第7話 林間学校
無事年内にあげることができました。今回は、学校行事がテーマです。
葵のお見舞いから数日が経ち今日は、どうなるのか…。
葵の墓参りに行って数日が経つ。海斗、美雨、あすか、春人の3人は、いつも通りの生活を送っている。放課後、海斗は、いつものように春人や部活の仲間達とバスケ部の練習に励んでいた。
「海斗、パス‼︎ 」
春人からパスされたボールを海斗は、コート目掛けてシュートする。ボールが入り部員達が歓喜する。ギャラリーから観てる女子からも歓喜の声が上がる。
時間が来て今日の練習は、終わり今日は非常に有意義なものになった。
放課後の帰り道のことだった。今日は、美雨は家のことがあるらしく先に帰っており春人と二人で帰っていた。
「海斗、最近、調子良さそうじゃん」
「そうか? 」
理由があるとするなら葵のお見舞いに行ったりまたバスケ部でバスケをやり始めたからかもしれない。
2学年は、もうすぐ林間学校があり、次の日の放課後のHRは、林間学校のしおり作り担当を決める話し合いをしていた。
「「……」」
かれこれ決めることになってから30分が経つ。誰も自分から立候補する人がいない。学級委員のあすかもかなりの困り気味の様子だった。
そんな時、担任の先生が椅子から立ち上がった。
「じゃあ、全然出るやついないからクジで決めるぞー」
クラスメート全員が皆、クジを引いていく中海斗もクジを引き中を開ける。クジの中には、「アタリ」と赤い文字で書かれていた。
「引いた奴、前に来ーい」
先生に言われ、教壇の前にくる海斗。しおり作りは、男子一人、女子一人の二人、あとは女子だ。
((あ…))
美雨が片手に開いたクジを持って教壇の前、俺の隣にいる。女子のしおり作り担当は、美雨だった。
放課後、部活に顔を出した海斗は春人や3年の先輩達と自分がしおり作りに決まったことを話していた。
「まさか、お前が林間学校のしおり作り担当になるとはね」
「あれ、かなり大変だぞ。全日程入れなきゃだし」
3年生達も経験談を語る。
「決まった以上は、全力でやります。俺、これから桜葉さんのとこ行ってくるよ。教室にいるからさ。それと今日は、もう部活戻って来ないかもしれないです」
春人と先輩達に話をつけた海斗は、体育館を後にして美雨のいるであろう教室に向かった。
「これは、こうすると…。あ、でもこのページが…。うーん…」
「桜葉さん」
「あ、海斗さん。一人じゃ無理です〜。助けてください」
教室を覗いて見ると案の定、美雨は机にかじりつきながら苦戦している様子だった。
「まだ時間あるんだし。俺も出来る限りは、手伝うから」
「とりあえず今日は、こんな感じでしょうか」
「うん。少しはまとまったかな」
二人で協力し合い進めること1時間ぐらいが経った。今日は、なんとか日程のページをまとめたところでお開きになった。
「じゃあ、お疲れ様」
週末、海斗と美雨の二人は美雨の家で林間学校のしおり作りをすることになった。だが海斗は、家の前で立ち尽くしていた。
「結構大きい家だなぁ…」
(美雨の家は、お金持ちで大豪邸だとあすかから聞いてはいたがまさかこれほどとは…)
「そうでしょうか? これくらい普通だと思いますが」
(いや…。桜葉さん、一般の人から見たら普通じゃないよ)
「浅倉、海斗さんが来ました」
インターホンのボタンを押すと画面に浅倉が出てきて美雨に門を開けてもらい二人は、美雨の家に入った。
「お邪魔します」
「お帰りなさいませお嬢様。七瀬様お久しぶりでございます」
「こんにちは」
玄関に入ると中は以下にもドラマで出てきそうな感じの綺麗な家で天井には、シャンデリアがあり浅倉さんが出迎えてくれた。
「浅倉。私、自分のお部屋で海斗さんと林間学校のしおり作りをしますので」
「かしこまりました」
(すごい綺麗な部屋だ)
海斗は、美雨に着いて行き階段を上がり部屋に案内され部屋に入った。海斗は、キョロキョロと周りを見渡した。内装は、高級感があり周りには、いかにも高そうな感じのタンスやお嬢様が使いそうな感じの高級なベッドが置かれていた。
「何をぼんやりしてるんですか? 始めましょう」
「え? あ、ごめん。始めようか」
