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第4話

街の中央にある噴水広場。

ここがこの街の復活ポイントらしい。

だから、今日初めてゲームにログインした人たち全てがここにいる。

例外なく、俺もここからスタートだ。


噴水広場に到着した。周りを見渡す。

人が多く、ここに留まりながら待ち合わせをしている人が多いようだ。

が、何故か・・・いや、理由はわかるけどこっちを見ている人が多い。

まぁ、尻尾が9本、しかも全部白いんだから目立つこと目立つこと。

ちょっと恥ずかしいけど、何も悪いことしてないんだ、堂々としろ、俺。


「あのー、すみません」


「はい?」


突然、後ろから話しかけられた。

パッと見は、10代後半から20代前半の若い女性2人組。

どちらも剣を装備していることから剣士を選んだことはすぐにわかる。


「その尻尾ってランダムで付いたんですか?」


「いえ、自分で付けました。あ、自己紹介しますね?白狐と申します。名前を少しでも反映できるよう色々と調整した結果がこれです」


「え?あっ、椿姫(つばき)と申します。邪魔・・・になりませんか?」


「おー・・・そこまで解りやすい見た目と名前は凄いね。あ、私は神流(かんな)、よろしく」


「どもども、よろしくです」


「あ、で、ものは相談なんですけど・・・、その尻尾、ちょっと触ってもいいですか?」


「いいですよ、いえ、是非、触ってください。そうすれば尻尾の良さが伝わるかと思います」


若干引かれた。

けど、尻尾の良さを理解してもらえるなら、これくらいどうでもいい。

二人に背を向け、尻尾を触りやすいように少し下げる。

自分の意思で動かせることにやや驚かれたが、二人は普通に触りだす。


やっべ、女性に自分の尻尾を触られるてめっちゃ気持ちいい。

これセクハラで訴えられるんじゃねーの?ってくらいやばい。

なんかちょっと・・・いや、かなり興奮する。


「おー・・・ここまでいい手触りとは凄いね。色、艶、手触りに大きさ。全てが完璧だよ」


「ですよね!ですよね!いやー、この尻尾の良さを解ってくれる人にこんなにも早く出会えるとは凄く嬉しいです」


「お、おう。テンション上げすぎでしょ・・・。もしかして、ケモナー?」


「いえ、動物相手に発情したりはしないのでケモナーではないです。それに、狐以外の動物の耳や尻尾には興味ないです」


「狐限定・・・何か思い入れでもあるんですか?」


「え?狐可愛いですよね?ペットとして飼ってみたいと思いませんか?」


「え?・・・あ、いえ、ペット禁止なんで・・・」


「それは残念だ・・・」


「いやー、面白い人だね。あ、フレンド登録しよ。また尻尾触らせてよ」


「いいですよ、尻尾の良さを解ってくれる人となら喜んでなりますよ」


椿姫さんと神流さんとフレンドになる。

・・・あいつらより先にフレンド登録しちゃって大丈夫か?後で文句言われそうだけど・・・。


「あ、白狐さんってソロ?もしよければ一緒にどう?」


「あ、いえ・・・リア友と待ち合わせしてるんで今すぐは無理ですね」


「そっかー・・・、その尻尾でどう戦うのか凄い興味あったんだけど、まぁしかたないか」


「申し訳ない。また、何か機会があったらよろしくお願いします」


「おーう、こっちこそよろしくね。じゃあ、良いもん触ったし私らは行くか」


「ですね。では、またお会いしましょう」


二人が離れていく。

この尻尾のおかげで女性の知り合いが増えるとは・・・幸運の尻尾ってやつだな。

とりあえず、ここは凄く目立つから少し離れるか。


しばらくして、メールが来たことを示すアイコンが表示される。

他のメンバーがゲームの世界に入ってきて、俺を探したってことだ。

メールの差出人を見ようとしたところ、次々にメールが来る。

合計4通、全員こっちに来たことが判明。

全員に対し、

「尻尾でわかるから俺の所に集合」

と、メールを出す。

これで俺の所に来れなかったら放置だな。


1分も経たないうちに、爆笑しながらこっちに向かってくる人が現れた。

その笑い声を聞き、こっちに気付いた人が何人か同じように笑っている。

これはアホ共だな・・・。


「お、おまっ・・・俺を笑い殺す気か?え?なんだよその尻尾は」


「そうだよ。意味のわからんメールが帰ってきたと思ったらさ、すぐに理解したわ」


アホ共3人が人の尻尾を見て、爆笑している。

と、その時、黒い猫耳と2本の尻尾を生やした男に話しかけられた。


「うーっす、白やん。お前めっちゃ目立ってるな。噴水の周りの人ほぼ全員お前の話題だったぞ」


「うーっす、黒やん。めっちゃいい尻尾だろ?わざわざ確認してもらって付けたわ」


