《詩》紫の光
さび付いたビニール傘に
雨が当たる不規則で無機質な音
子供の頃は楽しくて仕方なかったのに
今では鬱陶しい水溜り
商店街はシャッターを下ろし
買い物客を拒絶する
雨から守ってくれるはずのアーケードは
破れ、ひしゃげて、汚れている
あたりに漂う
ショーウィンドウに忘れ去られた仏具のような空気
車道の反対側を
誰かが通り過ぎる
スマホをひたすらに見つめ
こちらに気付く素振りもない
微かに音漏れしたやけに楽しそうな音楽が
シャッターに反射して聞こえてくるだけ
道路のくぼみに写る暗澹たる雨天を
次から次へと壊す波紋
でも、私には分かる
これが空の本音じゃないことぐらい
晴れて生き物を楽しませたい
本当は、そう思ってる
神様に言われて、しぶしぶ雨を降らせているだけなんだ
だからこそ、紫陽花はこんなにも美しい
空のお詫びのしるしだから