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81 敵が多すぎる

 「一反いったん木綿もめんー」

「水口、はしゃいでないで助けろ!」

 ずるずる引きずられながら頼んでみるが、水口も蜘蛛の糸でぐるぐる巻きなので手は出せない。だめだ、敵が多すぎる。

「悟!」

 小畑がなんとかたどり着いて剣で白い布を断ち切ってくれる。短くなった布も俺を引っ張ろうとするが少しは力が弱くなった。とりあえず手が動くようになったので、ぐい、と絡みつく布を引っ張って首からはずした。はずした白い布はまだ意志を持つかのように、くねくね動き、俺に絡みつこうとしている。

 ええい、うっとうしい。

 えいっと、今度は目の前に迫ってくる真っ赤な顔でやたら目がたくさんある鬼に向かって、その白い布を投げつけた。

 やった! 布は今度は鬼の顔に絡みつく。ウオーッと鬼は叫び声をあげ、一生懸命顔に絡んだ布を取り除こうと暴れる。

 俺の方も小畑が切った残りの布がまだしつこく絡みつこうとしてくるので、半月刀をやたら振り回して絡みつけないようにする。

 小畑は負傷して暴れる土蜘蛛で手一杯だし、なんとか助け手がほしい。

「川原、戦えるか」

「誰に向かって言ってんのよ」

 明らかに頼もしい答えが返ってきた。

「でも、この蜘蛛の糸、はずして頂戴」

「わかった、ちょっと待て」

 離れろ、この一反木綿!

 なんとか川原に近づこうとしているのだが、目隠し状態の鬼は滅多やたらと暴れるし布は俺の周りをぐるぐる渦巻いて再び絡みつこうとしているし、とてもたどり着けない。もう一本手が欲しいぐらいだ。


 そうだ、さっき確か左手に短剣が。

 今まで短剣は消えていたけど、思い出したらすぐまた出てきた。

「川原の糸を切ってくれ!」

 できるかどうかわからないけど、短剣を投げながら命令した。おっさんと半月刀を飛ばして訓練したことの延長みたいなかんじで言うことを聞いてくれないだろうか。なにもかも練習してないことだらけだけど、さっきから意志が伝わればその通りになっている。だからこれも。


 よし。

 短剣は思った通り飛んでいって川原の蜘蛛の糸を上手に切り落としてくれて彼女を自由にした。

「ついでにあたしもー」

 という水口の主張は確かにもっともなのだが、水口を自由にするともっと悪いことが起こりそうな気もする。

「悪いけど、水口はこいつら倒してから」

「ええっ! なんであたしばっかり」

「おまえばっかり性質たちが悪いからだよ」

 ふう、と立ち上がりざま川原は例のバズーカを構えて巨大な土蜘蛛に向かってズガン! とぶっ放した。

 ブシャッと土蜘蛛の体が爆発して粉々になる。

「やった!」

「次はこいつ?」

 川原が酒天童子に狙いを定める。

「うん。やっちゃえ」

 ズガン! 

 川原の迎撃は容赦がない。鬼は体のど真ん中に真っ黒い穴を開けてシュウッと消えていった。

「それ、狙う? どこ狙ったらいいのかしら」

 川原がこっちにバズーカ向けているが一反木綿はぐるぐると頼りなく空中を舞っているだけなので狙いが定まらない。下手すると俺が撃たれる。

「いや、こいつはいいや。清谷さんを追っかけてるあいつを頼む」

「オッケー」


 清谷さんはさすがに絨毯を上手に緩急つけて飛ばして手長足長の攻撃からうまく逃げている。でも、逃げてるだけではいつまでも終わらない。巨人は手足は長いのだが胴体は案外細いので狙いにくそうだ。川原は何度か狙いを定めようとするが悔しそうにまた武器を下ろす。

「他の武器はどう? いや、絨毯もう一枚出てこないか呼んでみようか」

「そうね、絨毯を貸してみて。武器も替えてみようかな」

「絨毯!」

 俺が呼ぶとやっぱり来てくれた。おっさんのもう一枚の落ち着いた柄の方の絨毯だ。絨毯によって飛び方が違うのかどうかはわからないけど、とにかく使えることは使えるだろう。

「大丈夫か、一人で」

「だから、誰に向かって言ってると思ってんのよ」

 相変わらず勝ち気な声を残して川原はひらりと絨毯に飛び乗った。手長足長の方へ飛ばしつつ手にはバズーカから持ち替えたライフルを構えた。

 ほんとに強い奴だな。

 で、俺はぬらりくらりしている一反木綿に本格的に取り組み、なんとか少しずつ分断しようとしていると、今度はまた変なのが出やがった。


 シャーッシャーッと大蛇の吐くような音が近づいてくる。

 こいつは八岐やまたの大蛇おろちか。


――――――――――――


読んでくださってありがとうございます。

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