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80 長い手の化け物

 しゅっと半月刀をふるって、糸を吐き出す蜘蛛の牙の辺りをねらうが、敵は意外とすばしこく、攻撃をかわされた。

「小畑、横から行ってくれ。俺はこっちを・・・」

「えーっ! やっつけちゃうの? ちょっと待ってよ」

 糸で動けないくせに水口がそんなことを言い出した。

「なに言ってんだ、同情してる場合じゃないだろ、見ろ、この状況」

 小畑は気にせず横から槍で土蜘蛛の腹の辺りを攻撃しようとしている。シャーッとまた蜘蛛が糸を吐き半月刀を握る右手が自由を奪われた。

「じゃあなんとかしろ、水口!」

「えー、いや、まあ、諦めようか」

「諦めるなって! 他人事じゃないんだぞ!」

 ざくっと小畑の槍が土蜘蛛を突き、ギョエーと叫び声が上がる。いいぞ、小畑。

 でも、負傷した土蜘蛛はますます凶暴になり長い八本の足をめちゃくちゃに振り回して襲いかかってくる。はずれろ、右手! なんとかならないか。

 と思ったら左手にいつのまにか短剣が握られていたので、それで右手を動けなくしている糸を断ち切った。

 鋭い爪を持った長い足が俺の近くにぐさっと突き刺さる。その足を半月刀でビシュッと切りつけた。 

 グエエエ! 

 土蜘蛛がまた叫ぶ。

「あああー、小さい頃はこんなにちっちゃくてかわいい小蜘蛛ちゃんだったのに」

「水口、いい加減にしろ! おまえの頭ん中でこんなに巨大に凶暴に育ててたのか」

 ぐさり、とまた横から槍で攻撃しながら小畑がつぶやく。

「ティラノちゃんはかわいいけど、土蜘蛛はかわいくないという意見に一票」

「賛成!」

 噛みつこうとする牙を半月刀でガキンと防ぎながら俺も一票。いや、ティラノもかわいくなかったけど。

「ええー、なんでえー」

 考えりゃわかるだろ、水口。


 しかし、その時、まだ土蜘蛛も暴れてるってのに、どこからかにゅうっと長い手が伸びてきて清谷さんを捕まえた。

「なんだ、こいつ」 

「やだーっ! 助けてっ!」

「離せ! この!」

 ものすごく手足の長い巨人が、少し離れたところから手を伸ばして、そのまま清谷さんを持ち上げて自分の顔の前までひょい、と持ち上げて、今まさに口を開けて食べようとしていた。。

 地面からでは届かない。すぐ絨毯を出して飛び乗り、清谷さんに近づく。大口を開けて食べようとしていた巨人は急に現れた俺を見て一瞬手を止めた。そこを半月刀で切りつけ、巨人が一瞬ひるんで力が緩んだ隙に清谷さんを絨毯で受け止めた。

 巨人は怒ってまたにゅうっと手を伸ばして絨毯の俺たちを捕まえようとしてくる。どこまで手が伸びるんだ。しかも足も長いので、大きな一歩ですぐに追いついてくる。

 そうしている間にも土蜘蛛は地面の三人を襲ってくるので小畑が一人で善戦している。

「清谷さん、絨毯貸すから、一人でうまく逃げられるかな。俺はあいつを加勢しに行かないといけないと思うんだ」

「うん、できる気がする。絨毯には乗ったことあるの、あの魔女さんと一緒に」  

 そうか、そういえば清谷さんとこにはおっさんの奥さんがいるんだった。

「じゃあ、頑張って逃げ切って」

 絨毯を少し低くして飛び降りると清谷さんはびゅんと絨毯を飛ばし、追っ手から逃げ始めた。大丈夫だと信じよう。

 

 そして再び半月刀を出して今は足二本と胴体を負傷している蜘蛛に立ち向かう。もうちょっと攻撃すれば。

 と思っていたら、ギエエーッとまた別の吠え声がする。

 出てきた。

 目がたくさんある巨大な角の生えた鬼が。

「おお! 手長足長に加えて酒天童子まで出ちゃうとは」

 いい加減に喜ぶのやめろ、水口。どれだけ大変だと思ってるんだ。

 小畑がまだ大蜘蛛と戦ってくれているので真っ赤な顔、巨大な体の酒天童子に半月刀で向かっていく。

 巨大な長い爪の生えた手が俺をつかもうと伸びてくるのに半月刀で切りつけようとすると、どこからか蜘蛛の糸とはまた別の白い長い布が飛んできて首に絡みついてきた。動けない。鬼の爪がしゅっと顔の近くを掠めるが、布は俺を巻き付けてずるずると引っ張っていく。


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読んでくださってありがとうございます。

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