75こっちから攻撃しなきゃ
すぐ目の前で爆音とともに強烈な光が炸裂した。
死んだか。
・・・いや、多分死んでない。
見回すとさっきと変わらず四人そろって絨毯に乗って巨大戦車に狙われていた。もしここが天国なら、もう少しましなシチュエーションの方がいいに決まってる。
戦車は不気味な砲口の狙いを俺たちから外さない。
「もう一発来るか」
「さっきのは何だったの? 戦車の失敗?」
青ざめながらしっかりした声で川原が聞く。
「もしかして、バリア張ったんじゃね? 誰かが」
言いながら小畑が俺の方を見る。
「バリア? いや、全く覚えがないけど」
「防ごうって思った?」
小畑の言葉によく考えてみた。確かに、来る、やめろ、とは思った。でも、バリアとか具体的に考えたわけじゃない。
「次のが来る前に、とにかく逃げ・・・」
と言う間もなく来た!
ドガーン!
顔の前に両手を出して身を守ってしまったのは条件反射だ。でも、やはり砲撃は俺たちの数メートル先で炎を広げただけで、こちらには痛みも何も感じなかった。
「やった! やっぱりバリア張ってんだよ、おまえが」
嬉しそうに小畑が拳骨を振る。そうか、俺なのか。
「向こうが攻撃できないなら、こっちから行くわよ」
急に元気を取り戻した川原がいつの間にかバズーカを構えたが、小畑が止めた。
「ちょっと待て。向こうから攻撃できなくてこっちからはできるなんて、そんなマジックミラーみたいなこと、できんのかな。確かめてみた方がよくね?」
言うと小畑は自分のポケットを探り、小さな紙くずを見つけてそれを戦車の方に向かって投げた。
ぽん、と小さな音を立てて紙屑は見えない壁に弾かれて戻ってきた。
「な? こっちからも届かないんだよ。もしこれでバズーカ撃ったら、俺たちの方に跳ね返ってくる」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
川原は一度狙いを定めたバズーカ砲を降ろし、俺と小畑の方をかわるがわる見つめた。
このまま戦車を無視して日向を探せればいいんだけど、それができるんだろうか。とりあえず攻撃は免れているようだが、見回しても戦車以外のものは何もない。
さっきティラノと戦ってるとき川原が倒れていたから、他の誰かも倒れてないか地面を見てみたけどいないようだ。本当はいるけれど、見えてないだけなんだろうか。でも、多分、この戦車をなんとかしないと先へは進めない。
「バリアごとぶつけてみるか」
「やってみるか」
小畑に賛成されたので、絨毯をバリアごと進めてみた。バリアといっても見えないので本当に守られているのか不安なのだが、少し絨毯を進めてみてまた何か小さいもの、今度は俺のポケットから出てきたちびた消しゴムを投げてみたけどやっぱり戻ってきた。多分、大きな壁かボールのように、見えないバリアが俺たちと戦車の間を守ってくれているんだ。
「ほんとは俺一人で行きたいんだけど。女子は・・・」
でも、俺がいないとバリアも張れないんだろうか。残していってかえって危険になってもいけないし。
「大丈夫」
意外と気丈な声で清谷さんが答えた。
「そうか。じゃあ、実行させてもらう」
「一応あたしの心配もしなさい。女子なんだから」
「ああ、川原はまあいいだろ」
「何を言うか!」
怒声と共に鋭いパンチが飛んできた。すんでのところでパンチを避けてみんなに言った。
「じゃあ、全速力で飛ばすから、捕まってて。落っこちることはないけどな」
どこから攻撃しよう。問題はあの長い主砲だな。あれをへし折ることができれば。ということは角度を変えて上から狙ってみるか。
絨毯を高く高く上へ飛ばす。主砲はかなり角度をつけて上を狙ってくるが絨毯の方が動きは速い。ここから主砲をへし折るように飛ばしてみる。
えいやっ!
ぼよん、と弾むようにバリヤは弾かれた。だめだ。衝撃を和らげるようにできているようだけど、これをぶつけてこっちからは攻撃はできないようだ。
「どうする」
誰にともなく口にしたら、川原がきっぱり答えた。
「決まってるでしょ。こっちから攻撃しなきゃ」
―――――――――――――――――
読んでくださってありがとうございます。