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1.俺の幼馴染がチートすぎるんだが?

若葉の月は3月です。

 俺の名はアルフォンス・リデル=イーリス。イーリス王国の第二王子だ。


  次期国王の座はお父様から、その実弟である叔父様に譲られると決定している。


 そして、優秀な異母兄がいる。俺がまだ、幼い頃に第二王妃である俺の母親は病で亡くなった。俺は権力争いに巻き込まれないように、存在を伏せられて生きてきた。一部のイーリス貴族と各国の王に名前だけ書状で送られて、国の秘密として扱われた。俺は特に御披露目会もされなかった。


 俺は誰の目を気にすることなく、自由に過ごしていた。異母兄は見解を広めるために外国の一流学園に留学している。


 だから、今みたいに洗礼の儀が終わった後、城に帰らずに街に出かけても、誰も俺の名前も顔も分からないし、異母兄に悪口を言われる心配もない。


 この世界では、12歳になると神の加護(ギフト)と言われるジョブとスキルが皆平等に与えられる。ジョブは戦士や魔法使いなどの肩書きで、能力と装備適正や魔法適性が決まる。スキルは戦闘ジョブなら強ければ強い程良い。生産ジョブなら便利なスキルが良い。


 イーリス王国では若葉の月の1日目が建国記念日だ。その建国記念日に12歳になった国民は教会に集められ、洗礼の儀というジョブとスキルの継承が行われる。


 スキルは三つ与えられ、変える事は不可能だ。しかも、ジョブの固有スキル意外の二つのスキルはランダムで与えられる。



 固有スキル以外の二つは誰がどんなスキルを得るのか洗礼の儀をするまで分からない。ジョブも同じでランダムだ。俺と幼馴染二人は、12歳になり、今日は待ちに待った洗礼の儀だ。


 ジョブとスキルが与えられた。俺のジョブは....盗賊(シーフ)


 固有スキルは解錠(アンロック)......。鍵開けならお任せあれ....。


 クッソー!!ショボい。ショボすぎる。俺これでも一国の王子なんだが?神様は不平等だ。


 ていうか鍵開けってどこで使うんだよっ!!


 日頃の行いがジョブとスキルに反映するって神官長が言ってたけど....。俺、悪い事してないぞ!!それに物も盗んだ事ない!!


 神官長に猛抗議したが「こればっかりはどうしようも....」って言ったっきり、洗礼の儀が終わるまで、ずっと目をそらされたぞ。


 それに、俺のジョブがこんなショボいのに、なんで幼馴染のこいつらの方が良いジョブなんだよ。


 今日は建国祭だし、憂さ晴らしに街に出かける事にした。誰に何と言われようが、これは決定事項だもんね。うん。


「ちょっとアル!!城に戻るわよ!!ユリウスも突っ立ってないで、何か言いなさいってばっ!!」


 今、大声で喚き散らして俺の腕を引っ張っている少女の名前はマルガ。同じ乳母に育てられた乳兄弟で幼馴染だ。


「アハハ。たまには出かけたって良いじゃないか。今日はお祭りなんだから楽しもうよ〜。ランララーン」


 今、歌を歌いながらニコニコと露店で売ってる飴細工をおばさんから買っているこの背の高い少年も、同じく乳兄弟で幼馴染のユリウス。その背の高さを俺にも少し分けろ。


「うるさい。俺はもう祭りに行くって決めたんだよ!2人とも付いてこないで良いってば!」


 マルガから腕を振り解こうとしているが、全然ビクともしない。


 その通りだ。こいつは年頃の女なら誰もが憧れる女性専用の最強ジョブである戦乙女(ヴァルキュリア)のジョブとスキルを得ている。魔法使いと戦士を合わせたジョブの為、物理攻撃と魔法攻撃が使える。そして、[祈り]という固有スキルを使えば自己回復が出来る。

 歩く兵器女(ウェポンガール)とでも言うべきか。チートだ。私TUEEだ。そんなのズルい。ズルだ。お前なんかズルガに改名だ。インチキだ。不公平だ。


「王はご乱心じゃあ〜。これあげるから、アルちゃんご機嫌なおしてよ〜。見て見て!これー!可愛い飴ちゃんでしょ?」


 時代劇の王の臣下が言いそうなセリフを言いながらポワポワと駆けつけてきたユリウスは、色取り取りの腕に抱える程の飴細工を買ってきた。


 ユリウスから飴細工をいくつか貰った。


 飴細工をユリウスが覗き込んでいる。飴細工から写り込んだユリウスの目が大きく見えて滑稽だ。


 しかし.....。これは、いくらなんでも買いすぎだろ。


「お前、そんなお小遣い使って良いのか?」


「そんなにお菓子食べちゃダメなのよ!ユリウスのママに言いつけてやるんだからっ!!」


「えーと、ね。さっきの露店の人から、いっぱいオマケしてもらっちゃったよ〜?みんなの分で三つ買ったつもりだったのにな。あれ?不思議なこともあるね?あ、マルちゃんも欲しい??」


 飴細工は棒に付いていて色鮮やかな宝石のようにキラキラと輝く。これは花のモチーフだろうか?味はピーチ、レモン、メロンだ。舌先で転がすと甘い味が口に広がる。


「んー。んまい。ありっ」


 がとうっじゃなーい!!!礼なんかしてやるもんか。かくいうこいつも、俺より良いジョブとスキルを持っているんだからな。ふんだ。そっぽ向いてやる。



 大聖者(アークセイント)だ。回復魔法と補助魔法、浄化魔法を使いこなす最強治癒ジョブ。そして、普通の聖者(セイント)との違いはラックの高さだ。

 歩く幸運男(ラッキーマン)とでも言うべきか。大聖人は、神から愛された存在にしか、なる事が出来ないだけあってラックが高い。魔法ジョブの為、攻撃力が低い。しかし、ラックの高さのお陰でクリティカルがバンバン出る。魔物がバンバン倒れる=物理攻撃でも普通に強い。....と言うことはこいつも俺TUEEだ。



 そんなのズルい。ズルい、ズルい、ズルい。お前も、今日からユリウス改め、ズルウスだ。


 あっ。目から涙が出てきた。飴をバリボリと噛み締める。悔しくて流した涙は不覚にも甘い味がした。



 よしっ!マルガが飴細工を選んでいる内にだいぶ離れられたな。これで、ようやくお祭りの見物の再開が出来る。


「あっ!!待ちなさいアルッ!!飴は今はいらない。あ!後で貰うからね。味はイチゴのやつね!全部食べないでよっ!!」


「こんな食べきれないよ〜。どれがイチゴかな??あっ!待ってよ!!えっとね〜?そういえば、さっきの露店の人が広場のパレードに王様が出るって言ってたよ〜。行く〜?」


「でかしたぞっ!ユリウス!さぁ、行くぞ!」


「あっ!!待ちなさいよー!」


「待って〜。広場はそっちじゃなくてこっちだよ〜」


 こうして俺たちは広場へパレードを見に行く事になった。

当初の予定では洗礼の儀は、15歳にしようとしましたが、設定変更の為、12歳に変えました。

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