?」
少年に答える余力は無かった。
「こういう時どうすれば。」
少女は暫く悩んでいたが何か思いついたのか家の中を歩き回る。家は比較的狭く少女の目的のものはすぐに見つかった。少女は家の外にあった井戸からくみ出した水を物置らしき場所で見つけた金属製のバケツに入れた後、台所で見つけた布巾をバケツに付けて少年の部屋に運び込んだ。
少女は力強く布巾の水を絞る。
「濡れ布巾いります?」
返答がなかったので、少女は静かに少年のおでこに布巾を乗せた。
「他には…。」
「あ、食事とかもあった方がいいですかね。」
少女は台所にあった米と卵を使わせてもらい暫くの格闘の末に雑炊らしきものを少年と自分の分の二つ分作成した。
「あの、食事作ったので口開けてください。」
声は聞こえているのか、少年は微かに口を開ける。その隙間に少女は台所で見つけた木製のスプーンを突っ込んだ。少年は少しむせたが問題なく雑炊を食べきる事が出来た。
「ふぅ。」
「それじゃあ片付けますね。」
「戻ったぞ!!」
そうこうしていると、師匠が治療師の婆さんを連れて戻ってきた。家の中でも聞こえるような大声で外から叫んでいるようだ。