こうして海斗と美雨は、二人で林間学校のしおり作りに取り掛かった。
「この内容は、ここまででまとめよう。あとは俺がこの隙間に絵を描いておくから」
「なるほど。海斗さん、流石です!」
「ありがとう」
「はあ。だいぶまとまりましたね」
「うん。俺、そろそろ帰るよ」
時計を見ると時計は6時をまわっており窓から外を見ると夜になってしまっていた。荷物をまとめて部屋を出る海斗を美雨は、玄関まで見送る。途中二人は、廊下で浅倉さんとすれ違った。
「七瀬様、お帰りになられるのですか? 」
「はい。今日は、もう遅いので」
「そうでございますか…。よろしかったらご一緒にご夕食をいかがでしょうか? 七瀬様のご夕食もご用意してしまったのですが」
「あ! そうですよ。ご一緒にしましょう」
「いや…流石にそれはちょっと迷惑じゃ…」
「そうですか…」
しょぼんとして上目遣いで海斗を見つめる美雨。
「うーん…。用意してくれたのに帰るのも悪いしご一緒させてもらおうかな」
ついに海斗は美雨の上目遣いに負けてしまい美雨の家で夕飯を共にするのだった。
(なんか、凄いなぁ…。美雨、いつもこんな広い場所で食べているのか)
美雨の家の大広間に移動し大きいテーブルに美雨が中央に海斗が美雨の右隣に座った。座った後も海斗は、周りをキョロキョロ見回していた。
浅倉が夕食を二人の席に置き、「いただきます」の手合わせをして二人は、夕食を頂く。夕食は、魚料理だった。
(このお魚、うまっ‼︎ 今までこんなの食べたことないぞ⁈ )
海斗は、料理を口に入れた瞬間に驚きを隠せなかった。
「海斗さん、もしかしてお口にあいませんか? 」
「いや、すごく美味しくてスーパーでこんなの食べたことなかったし、」
「七瀬様、痛み入ります。ところで今夜は、泊まって行かれるのですか? 」
「えと…」
「はい! 林間学校の打ち合わせもありますし」
(はい⁈ 話が違いますけど⁈ 流石に同い年の家でご飯を頂いた上に泊まるなんて…)
「いや、それはちょっと…」
「そうでございましたか。なら、お客様のお布団をご用意しなければ」
浅倉の様子を見て海斗は、仕方ないと思い諦めることにした。
お互い夕食を済ませた後、お互いに入浴を済ませた後は再びしおり作りに取り掛かった。
「2日目の日程は、ここまでにしよう。あとは、俺がこの辺に絵を描いておくよ」
「すごいです‼︎ 海斗さん! これで来週中には、完成しそうですね」
「うん」
しおり作りは、思いのほかかなり捗り人数分の印刷も含めて来週中には完成するまでになった。
「そろそろ寝ようか」
「そうですね。日も変わろうとしてますし」
時計を見ると日が変わろうとしており今日は、この辺で終わりになった。
「海斗さん、おやすみなさい」
「おやすみ。桜葉さん」
お互いに電気を消して布団に向かう。ちなみに美雨の部屋で美雨は自分のベッド、海斗は床に布団を敷いて寝ることになった。
「……」
(だめだ‼︎ 寝れない‼︎ 全然。他人の家に泊まるとか滅多にないしそれにましてや同年代の女の子の家)
「海斗さん、寝れないんですか? 」
「え? あ、ごめん」
「いいですよ。ちょっと昔の話をしましょう」
「昔の話? 」
「はい。私の初恋の話です」
(桜葉さんの初恋? )
海斗は、気になり黙って聞いてみることにした。
「あれは、私が小さい頃のことです。お父様とお散歩をしてた時のことです」
『お父様、遊んでもいいでしょうか?』
『構わないよ。今日は、習い事もないからな』
「私が、公園に向かうとそこに一人でボール遊びをしている子がいました」
『ねぇ、一人でボール遊びしてるの? 』
『うん、そうだよ』
『私も一緒にやってもいい? 』
『いいよ、一緒に遊ぼう』
「それからは、お父様とお散歩に行くたびに公園に彼がいたら必ずよく彼とボール遊びをするようになりました」
「けどある日、その子は公園に全く来なくなってしまって、私は初めてその時、彼が好きなんだと自覚しました」
「その子の名前とか覚えてないの? 」
「はい、全く。けど大丈夫です。もう……好きな人は近くにいますし」
「え? 誰? 」
「むぅ。鈍いのですね。海斗さん」
