第3話
待ちに待ったゲーム発売日。
もう高校生になるというのに、ゲーム発売が楽しみ過ぎて夜寝れなかった。
早期予約をしていたため、全員午前中に届く手筈になっている。
一人だけ午後に届くとかになっていたら、全員合わせようとか言い出だしかねないからな、よかったよ。
特に問題はなく、午前中にゲームは届いた。
一応、他のメンバーにも確認をとった所、全員無事に届いたとのこと。
小さくガッツポーズをしてしまった。
早めのお昼ご飯を食べ、いざ、開封の儀へ。
箱を開ける。
新品のヘッドギアが出てくる。
思っていたよりも重い・・・10kgくらいか?
前世代のものはこれよりもやや重く、大きかったことを考えるとかなり小型化してるのか。
簡単に説明書を読む。
事前にネットで読んでいたのと内容に差がないことを確認し、箱に戻す。
そして、頭にセットし、起動する。
少しずつ意識が遠のいていく。
なんか脳波がどうとか、難しい原理はどうでもいい。
今から初めてのVRMMOをプレイする。
ただ、それだけだ。
気が付くと、何やら白い部屋にいた。
白か・・・、いい色だよな。何にも染まらず、最も美しい色だ。
「はじめまして。私はキャラクターエディットを補助するAIで、名前はディットと申します」
「うおっあ!!・・・びっくりしたぁ・・・」
真っ白な部屋はいいなーとか考えていると、後ろから声をかけられた。
あまりに驚いたため、少し変な声が出た・・・恥ずかしい。
「驚かせて申し訳ございません」
「あ、いえ、こっちこそなんかごめんなさい」
「では、改めて名乗らせていただきます。キャラクターエディットを補助するAIで、名前はディットと申します。短い間ですが、よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げられた。
ディットと名乗ったAIは、身長160cmくらいの金髪女性だった。
やや可愛いが入った美人系の女性で、こんな人に現実で会えたらなと、思う。
「では、早速ですがキャラクターエディットに入らせていただきます」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「はい。まず、お名前を入力していただきます。目の前のタッチパネルに触れるか、このパネルを押すと、強く念じていただければ入力可能です」
空中に半透明のウインドウが現れる。
そこには今から決める内容と、自分の姿が映っていた。
言われた通りに、目の前にあるタッチパネルを操作し、名前を入力する。
・・・別に脳波で操作ができるか不安だった訳じゃない。実際に触ってみたかっただけだ。
誰に言い訳してるんだろうか・・・、興奮してテンションがおかしくなってる気がする。
「はい、入力を確認しました。「白狐」さんですね?発音は「しろぎつね」でよろしいでしょうか?これはAI、つまりはNPCがあなたを呼ぶ時に関係します」
「はい、「しろぎつね」で大丈夫です」
「ありがとうございます。それでは白狐さん、職業の説明をさせていただきます」
「あ、事前に調べて決めてあります」
「左様でございますか。では、タッチパネルに入力をお願いします」
先ほどとは別のタッチパネルを操作し、自分の職業を決めていく。
現実でもこんな感じで仕事を選べたら楽だろうに・・・。
「はい、では、確認させていただきます。メイン職業が銃使い、サブ職業が魔法使いでよろしいですね?」
「はい、大丈夫です」
「では、続いて生産職です。こちらは、錬金術師、鍛冶師、料理人の3つでよろしいですね?」
「はい、問題ないです」
「ありがとうございます。最後に、ご自身の容姿を決めていただきます。決める方法は大きく分けて3種類、1つ目は現実と同じ容姿を使う。これは、現実での身体との誤差がまったくないため、いつもと同じ感覚で遊ぶことができます」
現実と同じ顔と体型・・・ないな。
ゲームだから現実とは違う自分になりたい。
「2つ目はランダムで決める方法です。身長、体重、体型、その他のオプションパーツなど、全てをランダムで決定します。ただ、1度で決めるのではなく、何度でも選び直すことは可能ですのでご安心ください」
完全ランダムか・・・、これはこれで面白そうだな。
現実では170cmちょっとだけどゲームでは200cmとかやってみたい。
まぁ、現実との誤差が多い分、慣れるまで大変だろうけどな。
「最後は、ご自身で少しずつ調整していく方法になります。多くの方はこちらを選んでいますね」
「一つ質問があります」
「はい、なんでしょうか」
「現実の自分をベースに調整する、つまりは1つ目の方法と3つ目の方法を両方選ぶというのは可能でしょうか?」
「はい、可能です。このまま現実の容姿をご用意してもよろしいでしょうか?」
「お願いします」
目の前のウインドウに自分の姿が映る。
