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2.俺のスキルが地雷なんだが...。

 街の広場に来た。


 広場の中央に位置する噴水の水は、空に球体で浮かんでいる。魔法で浮いている水の球体の中では、人魚に扮した踊り子たちが優雅に泳ぎ、人々を魅了している。


「おー。このお水は、魔法で浮いてるんだね。初めて見たよ。アルちゃんすごいね〜。ご機嫌は治ったかい??」


「すごいねじゃないわよ。呑気に!!って、あれっ!見失っちゃったじゃ無いのよっ!!このっ!ユリアンがモタモタしてる所為だからねっ!!」


「いっ、いひゃい〜。ほんな〜。ひほいよ〜」


 マルガはユリアンの顔をつねって引っ張っている。ユリアンの涙目で潤んだ瞳を見て、良心が痛んだ。

 実は二人の真後ろにいるんだが、俺の授かったスキルである潜伏はとても便利だな。こんなに近くにいても、二人とも全然気がつかない。



 パレードの主役の我が国の王様である、父上が出て来るまでは、宮廷魔導師や踊り子が催し物を披露していた。

 国民は、国王様の到着は、まだかまだかと皆が心躍らせる中で憂鬱な男が一人いた。


 この国の王子なのだが、国民は顔も名前も知らないアルフォンスだ。


 アルフォンスはステータスとスキルの鑑定書を見て項垂れていた。


 ステータスもランダムに与えられたスキル二つも弱過ぎるのだ。

 ショボい。ヤバすぎる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 アルフォンス


 ※個人情報保護の為、家名がお有りの方々は伏せさせております。

 何卒、ご了承下さいませ。


<ジョブ>

 盗賊(シーフ)Lv1


<ステータス>

 攻撃(アタック):10

 魔力(マジックアタック):10

 防御(ディフェンス):10

 魔防(マジックディフェンス):10

 敏捷(スピード):50

 幸運(ラック):3.14


<スキル>

解錠(アンロック)盗賊(シーフ)の固有スキル。鍵のかかった扉や宝箱を開ける。


「潜伏」補助スキルです。影を薄くできます。推奨している使い方としては戦闘時に敵から攻撃対象にされにくくなります。なお、対象に近づき過ぎてしまったり、パッシブスキルの「見切り」を持つ者に見破られてしまうと効果がありません。


「模倣」希少(レア)スキルです。このスキルはパッシブスキルで、常に能力補正または行動制限がかかります。人の真似が上手くなります。きっと、処世術に便利でしょう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 まず能力値から言える事。それは...弱い。弱すぎる。



 敏捷以外が低すぎる。

 Lv1のステータスの平均は30だ。ジョブに一番必要なステータスの及第点は40だと言われている。戦士なら攻撃で、魔法使いなら魔力が最低でも40はないと厳しい。


 盗賊は素早さが求められるので敏捷50なら及第点以上という事になるのだが、それ以外は平均にも満たない...。素早いだけじゃ、どうしようもない....。



 っていうか、幸運の3.14って何だよ。一瞬314だと思って喜んじゃったじゃねーかっ!!

 それに、能力って0.1まで刻めんのかよっ!!新事実だぞっ!!



 円周率かよっ!!って一人突っ込みして暴れてたら神官長が、ここは何とか丸く収めませんか?って言ってきやがった。このなまくら僧侶がっ!!人のステータスで大喜利してんじゃねぇよっ!



 はい、次っ!!次にスキルだ。

 なんだこれっ!!攻撃スキルは一個もない。どっちも攻撃できねぇじゃねーかっ!!それに一個地雷スキルまであるし....。


 まず「潜伏」だが、影を薄くする補助スキルだ。これは盗賊のスキルとしては相性が良い。しかし、対象に近づき過ぎたり、特殊な物や異常を見破るパッシブスキル「見切り」を持つ者に見破られてしまうと効果がない。


「見切り」というスキルは聖騎士(ホーリーナイト)の固有スキルだ。しかし、聖騎士は数が少ない。その為、「潜伏」は便利といえば便利だが、各国の重要人物の護衛や重要機関の警備には必ず聖騎士がつけられる為、そういう所に忍び込む場合は「潜伏」を使っても意味がない。


 しかも、気配を完全に殺すのは達人の域に達した者だけだという。それには、個人差があるが、スキル保持者の全体的な失敗率が高くて使い所の難しいスキルらしい。


 その為、不安は少し残るものの、空き巣や盗み聞き等に便利....。


 解錠に次いで、これまた犯罪者の好きなスキルじゃねーかっ!!


