表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/96

71 孫悟空作戦

えいっ! とデュラハンの兜の真上から如意棒で思い切り突いた。ガキン、と兜に如意棒は命中したがそう簡単には頭は落とせなかった。

 かえってデュラハンは腕に力を入れたのか、ますますしっかり頭を抱え込むようになってしまった。逆効果だったか。

 頭をしっかり抱えたからといって小畑への攻撃の手が緩んだわけではない。小畑も善戦しているが、やっぱりデュラハンは強い。槍と槍をぶつける勢いが違う。小畑はまただんだんと追いつめられていっている。

 「頑張れ、小畑。俺もいるから」

 小さい見えない姿のまま小畑の耳元まで絨毯を飛ばしてささやいた。

 急に小畑の顔が明るくなった。そうか、俺がいないと思ってたのか。悪かったな。

 小畑はもう一度槍を構え直してデュラハンに果敢に向かっていく。もうちょっと持ちこたえてくれ。俺の方も何とかしなければ。

 作戦としては間違っていないと思う。もっと力を入れて叩き落とせばいいのか。それとも、しつこく何度も攻撃しようか。

 ふと、如意棒を握りしめて思いついた。これが孫悟空の武器だということは孫悟空の使えた術を俺も使えるかもしれない。例えば、そう、分身の術。

 小さい頃読んだ『孫悟空』の絵本の絵を思い浮かべる。確か、頭の毛を抜いてそれにふっと息を吹きかけていたような気がする。絵本の通りに髪の毛を一本抜いて、ちょっと気持ち悪いけど孫悟空のしていたように口に入れてかみ砕き、ふっと息とともに飛ばしてみた。

 そしたら出てくれた! 無数の絨毯に乗った小さい俺。分身した姿の方は透明じゃない。急に現れたイナゴの群みたいな小さい俺を見てデュラハンはさすがに混乱したようだった。

 そこをすかさず小畑の槍がデュラハンの甲冑の胸を突く。ガキン、と金属音が響いたが、その程度では倒せないようだ。

 でも、小畑の戦いは奴の気を逸らすのに役に立つ。目的は頭を落とすことだ。分身なんてしたことなかったけど、どうもミニチュアたちは俺の思った通りに動いてくれるらしい。ミニチュアたちが次から次へとデュラハンの頭を上から叩くようにイメージする。

 ガンガンガン・・・と無数の小さい俺が次々と頭に小さい攻撃を連続して加えていく。デュラハンはますます頭をしっかり抱える。攻撃の手が少し緩んだところを小畑の槍が今度は鎧と鎧の隙間を突く。

 いいぞ。だんだん頭が下に下がってきた。


 その時、ふと視線を感じた。デュラハンには頭がないのでもちろん視線など見えるわけがない。しかも今の俺は透明だ。それなのに確かにデュラハンが俺を見つめている気がする。

 急にデュラハンの槍が俺の方に突き出され危うく絨毯から落ちそうになった。こいつ、見えてるのか。目なんて無いくせに。しかも透明化が無効になってるのか?

 しかし、作戦を変えるのはよくない、と直感が教えた。デュラハンの攻撃から逃げつつもミニたちはデュラハンの頭を叩き続ける。小畑の槍も力を増してもう一度突いていく。


 ついに何百発目かの如意棒の一突きがデュラハンの頭を地面にたたき落とした。ガランガランと兜が転がる。デュラハンが馬を止め兜を拾おうとするより先に俺は絨毯を飛ばして兜を拾い上げた。

「どうする、小畑!」

 この先はどうしたらいいかわからない。

「水だ! 悟。デュラハンの馬は川を渡れない。なんか川とか出せるか」

 川? 

 川といえば水。水はさっきあった。小畑を起こした時に使った水盤だ。

 素早く絨毯を飛ばして水盤のところに行き水盤の中に無意識に手を突っ込んだ。この水の流れが大きな川になってくれれば。

 出た。

 急激に水盤から流れ出る水は激流になり盤から溢れて大きな川の流れになった。絨毯を川向こうに飛ばしてデュラハンが追いかけてこられないようにする。

「いいぞ!」

 小畑は馬首をめぐらせ、ざばんと水に馬ごと踊り込んだ。

 デュラハンは着いてこられない。無事川を渡りきった小畑は、俺から首を受け取ると誇らしげにデュラハンに向かって首を高く上げて見せた。

「取れるもんなら取ってみろ」

 向こう岸でデュラハンが地獄から響きわたるようなうめき声を上げてこっちを睨んでいる。でも馬は水を嫌がっている。

「いいのか、挑発なんかしちゃって」

「いいんだよ。デュラハンから逃げる唯一の方法は川を渡ることなんだ」

「じゃあ、首をこっち側に置きっぱなしにすれば」

「うん。首の無いまま地団太踏むことになるんだろうな」

 思わず嬉しくて笑いが出た。

「ざまあみろ、ずっと地団太踏んでろ」


――――――――――――――――――――


読んでくださってありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