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3.俺の鑑定書が適当なんだが?

 俺は、このままずっと離宮に閉じ込められるままの、惨めな運命なんだろうかと落胆していると、目の前のマルガとユリアンがお互いのスキルとステータスの鑑定書を交換して見比べていた。


「マルちゃんはステータス高いねぇ〜。それに装備適正は剣と槍と斧の三つが高いみたいだね〜。あと、理属性かぁ。僕もカッコいい風魔法とか使ってみたかったなぁ」


「えっと、ユリウスの装備適正は杖と弓が高いみたいね。何よっこれ!私よりも使える魔法が多いじゃないっ!良いなぁ。それに、他国で文官見習いなんて、大出世じゃないのよっ!!おめでとうっ!」


「えぇ〜。僕は学校とか孤児院を開きたかったから、ジョブは教師(ティーチャー)とかが良かったのに〜」


「私だって、こんな強くなりたくなかったもん。か弱い魔女(ウィッチ)とか可憐な杖使い(クレリック)とかになって白馬に乗った騎士(ナイト)様に守らるなんてっ!おとぎ話みたいで憧れちゃうわっ!」



「「はぁ」」


 二人は同時に深いため息を吐く。



 とても良いジョブを授かった、この二人には絶対に現れない未来だろう。マルガはどちらかと言うと、か弱い女の子を守る騎士(ナイト)だ。ユリウスだって孤児院や学校の先生になれば、教会が黙ってないだろう。大司教か文官になって国の政を担わなければならないだろう。


 そんな良いジョブをっ!!こっちは、なりたくてもなれないんだぞっ!と言ってやりたいが、こればかりはどうしようもないからな。


 自分がなりたい職業と、ジョブは決して一致するとは限らない。例えて言うなら、魔法使いになりたい戦士とか、戦士になりたい魔法使いとかだ。


 戦士でも、極々稀に魔法適正が目覚める者もいるが、魔法使いに比べたら微々たるものだ。その為、なれないこともないが、なったら、とても辛い人生になる事は明白だろう。それに、筋骨隆々の魔法使いや骨と皮しかない戦士なんて、何処にも需要はないだろう。


 二人の様に、国の重鎮クラスのジョブを授かってしまえば、国からの指示を無視する事も難しくなってくる。


 職業を勝手に決められてしまうのは、二人に同情しなくもないが、それにしても.....魔法が使えるジョブには、魔法の適性も書いてあるのかっ!!しかも、装備適正までもっ...!


 俺のは何もなかったぞっ!!



 .....まぁ、それもそうか。力が弱い盗賊(シーフ)は軽器しか使えない。軽器とはナイフの事だ。他の武器も使えない訳ではないが、他のジョブと同じ武器を使っていても、力の差が大きい為、軽器しか使わないのだ。



 しかも、軽器は魔法使いが魔力切れの際の最終手段としても使われる。魔法使いが持っている代表的な軽器は、虫系の魔物であるポイズンビーの毒針を武器にした「どくばり」が軽い為、力が弱くても使いやすい。しかも、この武器は運良くクリティカルが入れば即死の特殊効果もあるため、魔法使いの必須とも言える武器になっている。


 ジョブの中でも力の最も弱い魔法使いが使える.....という事は誰でも使えるのだ。



 かー!!羨ましいっ!!

 俺だって剣とか槍とか斧とかぶん回して戦いたかったぞっ!!


 もちろん、俺は鑑定書を二人に見せてない。


 もし、俺のステータスを二人に見せようものなら、マルガには「えっ?こんなにステータスが低いなんて.....それに、武器も魔法も使えないの?これは、何かの間違いよ!行くわよっ!」と再鑑定しようと教会に行き、再鑑定後にユリアンから「え〜?アルちゃん、なんで魔法使えないの??僕の沢山あるから一個あげるよ?」と本気で同情されて、二重で落ち込む事が目に見えてる。



 趣味が悪いが、少しだけ覗かせて貰うか。


 ーーーーーーーーーーーーーーー

 マルガ


 ※個人情報保護の為、家名がお有りの方々は伏せさせております。

 何卒、ご了承下さいませ。


<ジョブ>

 戦乙女(ヴァルキュリア)Lv1


 物理攻撃と魔法攻撃を駆使して戦う最強の女性専用ジョブ。上級ジョブである為、レベルが上がりにくいですが、修練を積めばとても強くなります。このジョブになる事が出来た貴女は、皆の憧れの的でしょう。


 神官長からのコメント

「素晴らしいっ!!貴女は我が国のイーリス王国中央騎士団や他国の騎士団でも一軍として、やっていけるでしょう!!進路の相談をしたいと思います。後日、自国や他国の一流騎士団のパンフレットや入団手続き申請に関する書類をお送りいたします。未来ある若者に祝福あれっ!!」