 空き巣なんかしねぇよっ!!

 それに、重要機関に忍び込む用事もないんだが....。


 そして、最後のスキルである「模倣」だ。


 どうやら、パッシブスキルらしく、とてつもない希少(レア)スキルで俺以外にこのスキルを授かった者の前例がないらしい。

 能力鑑定士と神官長とシスター達がキョトンとしてたぞ。しかも、鑑定完了後に騒つき始める始末だ。


 鑑定結果は、「模倣」希少(レア)スキルです。このスキルはパッシブスキルで、常に能力補正または行動制限がかかります。人の真似が上手くなります。きっと、処世術に便利でしょう。


 地雷スキルじゃねーかっ。何だよこれっ。人の真似が上手くなるって、どこで使うんだよ。人の真似が出来たって意味ないじゃん。それに「きっと」っていう曖昧でちょっとポジティブに書いてるのもムカつくんだがっ。そういう気遣いはいらないからっ。望んで無いからっ。逆に傷つくからっ。ひっ。うっぐ。



 パッシブスキルは能力に補正がかかったり、行動に制限が出たりするスキルの事だ。パッシブスキルの代表格といえば、狂人(バーサーカー)の固有スキルである「狂化(バーサク)」だ。「狂化(バーサク)」は発動中に、攻撃以外の行動やスキルが使えなくなる代わりに幸運以外のステータスが二倍に上がる。


 狂人は、回復や補助を後衛に任せれば、実質最強のアタッカーだと言われている。そして、数の少ないジョブである、聖騎士の「見切り」なども国家の安全を確保する名目で、出自に関係なく、王宮に召し上げられる。とても政治的に重要な役割を担うジョブであると言えるだろう。


 ちなみに、俺がなぜここまでジョブやスキルに詳しいかと言うと、調べたからだ。俺がどれだけ、この日を待っていたか。


 神様は、俺のジョブとスキルは何を授けてくれるのかなぁ。カッコいいジョブになれると良いなぁ。スキルはカッコいい攻撃スキルが良いなぁ。


 攻撃スキルで俺が使ってみたかったのは、剣士系ジョブのスキルだ。その為に剣の稽古は毎日欠かさず行なっていた。


 数あるジョブの中でも、特に剣士系のジョブは華やかで美しい。騎士隊の訓練の見学をした時に、剣聖(ソードエスカトス)が教官として隊員達と模擬戦闘をしていた。


 その美しさに自分も剣聖になりたいと憧れた。なれなくても、剣士(ブレイド)固有スキルのスピードスターや剣豪(ソードマスター)固有スキルの流星斬とか、剣聖(ソードエスカトス)固有スキルの花鳥風月とか、めっちゃかっこいいじゃんと思って、幼い頃はその技を見よう見まねで真似してたりしていた。


 今日は洗礼の儀だ!!俺が幼少期より憧れて、待ちに待ち望んだ、洗礼の儀だ!!世界一の剣聖に俺はなるっ!!


 と蓋を開ければ犯罪者のジョブとド底辺のステータスに地雷スキル持ちで、しかも、攻撃スキルはなしという散々な結果に。


 どうやら神様は俺に専門(プロ)のならず者の道を歩んで欲しいらしい。残酷だ。そうなったら王国は体裁が悪くなって、俺は牢屋に入れられるんだろうなぁ。


 牢屋に入れられたって、どうせ、城にいる間は、監視の目が常にある、今の生活とあまり変わらない。


 はぁ。俺って、このまま、ずっと城に引きこもりなのかな。

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