美雨が何を言ったのかわからなく、そのまま二人は眠りについた。
数日後、無事に全員への配布も含めてしおりも完成し林間学校の日がやってきた。
行き先である宿舎行きのバスに乗っていた。美雨は、あすかの隣の席に座り二人で会話していた。
「私、林間学校とかは、始めてなので楽しみです」
「へぇ、そうなんだ。前の学校ではそういうのはなかったの? 」
「そういうのは無くて、勉強合宿くらいならあったんですが」
学年全員が期待と不安を抱く中、バスが出発し出した。
バスが、宿舎前に到着するとまずは学年で各クラスごとに班で並び集合写真を撮った。ちなみに海斗は、あすか、春人、美雨と一緒の班だ。
集合写真を撮り終えいよいよウォークラリーが始まった。チェックポイントをどんどん海斗達は、通過していく。途中、森の中に入り流れがあまり激しくない川に遭遇した。
「流れが激しくないし、大して深くない。みんな、ここを渡ろう」
班長の春人が岩に足場があるか確認してから春人を先頭に川を渡る。春人の次にあすか、海斗の順で渡っていく。最後は、美雨だけだ。
「美雨ちゃん、気をつけてね」
「怖い…無理です。」
美雨は、恐る恐るゆっくりと岩場を渡る。だが途中、美雨は、尻込みしてしまった。
(やばいな…こりゃ)
「桜葉さん、捕まって」
観ていて海斗は、マズイと思いあすかの前を通り、岩場の上を歩き美雨のいる岩場の一個前まで来て彼女に手を伸ばした。
「海斗さん…」
辛そうで不安そうな様子の美雨。
「ゆっくりでいいから、大丈夫だから、ほら」
美雨は、海斗の手を強く握る。二人は、共に立ち上がった。それからは美雨と海斗、交互にゆっくりと歩いて春人たちがいる方に向かう。
(ひゃっ‼︎ )
途中、美雨は岩場で足を滑らせ川に落ちそうになった。川に落ちそうになる彼女の手を、海斗は反射的に掴み自分の方に引き寄せた。
「ハァ…大丈夫? 」
「はい、ごめんなさい。海斗さん」
その後、二人は春人たちがいる方に辿り着き再び移動を再開した。しかしトラブルが起きた。
「ッ…⁈ 」
「桜葉さん、どうしたの⁈ 」
「足が…痛い」
どうやら美雨の足に激痛が走ったらしくさっき岩場を渡る時に足を挫いたのだろう。
「大丈夫? どの辺? 」
海斗は、すぐさま彼女の脛を触り手探りで確認する。
「痛い…‼︎ そこ」
「春人、少し休もう」
どうやら足首をやったらしい。海斗は、美雨の足首にタオルを巻き付け応急措置をとった。これ以上の移動は、桜葉さんの脚に負担をかけることになると思った海斗は、春人に休憩を提案した。
森の中で休憩する4人…。
「ごめんね、桜葉さん。俺のせいで」
しばらくして春人は、美雨に謝った。班長として責任を感じているみたいだった。
「春人さんのせいじゃないです」
「そうだよ。みんな賛成して渡ったんだ。春人のせいじゃない」
30分くらい経ち、美雨も足の痛みがさっきより引いたらしく移動を再開した。移動の際、美雨はあすかの肩を借りて歩き出した。結局、ウォークラリーは海斗達の班はビリになってしまった。
夜、各班ごとに飯盒炊爨。今夜の夕飯はカレーだ。春人と海斗がご飯を、美雨とあすかがカレー作りを担当した。
ご飯の火加減を二人で見ている時、調理場で上手く野菜が切れずに悩んでる美雨を海斗は、見かけ声をかけた。
「桜葉さん、足はもう大丈夫なの? 」
「はい。先生に観て貰ったんですが大したことはないと」
「よかった。手伝おうか? 」
「あ、ありがとうございます」
「貸して」
どうやら美雨は、野菜の皮を剥くのに苦戦していたみたいで海斗は、美雨からジャガイモとナイフを受け取り皮を剥いた。
「海斗さん、すごいです。」
美雨は、隣で海斗が慣れた手つきでジャガイモの皮を剥いていくのを観て感心しているようだった。
「こんなの大したことないよw」
「でも、すごいです。海斗さん」
それからカレーが、出来上がり各班ごといただきますをした。四人で食べるカレーは、格別だった。
夜、宿舎内で海斗は、廊下を歩いていると違うクラスのバスケ部の男子達が海斗の方に来た。
「なぁ、海斗って桜葉のこと好きって本当か? 」
「はぁ? 何、それ」