全裸だったらどうしようとか考えていたけど、きちんと服を着ていた。
ここから色々と弄っていくわけだけど・・・、とある噂を聞いている。
顔や体型をプログラムではなく、自分で弄ると変な違和感が出てくる・・・らしい。
フォトショを使い慣れてない人が写真を修整したらすぐわかるようなものとのこと。
「あ、獣耳とかって可能ですか?確か人種・・・人間とか獣人とかはなかったと思うのですが・・・」
「可能ですよ。獣耳や尻尾、羽など付ける方は多くいます。ただ、現実にはそのようなものは存在しないので、慣れるまでは違和感が常に付きまといますね」
勝った。これは大勝利だ。
人類の技術力は素晴らしい物だ。
当然、狐の耳と尻尾を装備する。
毛の色も白色に設定し、付ける位置や角度を決める。
ふと、あることを思いつく。
「これ、尻尾増やすことって可能ですか?9本欲しいんですよ」
「尻尾を9本ですか?申し訳ございませんが、そのような質問は、初めてですので回答を持ち合わせておりません。確認致しますので少々お待ち下さい。」
俺が初めての質問だったらしい。
羽を4対とか腕に羽を生やすとか色々考えそうなんだけどな・・・。
あ、あれか。まだ午前中だから変な質問をする人が少ないのか。
「お待たせしました。尻尾を9本にするのは可能です。現実との誤差が大きくなること、戦闘時に邪魔になる可能性が高いこと、尻尾にも当たり判定があるので、ダメージを受ける可能性が高くなることなど、デメリットがとても多いですが大丈夫でしょうか?」
「最前線で戦うつもりはないので大丈夫です」
テンションがやばいくらい上がる。
狐と言ったら九尾だ。
金色に輝く美しい尻尾もいい。
だが、俺は気高く、美しく気品もある白い尻尾にする。
その後、目や髪の色を変えたり、知ってる人が見ればわかる程度に顔を変えた。
今日からゲーム内では二重だ。ちょっとはイケメンになったか?
「お疲れ様です。最後に武器と防具を選んでいただきます。こちらは、基本的な性能は全て同じですが、重さや大きさが異なります。自分にとって、使いやすい物を選んでください」
お馴染みのタッチパネルが登場する。
自分が選んだ武器、銃と防具の名前が書かれたタブが見える。
まずは銃、メインウエポンだ。
ダメだ、まったくわからん。
サバゲーをやるわけじゃないし、実際の銃を持ったこともない。
だから、どんなのがいいのかがまったくわからない。
とりあえず、持ちやすい大きさの銃を選んだ。
次に防具だ。
服、全身金属鎧、全身革鎧、ローブと、項目別に分かれている。
自分の職業を考えると、革鎧だと思う。
が、尻尾が邪魔で着れない可能性が高い。
それに、某狐キャラはローブに近い物を着ていた。
「すみません、尻尾がないと装備が可能かどうかがわからないのですが・・・」
「一時的に反映させます、少々お待ち下さい」
数秒待つと、お尻のあたりが重くなる。尻尾だ。
1本1本自分の意思で動かすことが可能で、凄いふさふさで滑らかで良い、本当に良い手触りだ。
ナイス運営。これだけでこのゲームを買ってよかったと思えるよ。
そして、色々と装備を試着した結果、後ろ部分に切り込みが入ったローブに決定した。
この切り込みはスリットって言うんだっけ?
ファッションに詳しくないからわからないけど、尻尾を出すのにちょうどいい。
AIのディットに鏡を出してもらったり、ウインドウに自分を映してもらい、色々な角度から自分を観察した。
自分で自分をここまでしっかり見るのは初めてで、何か新鮮な気分だった。
自分で言うのもあれだけど・・・こいつそこまでイケメンじゃねーわ。
10点満点だと・・・5点、や、人の好み次第で7点いけるかな?くらいだ。
まぁ、いい。今の俺は白狐だ。
誰がどう見ても、白狐に相応しい見た目だ。
「お疲れ様です。名前、職業、容姿、そして初期装備のエディット完了です。職業以外は後から変更することはできませんが、現在のものでよろしいでしょうか?」
「はい、これで行きます」
「畏まりました。それでは、登録処理を行いますので少々お待ち下さい。登録処理が終わり次第、ゲームスタートになります」
登録処理を待ちながら、身体を動かしてみる。
うむ、尻尾が邪魔なこと以外は特に問題ないな。
それにしても・・・この尻尾はいい。
生活にも邪魔になりそうな大きさと量だけど、それ以上の良さを持っている。
あぁ・・・、何時間でも触っていたいこの尻尾。
ふさふさで柔らかいが、1本1本は強くやや硬い。
この矛盾していそうでしていない感じまで再現されているとは・・・やりおる。
そうやって遊んでいると、ディットが話しかけてくる。
「お待たせしました。登録処理の完了です。それでは、当ゲーム、アークライトをお楽しみください」
やれやれ系主人公に見せかけたアホです。
類は友を呼ぶって言うし当然だよね?