<ステータス>

 攻撃(アタック)62

 魔力(マジックアタック):65

 防御(ディフェンス):53

 魔防(マジックディフェンス):42

 敏捷(スピード):46

 幸運(ラック):30


 装備適性

「剣S槍S斧S弓A杖B」


 魔法適性

 (ことわり)属性魔法Lv1「S級」



<スキル>

「祈り」

 戦乙女(ヴァルキュリア)の固有スキルです。神への祈りを捧げる事で自己回復ができます。他のジョブで自己回復は出来ないので珍しい補助スキルです。このスキルが戦場での生死を分けると言えるでしょう。


「怒りの一撃」

 攻撃スキルです。このスキルは使用者の怒りを力に変えて一撃を放つ事が出来ます。その怒りの度合いが高ければ高い程、威力は強くなります。


「鉄壁の盾」

 防御スキルです。任意の者や場所に一定時間、無敵の盾を出す事が出来ます。味方や自分の守護にも使えますし、スキルの修練を積めば、大きな盾で敵の進路を塞ぐ事も可能です。



 ーーーーーーーーーーーーーー


 ユリウス


<ジョブ>

 大聖人(アークセイント)


 このジョブは回復魔法から補助魔法、浄化魔法を一人でこなすことが出来る。さらに幸運が高く奇跡の一撃が多発する。上級ジョブである為、レベルが上がりにくいですが、修練を積めばとても強くなります。


 神官長からの一言

「貴方には、この国を離れて大司教候補として勉強して頂きます。聖ベルナ帝国の聖都ユギルマにある大聖堂マイナルにて試験があります。大聖堂で迷える民達を救いなさい。そして、試験に合格した大司教候補は大神殿ルーネアにて、皇帝で巫女であらせられるセイミア様の文官見習いとして働くこととなっています。そして忠告です。少し神からの加護(ギフト)が良いからと慢心しない事です。貴方が帝国で粗相をすれば我が国に火の粉が降りかかる事を肝に銘じなさい」


<ステータス>

 攻撃(アタック):41

 魔力(マジックアタック):68

 防御(ディフェンス):45

 魔防(マジックディフェンス):75

 敏捷(スピード):42

 幸運(ラック):∞


 装備適性

「剣A槍A斧A弓S杖S」


 魔法適正

 回復魔法Lv1「S級」

 補助魔法Lv1「S級」

 浄化魔法Lv1「S級」

 光属性魔法Lv1「S級」


<スキル>

「神秘の守り」

 このスキルは大聖人の固有スキルでパッシブスキルです。あらゆる状態異常から、その身を守ってくれます。沈黙(サイレス)状態にならないのは、回復ジョブとして最強と言えるでしょう。


「白の波動」

 補助スキルです。発動中は、近くにいる味方の防御と魔防を高め、自然治癒力も高める。


「魔力倉庫」

 希少(レア)補助スキルです。自分にだけが取り出せる倉庫を作るスキルです。容量は魔力量によって異なります。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 なんだ....と。

 神官長からの労いの言葉や、ジョブ説明までっ!!俺の簡単な鑑定書とは違って随分と細かく書いてあるじゃねぇか!


 けど、ユリウスのはジョブが良すぎて少しだけ僻みもあるけどな。裏を返せば、それだけユリウスは期待されていると言う事だが。聖帝国の文官見習いかぁ。バリバリ出世コースじゃんか。


 それに、ステータスも全部40を超えていて高いし、スキルも二人のジョブと噛み合ってる。


 装備適性と魔法適性にS級がある。しかも、ユリウスに至っては魔法の適性全部にS級が付いている。


 すごいなぁ。やっぱり歩く幸運男(ラッキーマン)なだけあるなぁ。としみじみ思う。


 装備適性は高ければ高い程、良い武器を装備できる。二人とも高い低いで見ているが、装備適正がS級なら伝説の装備だって身につけられる。上級の武器や伝説級の武器を持つ事は、言わば才能の一つとも言える。で、その才能に達していない者は伝説級の武器を持つことすら許されない。


 武器に続いて魔法も同じだ。魔法の才能も高ければ高い程、良い魔法を覚えられる。二人とも使える使えないで見ているが、魔法で最も重要なのは適性の高さだ。S級なら最強呪文を覚えられる可能性がある。



 マルガは一流騎士団の騎士として、ユリウスは聖帝国の文官見習いとして、もう既に道が決まっている。それに対して俺は.....。


「はあぁあああっ!」


 大きなため息を吐くと、音楽隊のラッパと太鼓の音に合わせて、イーリス中央騎士隊の行軍が始まった。


 いよいよ王様である、お父様のパレードが見られる。

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