「男子の中で噂になってるぜ? 夕飯の時もいい感じだったし。驚いたわ、俺。 海斗ってもっと派手な女子が好みかと思ったのになー」
海斗は、驚いていた。まさかそんな噂が、流れているとは思わなかったから。
「実際どうなんだよ? 」
「は…はぁ? んなわけねぇだろ⁈ ばーか‼︎ 」
バスケ部の仲間に質問され海斗は、照れ隠しで思わず酷いことを言ってしまった。
(あっ…)
しかもタイミングが悪く偶然、廊下を通りかかった美雨にそれを聞かれてしまったのだ。
(え? 私、フラれたの? 終わっちゃった? 私の初恋)
美雨は、しゅんとしてしまいその場から黙って立ち去る。
夕飯を終えた後は、肝試しだ。男女が、ペアになって夜の森の中の決められたルートを歩き宿舎までたどり着くというものだ。途中、怖い仕掛け等がある。ペアの相手は、クジ引きで同じ番号の人と組む。
海斗もクジを引く。引いたクジの番号は、『25』。
同じ番号の人を海斗は、探しようやく見つけるがペアの相手は、美雨だった。
「「あっ…」」
「桜葉さんも『25』? 」
「はい」
それから二人は、ペアになり森の中を歩く。だがさっきのことがあったからかお互いに何も喋らないままだった。
「えと…この道であってるよな? 」
「はい…」
美雨は、暗いとこが怖いからなのかずっと海斗の手を握りしめていた。
(どうしよう…。何か気まずい)
二人が歩き続けていると林の中からあすかが出てきて二人を驚かせた。あすかは、唇に血糊を垂らしていかにも不気味な格好をしていた。
「わぁ‼︎ 」
海斗は、驚き美雨も海斗の背中に思わずくっついてしまった。
「海斗さん、早く行きましょう」
美雨は、海斗の袖を掴み海斗と一緒に一目散に逃げ去る。
「ハァ。かなりすごかったな…」
「今のってあすかちゃん? 」
「だよな。その、もしかして桜葉さんってお化け怖い? 」
「はい…。ホラー映画とか苦手で」
それから美雨は、ずっと海斗の背中にくっついたままだった。二人で無事宿舎につき、肝試しは終わった。
次の日、海斗は朝早く起きて一人宿舎を出て朝日を眺めていた。そこに丁度、美雨もいた。
「あ、桜葉さん」
「海斗さん…おはようございます 」
「おはよう」
「昨日は、とても楽しかったな」
「はい、ウォークラリーはビリでしたけど」
「それも、いい思い出じゃん」
「いろいろありがとうな、桜葉さん」
「はい? 」
「去年の夏、葵が死んでから…ずっと俺の時間は止まったままだった。桜葉さんがいなかったら俺、葵のこと引きずったままずっと前に進めないままだったし、バスケ部の仲間ともちゃんと向き合えないままだった。桜葉さんのおかげで前に進めた。
二人でテスト勉強した時もしおり作りも桜葉さんとして楽しかった。桜葉さん、俺…」
「海斗さん? 何をおっしゃりたいのかわからないのですが…」
美雨には、海斗が何を言いたいのかわからなかった。
「だから…その…、俺…。あぁ! もう…」
「俺……桜葉さんのことが好きです」
海斗は、素直な気持ちを美雨に伝えた。
(え…? 今、好きって言った? 嘘…だよね? だって昨日、そんなじゃないって言ったよね? )
美雨は、自分の耳を疑った。
(固まってる? そりゃそうか、めちゃくちゃ変なこと言ってるもんな、昨日の今日だし…。でも、ここで引き返しちゃダメだ)
海斗は、美雨の返事を待つ。
「海斗さん…わ、私でいいんですか? 」
「うん」
「私、案外怖がりですよ? 料理だって…あまり上手くできないですし、本当にいいんですか? 」
「桜葉さんがいい。桜葉さんじゃなきゃ嫌だ」
「桜葉さんは…俺のこと、好き? 」
「…好きです」
そう言った後に美雨は、
「海斗さんのことが、好きです」
そう言って海斗に優しく抱きつく美雨を、海斗は優しく抱きしめた。
「今日は、特別な日だな」
「はい」
二人の新たな恋の始まりを祝福するかのように優しく抱きしめ合う二人の姿が朝日を背景に美しく照らされた。
ついに結ばれた二人。これから二人を何が待ち受けているのか…。 告白シーン、上手く描けたでしょうか? 来週は、デート回です。お楽しみに
これが年内最後です。みなさんよいお年を。