「だろうな。俺も尻尾2本にできるか?って聞いたら大丈夫です、狐の尻尾を9本付けた人がいますよって言われたからさ、すぐにお前だってわかったわ」


「あんのAI、俺の情報を他人に流すなよなー」


「まぁ、いいじゃん。てか、お前それで戦えんの?デメリット聞いたんだろ?」


「え?知らない。戦う練習を今からしに行くんだからわかるわけないじゃん」


「お前も結構バカだよなー。まぁ、俺も人の事言えないけどさ」


「お前もきっちり、耳と尻尾を付けてるからな。んじゃ、フレンド登録しますか」


「だな。お前らいつまで笑ってんだよ。ほら、フレンド登録するぞ」


黒猫の言葉でようやく落ち着くアホ共。

俺もこうやって狐に拘るアホだから、こいつらと同レベルってよく言われるんだよな・・・。


全員のフレンド登録が完了した。

俺だけフレンドの数が多いことがばれ、少し尋問された。

女性二人で俺たちよりもやや年上くらいだと教えたら睨まれた。

・・・今度紹介すると言ったらすぐに大人しくなるからアホ扱いされるんだよ。


「さて、多少の問題はあったけど・・・、無事フレンド登録は終わったな」


「俺は無事じゃないんだが?」


「何も問題はなかった、いいね?」


「よくねーよ」


「いいね?」


「・・・はいはい。まぁ、いい。俺はここから別行動だ」


「あ、俺も白やんと一緒に移動する。多分訓練所は一緒か近い場所にあるだろうし」


「ん、了解。お前らは?」


「冒険」「戦闘」「試し撃ち」


「ん、行ってらっしゃい」


「おう、行くぞお前ら」


アホ共がパーティを組まずに移動を開始する。

一緒にいる意味あるのか?

途中で気付くことを祈ろう・・・。


「さて、俺らは移動するか。白やんがめっちゃ目立ってるし」


「や、お前も充分目立ってるぞ?」


「お前には負けるよ。訓練所の場所知ってる?」


「お前ら待ってる間に調べた。案内するわ」


「よろしく」


二人で、戦闘訓練ができる訓練所に向かう。

ゲームの中とは言え、自分で歩いて目的地に向かうのは現実っぽいなどと、ゲームと現実の違いをそれぞれの主観で話しながら歩いていく。

広場から伸びている大通りを少し進み、小道に逸れる。

そこから3分ちょっと歩くと、戦闘訓練場だ。


「結構近くにあるんだな」


「あんまり遠いと不便だからじゃない?とりあえず入るか」


「だな」


少し古ぼけた、いかにも道場といった感じの木造の建物。

自分の倍近くある門を開け、中に入る。

そこには一人、立っているだけで、他には誰もいなかった。


「お?ようやく来たか・・・ってすげぇ尻尾だなお前さん」


「どうも、訓練受けに来た白狐です」


「同じく訓練受けに来た黒猫です」


「はっはー、お前らがあれか。若干運営で噂になってるぞ。あ、一応言っておくが俺は運営の一人だ。ゲームが始まってから数時間、訓練所に誰も入ってこないからテコ入れするかどうか、様子を見に来たってとこだ」


「まぁ、普通に考えればチュートリアルとかめんどくさいですからね」


「身も蓋もない言葉だが・・・事実だな。で?二人はなんで訓練所に?」


「現実で銃とか撃ったことないんで」


「同じく剣なんぞ持ったこともないんで」


運営の人が大爆笑する。

腹を抱え、誰がどう見ても大爆笑している。


「ひーっひひひ、確かにそうだ。確かにそうだなが、あっはっはっはゲホッゲホッ・・・あー笑い死ぬかと思ったわ」


「失礼な、やったことないんだから最初に学びたいと思うのはおかしくはないと思いますよ?」


「まぁな?その考えはおかしくない・・・が、お前らの恰好はおかしいぞ?普通尻尾は1本だし、男で獣耳付けるのはかなり珍しい」


「趣味です。むしろ、この尻尾の手触り、色、艶、全てが完璧。これを作成した人に会ってお礼を言いたいくらいですよ」


「おー、伝えておいてやるよ。っと、かなり逸れたな。まぁ、お前さんらは目立つからな。ここであったこととかすぐに噂になるだろ。テコ入れは特に不必要かな?」


「そう言えばそんなことを言ってましたね。有益な場所なら掲示板的なものに書いておきますよ」


「お?ありがたい。最悪の場合は俺が直接書こうか悩んでたくらいだからな。じゃ、俺は報告の為に戻るけど・・・ゲーム楽しんで行けよ」


「おつかれさまでーす」


「おつかれさまでーす・・・。面白い人だな」


「な。まぁ、いいや。とっとと訓練受けようぜ」


「受付は・・・あそこか」


受付に移動する。

そこでここでできることの簡単な説明を受け、訓練を受けることを申し込む。

初めて銃を扱うことになるんだが・・・大丈夫だろうか?

不安と期待で胸がいっぱいだ。




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